11 / 57
第二章

初めての依頼

しおりを挟む
 サリオンはさわやかイケメンな風貌だが、エルフが怒っているのは迫力がある。
 表情に大きな変化はなくとも声の調子から明らかな怒りが読み取れた。
 俺は身体がこわばるのを感じており、内川の顔からは血の気が引いている。

「まあ、落ちつけ。ルチアはもう片方のジンタの世話係なんだから平等だろ?」

「人族同士、ミレーナという選択もあると思いますが」

 サリオンは同意を示すことはなく、ミレーナという人の名前を出した。
 対するウィニーが臆せずに切り返す。

「おいおい、あいつが無口なの知った上で言ってんのか。お前がその気なら馬毛亭にかけ合って、二度と酒を出さないようにしよう」

 ウィニーはこういった状況に慣れているようで、終始優位に話を進めていた。
 酒のことが出たところでサリオンが怯んだ。
 勝負ありといったところだ。

「あそこは気に入っています。気が進みませんが、その役割を引き受けましょう」

「さすがはエルフ。損得を弁える利発さは嫌いじゃないぜ」

「それは褒め言葉と受け取りましょう」

 ウィニーとサリオンの話が終わったところで、サリオンがこちらに近づいてきた。

「せいぜい、迷惑をかけないように頼みます」

「……あ、はい。よろしく」

 サリオンはこちらの返事を聞くと部屋を後にした。
 気まずい感じがするので、離れてくれてよかった。

「そっちは大変そうだな」

「ルチアの方がよさそうだよ」

 普通にルチアの方が接しやすいので、俺の方がハズレを引いたような気がした。

 それから、朝食を用意してもらい食べ始めた。
 トーストにハムエッグというシンプルなメニューだった。
 エリーの食事はウィニーが丁寧に準備しており、パンケーキや温かいスープなどがあった。
 彼女はウィニーにとって特別な存在のようだし、実は身分の高い人であるという認識が強まった。


「――ごちそうさまでした」  
 
「おう、食い終わったか。皿はそのままでいいから話を聞け」

 俺と内川が食事を終えたところで、ウィニーが近くを通った。
 それぞれの顔を交互に見て、おもむろに口を開く。
 
「どっちも戦闘経験はないみたいだが、ジンタは運動能力もなさそうだな」

「……スポーツは陽キャの嗜みだ」 

 ウィニーの指摘に反発するように、内川はぼそりとこぼした。
 しかし、ウィニーは気にする素振りはなく、そのまま話を続ける。

「まず、ジンタは体力がつくようにルチアに鍛えてもらえ。あいつは身体能力を活かした戦い方が得意だからいい見本になるだろ」

「ええと、俺は?」

「カイトは依頼をサリオンとこなしてくれ。王都から馬車で少しの町だから、サクッと運搬して帰るだけだ」

「……分かった」

 ウィニーは内川の小言はスルーしたが、俺の気の進まない返事には反応した。

「ああ、サリオンは悪いやつじゃないから、心配するほどのことはない」

「……それならまあ」

「危険はないと思うが、何かあったらあいつに守ってもらえ」

「うん、そうする」

 俺のスキルである魔眼は危険回避はできても、自分から攻撃できるわけじゃない。
 ウィニーの言うように力を借りた方が安全だろう。

「馬車の手配はおれがやっておく。それまではこの部屋にいてくれ」

 頷いて返すとウィニーは部屋を出ようとした。

「――それから、ジンタは外に出てルチアに今のことを伝えるようにな」

「……仕方がない。そうする」

 内川は困ったような顔を見せたまま、部屋を出ていった。
 同じ部屋に居合わせるのは俺とエリーという状況になる。
 横目で見やると、彼女は黙々とパンケーキを口に運んでいる。
 
 相手が食事中ということもあり、話しかける勇気が出ないまま時間がすぎていった。

「よーし、馬車が用意できた。御者はサリオンに任せればいいからな。あと、馬も荷台も借りたものだから丁寧に扱うように」

「うっす」

「ルチアの特訓は厳しいはずだから、サリオンと運搬をこなす方が楽だぞ」

「はあ、なるほど」

 ウィニーは悪ふざけをするように笑っている。
 帰宅部校内代表の内川は二次元に傾倒しすぎた結果、かなりの運動不足である。
 ルチアが厳しいトレーニングを課さなければいいが。

「馬車は表に停めてあるし、運搬する荷物は運びこんだ。先にサリオンがいるから、二人揃ったら出るように伝えておいた」

「うん、分かった。それじゃあ行ってくる」

「おう、気をつけてな」

 ウィニーに見送られて部屋を後にした。
 洋館の外には馬車が停まっており、御者台にサリオンの姿があった。

 俺は階段を足早に下りて馬車のところに向かう。
 これ以上、機嫌を損ねられても面倒だと思ったからだ。

「ウィニーから依頼のことを聞いた。俺も行くからよろしく」

「はい、聞いています。荷車の裏から乗ってください」

 サリオンはあっさりとしていた。
 こちらに不満をぶつける様子はない。

 少し拍子抜けするような気持ちで、言われた通りに荷車に乗った。
 上には屋根のように幌がついており、依頼の荷物と思われるものが置いてある。

「カイト、気をつけてな!」 

 大きな声が聞こえたので顔を出す。
 ウィニーが手を振っていたので振り返す。
 そのうちに馬車が動き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

処理中です...