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27.天然タラシ

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しばらくの間、ルイはグレイを抱きしめていた。

最初は戸惑っていたグレイだったが、ルイの体温とわずかに感じる心臓の音が心地良くて、ずっとこのままでいたいなぁ、と思った。

でもそれより気になるのはルイの体調だ。
1秒でも早く外に連れていきたい。

名残惜しさを感じつつ「ルイ?」と話しかけた。

「…外に出てみる?」

ルイの体が僅かに動き、さらに強く抱きしめられた。

「ん、そうだな。」

グレイの耳元で囁いた。

「っっひっ!!」

グレイは声にならない悲鳴と共にボンッと顔が赤くなった。

ルイはそっと体を離し、茹でたこのように真っ赤な顔をしたグレイに微笑んだ。

「どうした、グレイ。顔が赤いぞ。」

今度はルイがグレイの顔を覗き込む。

「あっ、赤くない!!ほらっ、いくぞ!!」

グレイは一度広げた果物と聖水を大慌てでまとめて牢を出た。


な、なんかルイの距離が近い!!
久しぶりに外に出られるせいでテンション上がってんのか??それとも普段からこんな感じなのか??
そ、それとも、もしかしてルイも俺の事…。
いやいや、それはない。
ルイは魔族が嫌いだし、俺もたった数日の間に何度も怒らせている。
でもでもでも!こういう事、誰にでもするのか?

頭がパニックになっている時、リリィの声が鮮明に響いた。

『ルイは天然のタラシよ。惚れると厄介な男ね。』

やっぱりルイはタラシなのか?
好意がなくてもこんなに強く抱きしめるのか??

グレイは気付かれないようにルイをチラッと見たが、すぐにルイと目が合った。

「ん?どうしたんだ、グレイ。」

そう言って首を傾げ、ふんわりと微笑む。

ドキュンっ!と心臓を撃ち抜かれたグレイは「なっ!なんでもねぇよっ!!」と否定し慌てて目を逸らす。

リリィ~!駄目だ、俺!!
やっぱりルイってカッコいい!!
天然タラシでも厄介な男でもなんでもいい!
ルイが好きだっ!

グレイは明日もリリィに相談しに行こうと決め、早足で地下牢の出口へ向かった。


地下牢から外へ出ると、珍しく星空が広がっていた。
と言っても地底にあるドグライアスからは空など見えない。
グレイも詳しい事はよく知らないのだが、噂では魔王の心模様で夜空の映像が変わる仕組みらしい。

星空はご機嫌、曇りは退屈、雨は悲しい、雷雨は怒り。

曇りの夜空が多いドグライアスが、満天の星空になる事は滅多にない。


魔王様、ルイとの戦いが楽しみなのかな…。

グレイは少し不安になって夜空を見上げた。

「美しい夜空だな。」

ルイも地下牢から外に出てきて夜空を見上げる。

「だね。魔王様の心を映し出してるらしいよ。今日はご機嫌なのかも。」

「そうか。私と戦うことが楽しみなのかな。」

「うん、そうかもね。なんで魔王様はルイと戦いたいんだろう…争いを楽しむタイプじゃないのに。」

「そうなのか?」

ルイは意外そうな顔をする。

「そうだよ。前も言っただろ?魔王様は優しいんだよ。でもめちゃくちゃ強い。多分この世で1番強い。だから…ルイが心配。本当に戦って欲しくない。」

「…ああ、ごめんな。心配かけて。」

ルイは少し辛そうな表情をしてグレイの頭を優しく撫でた。
グレイの顔は再び赤くなった。
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