元夫に捨てられた私ですが、箱根の老舗旅館でホテル王に溺愛されています
「君は悪い人じゃない。でも、退屈なんだ」
結婚五年目。
三十二歳の柏木梨花は、夫から突然、離婚届を突きつけられた。
夫には若い恋人がいた。
毎日の食事を作り、愚痴を聞き、義実家との付き合いまで大切にしてきた梨花の五年間は、「退屈」の一言で捨てられた。
居場所を失った梨花が帰ったのは、箱根にある実家の老舗旅館『七瀬屋』。
創業百五十年。
古い木の廊下、苔むした庭、湯気の立つ朝食――。
けれど、思い出の宿もまた、深刻な経営難で消えかけていた。
結婚も終わった。
帰る場所までなくなってしまうかもしれない。
そんな雨の夜、七瀬屋の玄関に一台の黒い高級車が止まる。
そこから降りてきたのは、宿泊施設の再生に携わる男――佐伯蓮。
乱れた髪も、古いサンダルも笑わず、
廃れかけた七瀬屋を「価値がない」と切り捨てることもしない。
そして彼は、梨花自身さえ気づかなかったものを見つけていく。
客が靴を脱ぐ速さを見ること。
寒そうな人へ膝掛けを出すこと。
ひとりで来た客を、無理に会話へ引き込まないこと。
「これは、七瀬屋の財産です」
元夫に「退屈」と言われた梨花の優しさを、
蓮だけは、誰にも真似できない価値だと言ってくれた。
古い旅館を残すため、
梨花はもう一度、自分の人生を立て直していく。
ところが七瀬屋が再び注目され始めた頃、
梨花を捨てた元夫が、若い恋人を連れて現れて――。
「梨花さんの名前を、誰にも盗ませません」
仕事では完璧。
恋だけは不器用。
そんなホテル王が守ろうとするのは、
旅館だけではなく、傷つきながらも立ち上がろうとする梨花自身だった。
元夫に捨てられた女が、
箱根の老舗旅館を再生しながら、
自分の価値と、本当に愛してくれる人を見つけていく――。
老舗旅館再生×大人の溺愛×再出発のシンデレラストーリー。
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