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第28話 知らないふりをする
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屋上から校舎内に入ると、早速、キースにどうして、あの場に入ってきたのを聞いてみる事にした。
「何で来たの?」
「何で来たの、じゃねぇよ。テツが待て、をできなかったんだよ」
「で、その待て、もできない、ワンちゃんはどこに行ったの」
「そう言われるだろうと思って、教室で待ってるってさ」
キースが呆れた顔をして答えた。
「巻き込んでごめんね、キース」
代わりに私が謝っておく。
人に行かせて自分は来ないっていうのは、私の事をよく知っているからだんだろうけれど。
私は自分のやっている事を哲平に邪魔されたなら、容赦なく彼に文句を言うからね…。
だから、文句を言われにくいキースを使ったんだと思う。
「心配してくれるのは有り難いんだけど、過保護すぎる様な気がするのよ」
「それはしょうがないだろ。自分の彼女が他の女から呼び出しくらってりゃ、何かあったらって心配になるだろ」
「私は彼女じゃないわよ」
「婚約者なんだし、それに近いだろ」
二人で教室に戻る道を歩きながら、会話を続ける。
「そんなもんかしらね」
「そんなもんだよ」
「だから、部屋に入ってくるなって言われたのかしら」
「……何かあったのか?」
キースが不思議そうにするので、少し前に哲平から「もう家族じゃない」と言われた話をしてみると、彼は私を奇怪なものでも見るような目で見ながら言った。
「ノアもひどいと思ってたけど、お前も大概ひどいな」
「どういう意味よ」
「テツにしてみれば、家族じゃない、っていうのは精神的なつながりの事を言ってるんじゃなくて、男女間の話をしてたんだろ」
「男女間?」
「俺がこんな事を言っていいのかわからないけど、テツはアリスの事を異性として見てるって事を言いたかったんじゃないのか?」
キースの言葉に一瞬、思考が停止してしまった。
哲平が、私を異性として見てる?
ない、ない。
そんな事はありえないわ。
だって小さい頃から一緒だったのよ!?
「そんな訳ないでしょ。こっちの世界にくるまでは、暑い日の風呂から上がってすぐは、家の中で下着だけで過ごしてたのよ!?」
「お前、それは駄目だろ。家族っていってもテツとは血はつながってなかったんだろ?」
「そうだけど、でも、その時は家族だったから良かったってこと?」
「テツはそん時、何も言わなかったのかよ」
「もう子供じゃねぇんだから、やめろって、いつも怒ってた」
「ちゃんと注意されてんじゃねぇか…」
思い切り呆れた顔をされてしまった。
「彼氏とデートの日にかぎって体調悪くして看病させるためにデートキャンセルさせたり、デート中に用事があるって電話してきてたのは偶然じゃなかったって事?」
「逆にそれに気付かない、お前の鈍さも心配だし、そんな事してるテツもおかしすぎるだろ」
「まあ、私も彼氏よりテツを優先してたのは良くないわね…。付き合ってくれと言われて付き合ってたから、優先順位が家族になってたのよね…。でも、言っておくけど、それでも良いと言われて付き合ってたのよ?」
「……最初から、お前とテツが付き合ってれば良かったんじゃ…」
「それはない! そんな風に見たこともなかったし、テツだってそうなはずよ」
きっぱりと答えると、キースがため息を吐く。
「テツは女性が苦手なのに、お前だけは大丈夫だったんだろ? その時点で答えが出てるだろうに」
そう言われればそっか…。
といっても、今から男性として見ろと言われても困る。
「で、どうしたらいいと思う?」
「俺に聞くなよ」
「どうせ婚約者だし、いずれ結婚するんだから、知らないフリを決め込んでもいいかしら」
「悪い奴だな」
「向こうはもっとわかってるでしょ、私の性格なんて」
私を本当に好きなら、私がどういう態度をとるかも予想はつくはず。
だからこそ、日本にいる時は言葉に出さなかったのかもしれない。
そんな事を考えていると、キースの教室に着いたから中を覗くと、自分の席に座っていた哲平は、私達に気が付いて立ち上がった。
「遅かったな。っていうか、それ、どうした」
近寄ってくるなり、胸元を指差すから素直に答える。
「かけられた」
「何でそんな事になるんだよ、またどうせ挑発でもしたんだろ。で、火傷とかしてないだろうな?」
「火傷はしてない。相手が言いたい事言うから、こっちも言いたい事を言っただけ」
キースとの会話を思い出すと、やはり少しは意識してしまう。
そのせいか哲平はなぜか疑わしそうな視線を向けてくる。
いや、違うわね。
私より挙動不審な奴がいるせいね。
「……キース、なんか隠してんのか」
「何も」
「なんかあるだろ、言えよ」
「なんもないって。それより、俺がニホンの事を知ってる理由、知りたいんだろ ?」
キースは人の恋路に関わる訳にはいかないと感じたのか、慌てて話題を変えてきた。
私もその事について知りたいから頷く。
「知りたいから教えてよ」
「わかった…。けど、ここじゃなんだし、場所変えるか」
「じゃあ、うちに来ない? キースの家より小さいけど」
「家の小さい大きいは関係ないだろ」
「いや、私の家見て、こんな小さい家に住んでるのか、このアホが、とか思わない? 」
「思うか!」
おどけて聞いてみると、キースが即座に答えを返してきた。
それから、キースは哲平の方の馬車に乗り、私はいつものキュレル家の馬車に乗り込んで学園を出た。
魔石の処理に関しては、キースが家に帰ったら、辺境伯に話をしてくれると言ってたし、その話に関しては明日に聞くでも良いだろう。
それに、キースの家にはノアがいるわけだし、寝込んでいる人のいるお家には行きづらい。
キースの口からどんな真相が話されるのか、今から不安でもあり、少し楽しみになったのだった。
※ いつもお読みいただき、ありがとうございます!
次話から第二部になります。
伯爵令嬢へのざまぁなどもそちらで!
「何で来たの?」
「何で来たの、じゃねぇよ。テツが待て、をできなかったんだよ」
「で、その待て、もできない、ワンちゃんはどこに行ったの」
「そう言われるだろうと思って、教室で待ってるってさ」
キースが呆れた顔をして答えた。
「巻き込んでごめんね、キース」
代わりに私が謝っておく。
人に行かせて自分は来ないっていうのは、私の事をよく知っているからだんだろうけれど。
私は自分のやっている事を哲平に邪魔されたなら、容赦なく彼に文句を言うからね…。
だから、文句を言われにくいキースを使ったんだと思う。
「心配してくれるのは有り難いんだけど、過保護すぎる様な気がするのよ」
「それはしょうがないだろ。自分の彼女が他の女から呼び出しくらってりゃ、何かあったらって心配になるだろ」
「私は彼女じゃないわよ」
「婚約者なんだし、それに近いだろ」
二人で教室に戻る道を歩きながら、会話を続ける。
「そんなもんかしらね」
「そんなもんだよ」
「だから、部屋に入ってくるなって言われたのかしら」
「……何かあったのか?」
キースが不思議そうにするので、少し前に哲平から「もう家族じゃない」と言われた話をしてみると、彼は私を奇怪なものでも見るような目で見ながら言った。
「ノアもひどいと思ってたけど、お前も大概ひどいな」
「どういう意味よ」
「テツにしてみれば、家族じゃない、っていうのは精神的なつながりの事を言ってるんじゃなくて、男女間の話をしてたんだろ」
「男女間?」
「俺がこんな事を言っていいのかわからないけど、テツはアリスの事を異性として見てるって事を言いたかったんじゃないのか?」
キースの言葉に一瞬、思考が停止してしまった。
哲平が、私を異性として見てる?
ない、ない。
そんな事はありえないわ。
だって小さい頃から一緒だったのよ!?
「そんな訳ないでしょ。こっちの世界にくるまでは、暑い日の風呂から上がってすぐは、家の中で下着だけで過ごしてたのよ!?」
「お前、それは駄目だろ。家族っていってもテツとは血はつながってなかったんだろ?」
「そうだけど、でも、その時は家族だったから良かったってこと?」
「テツはそん時、何も言わなかったのかよ」
「もう子供じゃねぇんだから、やめろって、いつも怒ってた」
「ちゃんと注意されてんじゃねぇか…」
思い切り呆れた顔をされてしまった。
「彼氏とデートの日にかぎって体調悪くして看病させるためにデートキャンセルさせたり、デート中に用事があるって電話してきてたのは偶然じゃなかったって事?」
「逆にそれに気付かない、お前の鈍さも心配だし、そんな事してるテツもおかしすぎるだろ」
「まあ、私も彼氏よりテツを優先してたのは良くないわね…。付き合ってくれと言われて付き合ってたから、優先順位が家族になってたのよね…。でも、言っておくけど、それでも良いと言われて付き合ってたのよ?」
「……最初から、お前とテツが付き合ってれば良かったんじゃ…」
「それはない! そんな風に見たこともなかったし、テツだってそうなはずよ」
きっぱりと答えると、キースがため息を吐く。
「テツは女性が苦手なのに、お前だけは大丈夫だったんだろ? その時点で答えが出てるだろうに」
そう言われればそっか…。
といっても、今から男性として見ろと言われても困る。
「で、どうしたらいいと思う?」
「俺に聞くなよ」
「どうせ婚約者だし、いずれ結婚するんだから、知らないフリを決め込んでもいいかしら」
「悪い奴だな」
「向こうはもっとわかってるでしょ、私の性格なんて」
私を本当に好きなら、私がどういう態度をとるかも予想はつくはず。
だからこそ、日本にいる時は言葉に出さなかったのかもしれない。
そんな事を考えていると、キースの教室に着いたから中を覗くと、自分の席に座っていた哲平は、私達に気が付いて立ち上がった。
「遅かったな。っていうか、それ、どうした」
近寄ってくるなり、胸元を指差すから素直に答える。
「かけられた」
「何でそんな事になるんだよ、またどうせ挑発でもしたんだろ。で、火傷とかしてないだろうな?」
「火傷はしてない。相手が言いたい事言うから、こっちも言いたい事を言っただけ」
キースとの会話を思い出すと、やはり少しは意識してしまう。
そのせいか哲平はなぜか疑わしそうな視線を向けてくる。
いや、違うわね。
私より挙動不審な奴がいるせいね。
「……キース、なんか隠してんのか」
「何も」
「なんかあるだろ、言えよ」
「なんもないって。それより、俺がニホンの事を知ってる理由、知りたいんだろ ?」
キースは人の恋路に関わる訳にはいかないと感じたのか、慌てて話題を変えてきた。
私もその事について知りたいから頷く。
「知りたいから教えてよ」
「わかった…。けど、ここじゃなんだし、場所変えるか」
「じゃあ、うちに来ない? キースの家より小さいけど」
「家の小さい大きいは関係ないだろ」
「いや、私の家見て、こんな小さい家に住んでるのか、このアホが、とか思わない? 」
「思うか!」
おどけて聞いてみると、キースが即座に答えを返してきた。
それから、キースは哲平の方の馬車に乗り、私はいつものキュレル家の馬車に乗り込んで学園を出た。
魔石の処理に関しては、キースが家に帰ったら、辺境伯に話をしてくれると言ってたし、その話に関しては明日に聞くでも良いだろう。
それに、キースの家にはノアがいるわけだし、寝込んでいる人のいるお家には行きづらい。
キースの口からどんな真相が話されるのか、今から不安でもあり、少し楽しみになったのだった。
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