騎士様のアレが気になります!

茜菫

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本編

26-3

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「今の、知ってるよ。口付けでしょう?」

「……………知っているんだ」

「うん。おばあちゃんがよくしてくれたの」

「あ、そうか…」

 どこで知ったのかと内心焦ったオリヴィエだが、家族で親愛の口づけをすることくらいあるだろう。ならば遠慮することはないと、オリヴィエはヴィヴィアンヌの髪に、額に、頬に、軽く唇を寄せた。唇が触れ、僅かに息がかかり、ヴィヴィアンヌはくすくすと笑う。

「くすぐったい、騎士様」

「…嫌?」

「ううん、もっとしてほしい」

 オリヴィエはねだるヴィヴィアンヌの目元にそっと口付け、そのまま顔を覗き込む。右手でヴィヴィアンヌの頬に手を添えると、彼女はきょとんと目を丸くした。

「…なら、次は恋人としての口付けをしようか」

「コイビトの口付け?どうするの?」

 ヴィヴィアンヌはオリヴィエの目がいつもと違うように見えた。その目に見つめられて胸が高鳴るのを感じて、理由がわからず不思議に思いながら、ヴィヴィアンヌはオリヴィエをじっと見つめ返した。

「じゃあ、ヴィヴィ。目を閉じて」

「目?…こう?」

 疑うことなく言われるがままに、ヴィヴィアンヌは瞼をおろした。オリヴィエは目を閉じ、すべてを彼に委ねているヴィヴィアンヌの唇を親指で触れ、ゆっくりとなぞる。

(…柔らかい、ヴィヴィの唇…)

 何度ここに触れたいと思い、何度触れることを妄想しただろう。オリヴィエが唇を重ねると、ヴィヴィアンヌの肩が小さくゆれた。一度だけでは足りず、オリヴィエは何度も唇を重ねる。目を閉じているからか、ヴィヴィアンヌは唇に触れる感触や僅かにかかる吐息とその音に、ますます胸を高鳴らせていた。

 暫くそれを繰り返した後、オリヴィエはゆっくりと顔を離す。ヴィヴィアンヌは目を開いて自分の唇に指で触れると、先程の感覚を思い出すかのようになぞった。

(…なんだろう…全然、違う)

 高鳴る胸と前に一度感じたことのある不思議な感覚に、ヴィヴィアンヌは首を傾げた。それがなにか知りたくて、ヴィヴィアンヌはまだ終わりにしたくなかった。

「ヴィヴィ、今日はこの辺で終わりにしよう」

「騎士様、もっとしたい」

「あー…いや、これ以上やると僕が…」

「…だめなの?」

「…………だめ、じゃない」

 上目遣いで見上げられ、オリヴィエはあっさりと陥落した。ヴィヴィアンヌは嬉しそうに彼の胸に飛び込むと、目を閉じて顔を上げ、口づけをねだる。可愛い恋人にここまで甘えられたら、望みを叶えないわけにはいかないだろう。
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