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通りすがりの冒険者と奴隷

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 きょろきょろと恋してそうな人を鑑定しながら歩いていると、何かにつまづきました。
「うわぁっ」
 結構大きなもの。小石とかそんなんじゃない塊。
 普通の人なら避けて通るでしょうけど、前を見て歩いていなかった私は見事に躓いてしまいました。
 どしゃっ。
 と、バランスが保てず、その塊の上に乗っかるようにして倒れます。
「ご、ごめんなさいっ」
 倒れた瞬間、温度のあるそれがにゅっと少しだけ動いきました。
 人だ、と思って慌てて立ち上がります。
 見ると、思った通り人でした。人には違いないのですが……。
「あの、大丈夫ですか?」
 道の真ん中で体を丸めてうずくまっている人。
 まるで、ぼろ雑巾のように見えます。
 服装も孤児院の子供よりもボロボロですが、体のあちこち骨がおかしな方向に曲がっているように見えます。病気か怪我か、とにかく健康そうには見えません。
 他の人達は遠巻きに避けて通っています。
 私がどさっと思い切り上に乗っかったせいで、さらにどこか痛めてしまったのでは……?
「すいません、その、前をよく見ていなかったので……」
 声をかけながら鑑定をかけます。
 当たりやみたいな、ぶつかっって骨が折れただろう、どうしてくれるんだ!みたいな怖い人でしたら、一目散に逃げなくちゃいけません。どこかの国では、同情詐欺のようなものもあると聞いたことがあります。
 だけど、いい人ならば、私が完全に悪かったのです。無視して逃げるわけにはいきません。
【鑑定結果
 ファルベル
 続きはWEBで】
 検索窓に、ファルベル、キバノで検索。
 目に飛び込んできた単語に、心臓がドクンと大きく鳴りました。
 奴隷――と、あります。
 ど、奴隷?
 この世界には奴隷制度があるんですか?
 誰かの日記っぽいサイトにつながりました。
「失敗した。背中が曲がって、顔色も悪かったが安かったから奴隷として買い入れたのに。荷物持ちくらいにはなるだろうと。それなのに、まさか3日でふらふらになって歩くこともできなくなるなんて。安かったのは、病気だったからなんだろう。畜生、まんまといっぱい食わされた。どうせ効果の小さなポーションじゃぁどうにもならなかったから俺に押し付けたんだろうな。餌を食わせるだけでも維持費がかかるからな。俺もさっさとキバノの街に捨てて来て正解だぜ」
 うずくまっているファルベルを見る。
「病気……なの?大丈夫ですか?」
 そっと手を伸ばしてみますが、顔を上げる力も手を動かす力ももうすでに残っていないようです。
「おう、坊主、ほかっておけ。その腕の印、奴隷だろう?大方、病気かなんかで主に捨てられた破棄奴隷だろう。残念だが、破棄された奴隷は長く生きられないよ」
 冒険者のなりをした男が1人、私の手をつかんで立ち上がらせました。
 それから、破棄奴隷の手の平に、小さなパンを握らせます。
「食べられないかもしれないが、食べられそうなら食べな」
 ああ、いい人です。
「ありがとうございます」
「なんで坊主が頭を下げる?」
 ぷっと笑われました。ってか、イケメン冒険者です。身長も高いし、体つきもがっちりしてるし、その上薄い茶色の髪のイケメン。



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