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その43
しおりを挟む「ちょ、クリス様お待ちくださいませ」
と私が慌ててクリス様の入室を阻もうとすると、ミシェル殿下は、
「?王太子殿下ではありませんか。申し訳ありませんが、勝手に入ってこられては困ります」
とミシェル殿下が不快感を露にする。
「失礼なのは承知の上だ。そこについては謝ろう。
しかし、この侍女を咎めるのは、私の顔に免じて控えて頂きたい。
私がこの者を勝手に連れて行ってしまったのだ。私が命じれば、一介の侍女に断る術はない。
悪いのは全てこの私だ。叱責を受けるべきは彼女ではない」
クリス様が私を庇ってくれてますけど、ミシェル殿下の気分が益々急降下しているのがわかる。
「この者は私の侍女。その責務を放棄するなど、どんな事情があろうと、あってはならない事。
王太子殿下のお気持ちはわかりましたが、どうぞお引き取りを。こんな時間にこんな所に来られるのは、迷惑です!」
とミシェル殿下の声が段々と荒々しくなってきた所で、私は、
「ク…王太子殿下、道に迷った私を助けて頂いた上に庇って頂きたありがとう御座いました。
殿下の側を離れた事はどんな理由があっても許されるものではありません。
私が叱責を受けるのは当然で御座います。今日は本当にご迷惑お掛け致しました」
と私はクリス様に頭を下げた。そして、ミシェル殿下にも
「殿下、王太子殿下は私を庇って下さったに過ぎません。これ以上はお控え下さいませ」
とミシェル殿下にも頭を下げる。
結局、クリス様は渋々ながら、部屋を去ってくれた。
これ以上、2人が揉めるのは非常に不味い。
私はクリス様が去ってくれた事に安堵したが、殿下のご機嫌は最悪で、その後、私が長々と叱責された事は想定の範囲内であった。
翌日、私の姿を見かけたクリス様が足早に近づいてくる。
「おい!昨日は大丈夫だったか?なんで、俺に連れて行かれたと正直に言わなかった?あの時はお前の顔を立てて引いてしまったが…何もされていないか?」
「…大丈夫です。でも、もう私に構うのは止めて下さい。それでは失礼致します」
と私は一礼してその場を後にしようとしたのだが…クリス様に手を掴まれた。
「待て。怒ってるのか?」
…正直、クリス様と関わる理由が私にはない。
それに私はこう見えても忙しい。
「いえ。怒ってなどおりません。しかし、私はただの侍女。王太子殿下とお話を出来る立場にもないのです。
私には私の役目が御座います。それをしっかり勤めるだけです。手をお離し下さい。それでは失礼致します」
私は今度こそ、クリス様の手を振りほどき、その場を後にした。
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