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第2章

報酬

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 ゼロは全速力で走り、泉まで私たちを連れていった。


 そもそものコンパスの長さがゼロと全然違う私とパーシーは、彼よりも多く足を動かさなければならず、泉に着くころには、ぜえぜえと息も絶え絶えだった。


「ちょ、ちょっと待ってってっ……」

「悪ぃ」

 全然悪く思っていない顔で、ゼロは言う。

「あそこにいると、絶対ヤバいと思ってな」

「いや、ヤバいのは私も思ってたんだけどっ。でも、もうちょっと、ゆっくり、走ってくれてもっ」

「仕方ねぇだろ。追いつかれちまったらどうするんだ?」


 ゼロは息1つ乱れていない。


 私とパーシーは、ほとんど死にかけている。


 なんなんだろう。

 私たちの間に、なんの違いがあるんだろう。


 やっぱりあれか。

 ヴァンパイアって、やっぱりそれなりに人間よりかは体力があるのか。


「よし、じゃあ」


 ゼロはパーシーに視線を送る。

「金出せ」

「えっ」


 パーシーは私以上に疲れているらしく、その場にへたりこんでいる。

「お、お金、ですか……」

「とぼけてんじゃねぇよ。報酬金だ、報酬金。契約しだだろ」

「は、はい……。すみません」

「早く出せ」


 第3者から見れば、背の高い真っ黒な男が一般市民をカツアゲしているようにしか見えないが。

 でも、こちらからすれば大事な権利だ。


「すみません、お金は全部村に置いてきてしまって……」

「は? じゃあ取ってこい!」

「はい!」


 パーシーはよれよれと立ち上がり、また村へと戻っていく。


「チッ」

 ゼロは一向に前に進まないパーシーの動きに苛立ったのか、彼の方に歩み寄り、パーシーの身体を俵のように持ち上げた。

「ヴァイオレット」

「何?」
 
「あんたはここにいろ。俺はこいつを連れて、もう一度村へ行く金を持ったら、直ぐに戻る」

「うん」

「じゃあ、そこで待っとけよ」


 ゼロはもう一度念を押して、パーシーを抱えたまま元来た道を戻っていった。
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