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嫌なこと

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 嫌なことは、重なって起こるものである。


 リアムが教室にやってきたその日、彼の父親も、我が公爵家の屋敷に突撃してきた。


 無論、アポなしである。


「申し訳ございませんが」

 メイドのイザベラが、そのぶしつけな訪問者の対応を任された。

「旦那様と奥様は、ただ今外出中ですので。お帰りください」

「娘がいるだろう」


 しかし、彼は取り合わなかった。

「呼んで来い」

「お言葉ですが、私はあなたに仕えているわけではございませんので」

「私はお前の家の主と同じ身分だぞ」

「ですが、我が主ではありません。旦那様には、

『品位のないお客様には、即刻お帰りいただくように」

 と、申し使っておりますので」

「誰が品位のない客だと? 庶民風情で生意気な」

「私は確かに1使用人に過ぎませんが、私の言動すべては旦那様が自らお命じになったもの。私の意思ではございませんので、悪しからず」

「貴様!」


 と、イザベラの胸倉を掴もうとするが、彼女はするりと器用にそれを避けた。


「これ以上この屋敷に居座られるようなら、公爵家の密な関係にある国王陛下にご報告いたします」

「チッ」


 国王陛下の名前を出されてしまえば分が悪いと考えたのか、リアムの父親は立ち上がり、憮然とした態度で屋敷を立ち去ろうとする。


「お見送りいたしましょうか?」

「フン、結構――それより、シャーロット嬢に一言伝えろ」

「はあ」

「我が息子を捨てて、あの小汚い庶民を選ぶという選択肢が正しいのかを、よく考えるんだな、と。それと今日、我が息子を教室内で侮辱した件については、仲間ともども訴える手はずだ。そのときはよろしく頼むぞ――慰謝料も請求させてもらうからな」

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