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2章
2章16話(117話)
しおりを挟む「私の過去がなんであろうと、今の私は『エリザベス・アンダーソン』。アンダーソン家の長女。どうか、噂話に惑わされることなく、私と話して『私』と言う存在がどういう人物なのかを理解してください。……私はこのアカデミー生活で、様々なことを学びたいと思っております。その中には、もちろん人間関係も含まれていますわ。……さぁ、折角の入学祝いパーティー、最後まで盛り上げていきましょう!」
パンっと両手を頬の横で叩くと、周りに居た人たちが困惑の表情を浮かべながらも、「そうだよな、折角のパーティーだし」とか、「楽しまないといけないよね」とか、そんな声が聞こえた。
ぞくり、と背筋に悪寒が走る。ジェリー・ブライトが私を睨んでいた。……だけど、私はそんなことを気にせずにアル兄様に向かって手を差し伸べる。
「アル兄様は料理を食べまして? どれも絶品だったよ!」
「……じゃあ、リザのお勧めを食べようかな」
「うん!」
アル兄様の手を引いて料理の置いてある場所へと向かう。みんなが私のところに集まって来てくれた。
「――二年前とは比べ物にならないくらい、凛として格好良かったよ」
「……流石に緊張しましたけどね。ありがとうございます、ヴィニー殿下」
「……え、なにその呼び方……!」
アル兄様がちょっとショックを受けたような顔をした。……私とヴィニー殿下は顔を見合わせて、クスクスと笑い合う。
パーティーはその後、概ね順調に進んだと思う。ダンスを踊る人たち、食事をする人たち、飲み物を片手に話し合う人たち……。先程までの緊迫した空気は、あっという間にメロディーに飲み込まれていった。
良かった、折角の入学祝いパーティーだもの。あんなに暗い雰囲気のまま終わってしまったら、思い出が台無しになっちゃうところだった。
パーティーが終わり、女子寮の前までアル兄様たちが送ってくれた。
「――くれぐれも、あのジェリー嬢には気を付けて」
ヴィニー殿下が小声でそう囁いた。私は、真剣な表情でこくりとうなずく。……彼女と同じクラスじゃなくて、本当に良かった。そんなことを考えながら、私たちは寮の部屋へと足を踏み入れ、ドレスからネグリジェへと着替え、眠る準備を整え、パンパンになったふくらはぎをマッサージしてから眠った。……友人も増えたし、自分の言葉で周りに言えた。うん、満足!
二年前の私なら、絶対に無理だったろうなぁと考えながらベッドに潜って目を閉じる。……明日からは授業が待っている。しっかり眠っておかないとね。
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