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第5話 宮廷医に
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そして、今日は回復したマルディン王と謁見する日。
しかし、今日はまだ非公式な場である。
「お待たせして申し訳ない」
王宮の応接間にマルディン王が入ってきた。
「いえ、お元気になられてよかったです」
「貴殿のおかげだ。改めて自己紹介させてくれ。私はアーサー・マルディン、この国の国王だ」
「医師のエミリア・メディです」
エミリアは頭を下げる。
「いや、頭を上げてくれ。頭を下げるのはこちらの方なのだ。命を救ってくれた事、感謝する」
「苦しんでいる人を救うのが医師の仕事ですから」
「エミリア殿は帝国にお帰りになるのだろうか?」
「そのことなのですが、帝国にはもう居場所はありません。可能なら、この国に滞在したいと考えています」
医師として、帝国ではもう仕事はできないだろう。
「それならよかった。エミリア殿には宮廷医師として迎え入れたい。そして、医師功績一等勲章を授けようと思う」
「え!?」
医師功績一等勲章は医師がもらえる最高位の勲章だ。
生きているうちに叙勲したものは片手で数える程度だ。
「私からのせめても礼だ。受け取ってくれ」
こうして、エミリアは医師としてマルディン王国に認められた。
「エミリア殿の論文だが、私が証人になって再発表しよう」
「ありがとうございます」
そして、エミリアの論文が正しかったことをマルディン王が証人となってくれた。
「失礼なことを聞くが、エミリア殿は婚約者はいるのかね?」
「いえ、お恥ずかしい話、婚約の話は無くて」
ずっと誰かの命を救う為に働いてきた。
縁談の話も来てはいたらしい。
しかし、全て断った。
今は、医師として患者と向き合いたかった。
「そうだったか。それなら、うちの息子を貰ってくれんかね?」
「ちょっと、父上!?」
サルヴァが声を上げた。
「陛下、それは何かのご冗談ですか?」
王太子という立場上、すでにもう婚約者は居るのではないか。
貴族や王族は大体、15歳までには婚約者を決めるものだ。
「それが、こいつはちょっと特殊でな。まだ婚約者はいないんだよ。でも、エミリア殿を見る息子の目で何となく分かった。お前も少しは素直になってみてもいいんじゃないか?」
陛下のその言葉にサルヴァは少しの間、沈黙した。
「エミリアさんは聡明で、美しくそのお人柄はとてもお慕いできるものだと思います」
「あ、ありがとうございます」
「しかし、エミリアさんはこの先たくさんの命を救うお人だと確信しました。私は、その足枷だけにはなりたく無いのです」
そう言って拳を強く握り識る。
「いいえ。それは違います。サルヴァ様、私はあなたは足枷ではなく私の力になってくれるお方だと思いました」
「では、これからも共に戦って頂けますか?」
「もちろです。これからも命を救うのに手を貸してください」
本物の王族は時に自分の命を犠牲にしてでも、誰かを助ける覚悟を持っている。
エミリアもまた、医者でありながら自分の命を犠牲にしてでも命を救う覚悟がある。
誰かの為に命をかけて戦うということは、並大抵の覚悟では務まらない。
この二人は似たもの同士なんだ。
「残念だが、婚約の話は先送りかな」
陛下は小さくため息を吐いた。
しかし、今日はまだ非公式な場である。
「お待たせして申し訳ない」
王宮の応接間にマルディン王が入ってきた。
「いえ、お元気になられてよかったです」
「貴殿のおかげだ。改めて自己紹介させてくれ。私はアーサー・マルディン、この国の国王だ」
「医師のエミリア・メディです」
エミリアは頭を下げる。
「いや、頭を上げてくれ。頭を下げるのはこちらの方なのだ。命を救ってくれた事、感謝する」
「苦しんでいる人を救うのが医師の仕事ですから」
「エミリア殿は帝国にお帰りになるのだろうか?」
「そのことなのですが、帝国にはもう居場所はありません。可能なら、この国に滞在したいと考えています」
医師として、帝国ではもう仕事はできないだろう。
「それならよかった。エミリア殿には宮廷医師として迎え入れたい。そして、医師功績一等勲章を授けようと思う」
「え!?」
医師功績一等勲章は医師がもらえる最高位の勲章だ。
生きているうちに叙勲したものは片手で数える程度だ。
「私からのせめても礼だ。受け取ってくれ」
こうして、エミリアは医師としてマルディン王国に認められた。
「エミリア殿の論文だが、私が証人になって再発表しよう」
「ありがとうございます」
そして、エミリアの論文が正しかったことをマルディン王が証人となってくれた。
「失礼なことを聞くが、エミリア殿は婚約者はいるのかね?」
「いえ、お恥ずかしい話、婚約の話は無くて」
ずっと誰かの命を救う為に働いてきた。
縁談の話も来てはいたらしい。
しかし、全て断った。
今は、医師として患者と向き合いたかった。
「そうだったか。それなら、うちの息子を貰ってくれんかね?」
「ちょっと、父上!?」
サルヴァが声を上げた。
「陛下、それは何かのご冗談ですか?」
王太子という立場上、すでにもう婚約者は居るのではないか。
貴族や王族は大体、15歳までには婚約者を決めるものだ。
「それが、こいつはちょっと特殊でな。まだ婚約者はいないんだよ。でも、エミリア殿を見る息子の目で何となく分かった。お前も少しは素直になってみてもいいんじゃないか?」
陛下のその言葉にサルヴァは少しの間、沈黙した。
「エミリアさんは聡明で、美しくそのお人柄はとてもお慕いできるものだと思います」
「あ、ありがとうございます」
「しかし、エミリアさんはこの先たくさんの命を救うお人だと確信しました。私は、その足枷だけにはなりたく無いのです」
そう言って拳を強く握り識る。
「いいえ。それは違います。サルヴァ様、私はあなたは足枷ではなく私の力になってくれるお方だと思いました」
「では、これからも共に戦って頂けますか?」
「もちろです。これからも命を救うのに手を貸してください」
本物の王族は時に自分の命を犠牲にしてでも、誰かを助ける覚悟を持っている。
エミリアもまた、医者でありながら自分の命を犠牲にしてでも命を救う覚悟がある。
誰かの為に命をかけて戦うということは、並大抵の覚悟では務まらない。
この二人は似たもの同士なんだ。
「残念だが、婚約の話は先送りかな」
陛下は小さくため息を吐いた。
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