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6、英雄仕事辞める
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ーー正直なところ、『王宮魔術団』は辞めたくない。
でも、これ以上、本来しなくてもいい仕事まで押し付けられて、何も言えないままに寝るまも惜しんで働かされるのはもっと嫌だった。
どうしたものかと悩んでいると、ドアがノックされる。
「!」
ドアがノックされたことに、もしかしてと思い当たり、「どうぞ。」と返事する。
ーーやっぱり。
ドアをノックして入ってきたのは、数少ない中でここで真面目に働いている人事担当の事務員だった。
「お疲れ様です。書類お願いします。」
と笑顔で確認が必要な書類を持ってくる。
「……やあ。」
といつも通り?の笑顔で挨拶したつもりだったが、どうやらかなり疲れた顔をしていたらしく、
「どうしました!? 滅茶苦茶、顔色悪いですよ?」
と指摘されて心配されてしまった。
ーー手元には事務員の彼が淹れてくれた温かいコーヒーがあって、椅子に座らせられてから、ぼうっと事務員の動きを見ていた。
彼はというと、散らばった書類を片っ端から拾い上げて誇りや汚れをはたくと、きちんと整理してから机の上に整理していく。
終わってから、向かい合わせに置いた椅子に座って、
「……さて、何があったんですか?」
と、真っ直ぐに目を見て聞いてくれた。
ーーたったそれだけで泣きそうになる。
「………うん。実は……。」
俺はまたいつものように書類仕事を押し付けられて、
でも、何も言えなくて、
それでも、もう限界だと思ってしまっている自分にようやく気が付いたのだということを伝えた。
自分の話を真剣に聞いてくれていた彼は、何かを考え込んでいた。
そして、
「……よし! 仕事辞めちゃいましょう!」
と物凄いいい笑顔で親指を立てた。
「え!?」
さすがにその提案には驚いてしまった。
「……だ、だけど」
と、俺が躊躇していると、
「勿論、本当に仕事を辞めるわけではありません。」
そう言って、ニヤリと笑った。
ーー彼の提案はこうだった。
まずは、今ある書類仕事を終わらせる。
それから、今日納品する回復ポーションと明日と明後日の分を含めた3日分を用意して、自分の持つ魔法鞄に保存して、明日と明後日にそれぞれ代わりに自分が提出すると言う。
そして、ちょうど今日討伐依頼を受ける日なので、誰がやっても少し時間がかかりそうな依頼でヘンリーなら早く終わらせられるような依頼を受けるように言われる。
依頼を素早く終わらせたら、ギルドに行って『受付のボニー』と言う女性に、受付にいなければ呼び出してもらって彼女に依頼の品とこの依頼書と自分が書いた《依頼を達成した時間の指定》と《その理由》が書かれたこの手紙を渡して欲しいと言う。
彼女なら、ヘンリーのために嘘の時間での受付をしてくれると。
ーーこうして、時間を稼いでいる間に自分はここの人事ではなく、本部の方の人事にヘンリーの『長期休暇届』を受理してくれるようにお願いしてくるので、ヘンリーには旅の準備をして素早く他の街なり国に行って欲しいと言う。
「そんなにうまく行くかな?」
正直なところ、彼の提案がそんなに簡単に通るとは思えずに不安になってしまう。
そんな俺の不安を拭うようにニッコリと笑ってくれた。
「大丈夫です。僕は勿論、ボニーの他にもあちこちにあなたの味方はいます。」
と、力強く言ってくれたその言葉に無性に泣きそうになってしまった。
ーー自分の味方がまだまだいることに感動してしまう。
そして……
「僕を信じて下さい!!」
その真っ直ぐで真剣な目は信じられると思い、その提案を受けた。
ーーこうして、俺はすぐさま書類仕事を終わらせて、3日分のポーションを作って預けると、依頼自体はそこまで難しくなく、それでいて依頼者が少し頑固で気難しくヘンリーを信頼してくれてる人の依頼を受けることにした。
『長期休暇届』も彼に任せると、依頼書を持って、外出届を提出してから出発したのだった。
でも、これ以上、本来しなくてもいい仕事まで押し付けられて、何も言えないままに寝るまも惜しんで働かされるのはもっと嫌だった。
どうしたものかと悩んでいると、ドアがノックされる。
「!」
ドアがノックされたことに、もしかしてと思い当たり、「どうぞ。」と返事する。
ーーやっぱり。
ドアをノックして入ってきたのは、数少ない中でここで真面目に働いている人事担当の事務員だった。
「お疲れ様です。書類お願いします。」
と笑顔で確認が必要な書類を持ってくる。
「……やあ。」
といつも通り?の笑顔で挨拶したつもりだったが、どうやらかなり疲れた顔をしていたらしく、
「どうしました!? 滅茶苦茶、顔色悪いですよ?」
と指摘されて心配されてしまった。
ーー手元には事務員の彼が淹れてくれた温かいコーヒーがあって、椅子に座らせられてから、ぼうっと事務員の動きを見ていた。
彼はというと、散らばった書類を片っ端から拾い上げて誇りや汚れをはたくと、きちんと整理してから机の上に整理していく。
終わってから、向かい合わせに置いた椅子に座って、
「……さて、何があったんですか?」
と、真っ直ぐに目を見て聞いてくれた。
ーーたったそれだけで泣きそうになる。
「………うん。実は……。」
俺はまたいつものように書類仕事を押し付けられて、
でも、何も言えなくて、
それでも、もう限界だと思ってしまっている自分にようやく気が付いたのだということを伝えた。
自分の話を真剣に聞いてくれていた彼は、何かを考え込んでいた。
そして、
「……よし! 仕事辞めちゃいましょう!」
と物凄いいい笑顔で親指を立てた。
「え!?」
さすがにその提案には驚いてしまった。
「……だ、だけど」
と、俺が躊躇していると、
「勿論、本当に仕事を辞めるわけではありません。」
そう言って、ニヤリと笑った。
ーー彼の提案はこうだった。
まずは、今ある書類仕事を終わらせる。
それから、今日納品する回復ポーションと明日と明後日の分を含めた3日分を用意して、自分の持つ魔法鞄に保存して、明日と明後日にそれぞれ代わりに自分が提出すると言う。
そして、ちょうど今日討伐依頼を受ける日なので、誰がやっても少し時間がかかりそうな依頼でヘンリーなら早く終わらせられるような依頼を受けるように言われる。
依頼を素早く終わらせたら、ギルドに行って『受付のボニー』と言う女性に、受付にいなければ呼び出してもらって彼女に依頼の品とこの依頼書と自分が書いた《依頼を達成した時間の指定》と《その理由》が書かれたこの手紙を渡して欲しいと言う。
彼女なら、ヘンリーのために嘘の時間での受付をしてくれると。
ーーこうして、時間を稼いでいる間に自分はここの人事ではなく、本部の方の人事にヘンリーの『長期休暇届』を受理してくれるようにお願いしてくるので、ヘンリーには旅の準備をして素早く他の街なり国に行って欲しいと言う。
「そんなにうまく行くかな?」
正直なところ、彼の提案がそんなに簡単に通るとは思えずに不安になってしまう。
そんな俺の不安を拭うようにニッコリと笑ってくれた。
「大丈夫です。僕は勿論、ボニーの他にもあちこちにあなたの味方はいます。」
と、力強く言ってくれたその言葉に無性に泣きそうになってしまった。
ーー自分の味方がまだまだいることに感動してしまう。
そして……
「僕を信じて下さい!!」
その真っ直ぐで真剣な目は信じられると思い、その提案を受けた。
ーーこうして、俺はすぐさま書類仕事を終わらせて、3日分のポーションを作って預けると、依頼自体はそこまで難しくなく、それでいて依頼者が少し頑固で気難しくヘンリーを信頼してくれてる人の依頼を受けることにした。
『長期休暇届』も彼に任せると、依頼書を持って、外出届を提出してから出発したのだった。
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