ナンキョクグマ

さっきはごめん──最後に妻にかけたのは誠意のない謝罪の言葉だった。

きっかけは些細な喧嘩だった。あの時は僕も冷静さをかいていたから、あんなふうに言ってしまった。でもちゃんと反省した。ちゃんと謝ろうと思った。彼女が帰ってきたら──なのに。彼女はこの世界から消えた。後悔は先に立たない。僕に残ったのは僕自身と彼女の記憶だけ。僕には過去しか残っていない。残された僕に何ができようか。この世界で、一人。
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