13円

「あれ? 財布がない」
 全てのポケットを探してみたが、改札を抜ける時まではあったはずの財布がなかった。
 地下鉄の中でハッとして周りに視線を送った。乗客はいなかったし、吊革を握って立っているのはおれだけだった。
 新しい高校への転校初日だが、先が思いやられてしまう。
 このままでは、よく知らない初めての駅の改札口で困るだろうな。駅員さんになんて言おうか?
 財布を盗まれた。
 そういうのが一番いいけど。
 しかし、まったく覚えがないので見つかることはないだろうな。


 財布の中には、何故か一円玉が13枚。
 転校初日の奇妙な出来事だった。
 存在自体から距離を置いてしまった高校生の物語。
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