幽玄の里

「おいおい。泣いていないで、さ、さ、冷たい番茶を飲めや」
 冴木 彦次郎は今年で59になる私の祖父だ。
 私は布団部屋で着物を乱して、上半身だけ起き上がり、子供のようにわんわんと泣いていた。
 彦次郎の進める番茶を勢いよく手で叩き。
 いつまでも、泣いていた。 
「もう、生きていたくない!」
 番茶は畳の上にまき散って、コロコロと転がり部屋の隅の風呂敷包み当たった。
 
 8月8日で、私は16歳だった。あの風呂敷包みには何があるのだろう?
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