ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第十学園祭の騒動

7.小さな騎士

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突然現れたナポレオンはアリアナの前に立ちはだかる。
天井から糸を吊るしてぶらぶら揺れながら至近距離でアリアナを睨んでいる。


「ピー!!」

「いやぁぁあ!」

口を開き牙を見せられ、かなりグロテスクだった。


「解るよ…あれは恐怖だ」

「ユランさん」

虫が大嫌いな人間にしたら至近距離で牙を見せられたら恐怖心で気を失っても可笑しくない。


「ナポレオン」

「ピー!!」

ナポレオンはエステルを見て大きな瞳からブワッと涙を流すが、零れ落ちた雫がアリアナの制服に落ちる。


「きゃああ!」

その雫は時には毒となる成分だった。


アリアナの皮膚には零れなかったがおかけで制服が溶けてしまい、あられもない格好になる。


「いやぁぁぁ!」

制服の胸元が見えてしまい、あられもない姿をさらすことになった。

大勢いる中、居た堪れなくなりアリアナは泣きながらその場を去って行く。


「嵐が去ったわね」

「そうですね」


一瞬で去ってしまったアリアナ。
救世主となったナポレオンに全員拍手を送り、この場を収めてくれたことに運営委員会達は拍手を送った。



「ナポレオン、何処に行っていたの」

「ピー!」

「中々帰ってこないから心配していたのよ?少し大きくなったわね」


ナポレオンを抱きしめスリスリ頬ずりをする。

「うげぇー、マジか?」

ユランは信じられないと思った。
どんなに可愛かろうと虫なのだから気持ち悪さは変わらない。

「ピー!」

「会いたかったわ」


まるで長年離れ離れだった恋人の触れ合いのようだった。


「まぁ、あの馬鹿がいなくなったんだし」


「終わりよければすべてよしですね」

ミシェルとアリスは容赦がなかったが、邪魔者アリアナがいなくなってくれたおかげで最後のスケジュール調整は上手くいき、明日の準備は滞りなく終わることが叶った。




――一方、その頃アリアナは。


「あの女…絶対許さない!」


裏庭で唇をかみ締めていた。

散々恥をかかされたアリアナはエステルへの恨みを日に日に募らせていく。


「何であの女が攻略対象に愛されているのよ!!愛されるのは私なのに…」

爪を噛み、睨みつける。


「絶対に許さない…この私の思い通りにならないなんてありえないんだから!」


この世界は自分の為にあるのだと思い込むアリアナはそのまま寮に戻って行く。

その姿をこっそり盗み見している者がいるとは知らずにいた。
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