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第二章

23.朝のやり取り

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学園生活は思った以上に快適だった。
寮生活はそこまで厳しい規則はないし、生徒の自主性を育むために作られたあらゆるシステムが存在するので最初こそは苦労している生徒も多かったが、私達の寮は快適だった。


「いやぁ、朝の運動は気持ちいな」


早朝、軽やかに薪を割る音が響く。

「ありがとうございますリオネル様。これで薪に困ることはありません」

「しかし、木の枝も居るのか?」

私達の住まう寮は他の寮に比べて古く、かまどの作りもかなり古かった。
燃料は薪を使うのだけど、傍にある蔵からボロボロの炉と寂れた網を見つけたのだ。

少し手を加えて七輪を作り、炭を用意すれば。


「炭火で焼いた魚は美味しいんですよ。それに炭火の力はすごいんですから」

「ふむ、便利なスキルだな」

私の緑のスキルを使ってツルを出して炭を一まとめにする。

戦闘等ではあまり使えないけど私の魔力は花を活性化させる能力がある。
ついでに言えば植物の生産、採取もスキルの一つだ。


「しかし少し熱いな」

「そうですね、そろそろ夏ですし」

季節が変わるのは早く、もうすぐ夏休みだ。
試験の結果に問題がなかった生徒は休みには実家に帰る生徒もいる。

私も実家に顔はだそうと思っているのだけど。


「何をしているんですか、お二人共…って、リオネルさん!なんて破廉恥な!」

爽やかな朝を壊すかのようにスコットが現れる。
リオネル様が上半身裸なのを見て怒り、私も火の粉を被ってしまう。


「エリーゼさん、貴女は令嬢でしょう。朝から何という奇抜な姿を」

「どう?ジャージよ」

「じゃーじ…なる者は存じませんが、女性がそのような格好をするのはいかがなものかと」

私が開発したジャージは、スチュアート家で畑仕事をするようになった時に作ったのだ。
服が汚れても、ジャージならばすぐに汚れも落ちる。

ちなみに製作者はランだけど。
お針に才能も文句のつけようもないランは私の願い通り作ってくれた。


今思えばランってすごくない?
薬草の知識に、武術の達人で、裁縫の腕も宮廷お針子にも勝るとも劣らないのだから。


「それにしても、随分上等な生地に見えますが」

「え?これ、キャタピラの糸で作ってあるのよ」

「は?」

「だって綿は高いし、キャタピラの糸なら低価格で手に入るし」

「貴女は貴族ですよね?公爵令嬢ですよね!」


高位貴族に限らず、一般の貴族ならば高価な生地を使うだろう。
しかも貴族令嬢は一度来た服は着回ししないことが多いとされているけど。

お母様が物を大切にしする人だから、必要最低限しかドレスも買い換えない。
お父様から送られて来た型崩れしたドレスも思い出の品だと大切にして少しだけリメイクして今でも着ている。

私も幼い頃にお母様の姉君、伯母様にいただいたドレスや小物は大切に使っている。

まぁ、マリアンヌはその都度買い換えているけど。
前世の頃から物を大切にしていたし、貧乏性の癖がまだ残っていた。


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