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13−18 眠れぬ夜
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食事が終わった後、アリアドネは一足先に部屋へと戻った。
そして入浴を済ませ、夜着に着替えてベッドに入ったものの全く眠れなかった。
明日はいよいよ王都に到着することを考えると緊張のあまり、眠気どころでは無かったのだ。
「駄目ね……とても眠れそうに無いわ……」
ため息を着くとベッドから起き上がり、ベッドサイドに掛けておいたガウンに袖を通した。
「ワインでも飲めば少しは眠くなるかしら……」
先程食事の時ワインを飲んでほろ酔い気分にはなったものの、入浴したせいですっかり酔いも覚めていたのである。
アリアドネはテーブルの上に置かれたワインを見つめた。
このワインは食事の席でカインから「よろしければ寝酒にどうぞ」と貰ったものである。
「少しでも飲めば眠れるかも知れないわね」
そこでアリアドネはワインを飲もうと思い……肝心な物が無いことに気付いた。
「困ったわ……ワインの栓を抜く道具が無いなんて……」
階下の食堂に行けば、様々な食卓道具が揃っている。
(多分食堂に行けばワインの栓を抜く道具があるわよね……?)
時刻は既に23時を過ぎている。
「もう皆さん眠っていればいいけど……」
いくらガウンを着ていても夜着のまま男性たちの前に出るのは抵抗があった。
そこで人の気配がないか確認する為に階下の様子を見に行くことにした。
は試しに扉をそっと開けて階下の様子を伺うとシンと静まり返っている。
(誰もいないみたいね……)
そこでアリアドネは手燭に火を灯すと、階下へ降りていった。
**
(え…?誰かいる……?)
食堂に降りたアリアドネは驚いた。
真っ暗な部屋の中、一箇所だけアルコールランプで明く照らされたテーブルがあったのだ。
そこには誰かが座って1人、ワインを飲んでいた。
アリアドネは目を凝らし……驚いた。
(エルウィン様?)
驚いたことに1人食堂でワインを飲んでいるのはエルウィンだったのだ。
その時、アリアドネは思った。
今ならエルウィンに手編みのマフラーを渡せるのではないかと……。
そこで、アリアドネは思い切って声を掛けた。
「エルウィン様……」
「え?!」
その声にエルウィンは驚いて振り返った。
「アリアドネ?こんなところで何をしているんだ?」
エルウィンは立ち上がると声を掛けた。
「はい……明日のことを考えると、眠れなくて…。それで部屋でワインを飲もうと思っていたところ、ワインの栓抜きが無かったものですから取りに来たのです」
アリアドネは急に自分の行動が気恥ずかしくなり、最後の方は消え入りそうな声になっていた。
「何だ、そんなことだったのか。だったら栓抜きならここにあるから持っていけばいい」
エルウィンがテーブルの上の栓抜きに手を伸ばしかけた時……。
「い、いえ。あの、少しだけこちらで待って頂けますか?すぐに戻りますので」
アリアドネは慌ててエルウィンに声を掛けた。
「ん?ああ…それは別に構わないが?」
エルウィンはまだ当分ここで1人、ワインを飲んでいるつもりだった。
「ではすぐに戻りますからお待ち下さい」
アリアドネは急いで部屋へと戻った。
エルウィンに渡すために編んだマフラーをプレゼントする為に――。
そして入浴を済ませ、夜着に着替えてベッドに入ったものの全く眠れなかった。
明日はいよいよ王都に到着することを考えると緊張のあまり、眠気どころでは無かったのだ。
「駄目ね……とても眠れそうに無いわ……」
ため息を着くとベッドから起き上がり、ベッドサイドに掛けておいたガウンに袖を通した。
「ワインでも飲めば少しは眠くなるかしら……」
先程食事の時ワインを飲んでほろ酔い気分にはなったものの、入浴したせいですっかり酔いも覚めていたのである。
アリアドネはテーブルの上に置かれたワインを見つめた。
このワインは食事の席でカインから「よろしければ寝酒にどうぞ」と貰ったものである。
「少しでも飲めば眠れるかも知れないわね」
そこでアリアドネはワインを飲もうと思い……肝心な物が無いことに気付いた。
「困ったわ……ワインの栓を抜く道具が無いなんて……」
階下の食堂に行けば、様々な食卓道具が揃っている。
(多分食堂に行けばワインの栓を抜く道具があるわよね……?)
時刻は既に23時を過ぎている。
「もう皆さん眠っていればいいけど……」
いくらガウンを着ていても夜着のまま男性たちの前に出るのは抵抗があった。
そこで人の気配がないか確認する為に階下の様子を見に行くことにした。
は試しに扉をそっと開けて階下の様子を伺うとシンと静まり返っている。
(誰もいないみたいね……)
そこでアリアドネは手燭に火を灯すと、階下へ降りていった。
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(え…?誰かいる……?)
食堂に降りたアリアドネは驚いた。
真っ暗な部屋の中、一箇所だけアルコールランプで明く照らされたテーブルがあったのだ。
そこには誰かが座って1人、ワインを飲んでいた。
アリアドネは目を凝らし……驚いた。
(エルウィン様?)
驚いたことに1人食堂でワインを飲んでいるのはエルウィンだったのだ。
その時、アリアドネは思った。
今ならエルウィンに手編みのマフラーを渡せるのではないかと……。
そこで、アリアドネは思い切って声を掛けた。
「エルウィン様……」
「え?!」
その声にエルウィンは驚いて振り返った。
「アリアドネ?こんなところで何をしているんだ?」
エルウィンは立ち上がると声を掛けた。
「はい……明日のことを考えると、眠れなくて…。それで部屋でワインを飲もうと思っていたところ、ワインの栓抜きが無かったものですから取りに来たのです」
アリアドネは急に自分の行動が気恥ずかしくなり、最後の方は消え入りそうな声になっていた。
「何だ、そんなことだったのか。だったら栓抜きならここにあるから持っていけばいい」
エルウィンがテーブルの上の栓抜きに手を伸ばしかけた時……。
「い、いえ。あの、少しだけこちらで待って頂けますか?すぐに戻りますので」
アリアドネは慌ててエルウィンに声を掛けた。
「ん?ああ…それは別に構わないが?」
エルウィンはまだ当分ここで1人、ワインを飲んでいるつもりだった。
「ではすぐに戻りますからお待ち下さい」
アリアドネは急いで部屋へと戻った。
エルウィンに渡すために編んだマフラーをプレゼントする為に――。
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