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17-1 城への帰還
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その後もエルウィン達は旅を続け……5日目に、ようやく『アイデン』地方へ辿り着いた。
その知らせは伝令として早急にアイゼンシュタット城へもたらされた――。
午前11時――
シュミットが執務室でエルウィンの代理として仕事をしている所へ突然乱暴に扉が開かれ、スティーブが駆け込んできた。
「おい!シュミット!いるんだろう?!」
その勢いで机の上に山積みになっていた書類がフワリと宙を舞い、数枚が床の上に落ちてしまった。
「スティーブ……」
眼鏡の位置を直し、シュミットはため息を付いた。
「あ、悪い」
慌てて床に落ちた種類を拾い上げるスティーブにシュミットは声を掛けた。
「一体、そんなに何を慌てているんだ?」
「ああ、そのことなんだが今伝令が入ってきたんだ。エルウィン様達がもうすぐ帰って来るぞ!最後の宿場村を通り過ぎたらしい」
「何だって?そうなのか?それにしては随分お帰りが早いな。そんなに長く王都に滞在しなかったということだろうか?」
首を捻るシュミット。
「確かにそうだよな……。1週間は王都に滞在されると思っていたのだが……」
そして2人は声を揃えた。
「「とにかく出迎えの準備だ!!」」
その後、シュミットとスティーブエルウィンを出迎える準備を始めた――。
「アリアドネ様、御覧下さい。アイゼンシュタット城が見えてきましたよ」
御者をつとめるカインが馬車の中のアリアドネに声を掛けてきた。
「ええ、本当ね」
約10日ぶりに見るアイゼンシュタット城はアリアドネにとって、酷く懐かしく思えた。
(ミカエル様とウリエル様……それに下働きの人達は皆元気にしているかしら……。私ったら、いつの間にかあの城が自分の居場所に思えていたのね……)
けれど、アイゼンシュタット城に帰れば自分はもう出ていかなければならない。
エルウィンからは城に戻った後に、お金を貰う約束を既に交わしているのだ。そしてアリアドネはお金を受け取れば、城を去らなければならないのだと思い込んでいたのだ。
様々な思いが交錯し……アリアドネは口を閉ざしてしまった。
「どうかさないましたか?」
「いえ、何でも無いわ」
アリアドネは返事をすると、再び馬車の外に目を向けるのだった――。
****
エルウィン達が城門をくぐり抜けて城の前までやってくると、既に大扉の前にシュミットとスティーブ、それにエデルガルトを先頭に騎士たちが出迎えに現れていた。
『お帰りなさいませ!エルウィン様!』
「ただいま。どれ、アリアドネを迎えに行くか」
エルウィンはヒラリと馬から降りると、アリアドネが乗る馬車へ上機嫌で向かった。
「おい、見たか?エルウィン様の様子を」
スティーブがシュミットの耳元で囁く。
「ああ。見たとも。自らアリアドネ様を迎えに行かれたようだ」
「きっと……旅の途中で2人の中は進展したようだな」
ポツリと呟くスティーブにシュミットはため息をついた。
「仕方がない……元々アリアドネ様はエルウィン様の元へ嫁いでこられた方なのだから」
そこへ、2人の会話を聞いていたエデルガルトが会話に入ってきた。
「何だ?お前達はアリアドネ様に横恋慕していたのか?」
「そ、そんな!」
「横恋慕だなんて!」
慌てて首を振るスティーブにシュミット。
「アリアドネ様のことは諦めろ。恐らくお2人はもう間もなく婚姻されるだろうからな」
「「はい……」」
エデルガルトの言葉に元気無く頷く若者2人。
このときは、まだ誰もがアリアドネが本気で城を出ようとしているとは思いもしていなかったのだった――。
その知らせは伝令として早急にアイゼンシュタット城へもたらされた――。
午前11時――
シュミットが執務室でエルウィンの代理として仕事をしている所へ突然乱暴に扉が開かれ、スティーブが駆け込んできた。
「おい!シュミット!いるんだろう?!」
その勢いで机の上に山積みになっていた書類がフワリと宙を舞い、数枚が床の上に落ちてしまった。
「スティーブ……」
眼鏡の位置を直し、シュミットはため息を付いた。
「あ、悪い」
慌てて床に落ちた種類を拾い上げるスティーブにシュミットは声を掛けた。
「一体、そんなに何を慌てているんだ?」
「ああ、そのことなんだが今伝令が入ってきたんだ。エルウィン様達がもうすぐ帰って来るぞ!最後の宿場村を通り過ぎたらしい」
「何だって?そうなのか?それにしては随分お帰りが早いな。そんなに長く王都に滞在しなかったということだろうか?」
首を捻るシュミット。
「確かにそうだよな……。1週間は王都に滞在されると思っていたのだが……」
そして2人は声を揃えた。
「「とにかく出迎えの準備だ!!」」
その後、シュミットとスティーブエルウィンを出迎える準備を始めた――。
「アリアドネ様、御覧下さい。アイゼンシュタット城が見えてきましたよ」
御者をつとめるカインが馬車の中のアリアドネに声を掛けてきた。
「ええ、本当ね」
約10日ぶりに見るアイゼンシュタット城はアリアドネにとって、酷く懐かしく思えた。
(ミカエル様とウリエル様……それに下働きの人達は皆元気にしているかしら……。私ったら、いつの間にかあの城が自分の居場所に思えていたのね……)
けれど、アイゼンシュタット城に帰れば自分はもう出ていかなければならない。
エルウィンからは城に戻った後に、お金を貰う約束を既に交わしているのだ。そしてアリアドネはお金を受け取れば、城を去らなければならないのだと思い込んでいたのだ。
様々な思いが交錯し……アリアドネは口を閉ざしてしまった。
「どうかさないましたか?」
「いえ、何でも無いわ」
アリアドネは返事をすると、再び馬車の外に目を向けるのだった――。
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エルウィン達が城門をくぐり抜けて城の前までやってくると、既に大扉の前にシュミットとスティーブ、それにエデルガルトを先頭に騎士たちが出迎えに現れていた。
『お帰りなさいませ!エルウィン様!』
「ただいま。どれ、アリアドネを迎えに行くか」
エルウィンはヒラリと馬から降りると、アリアドネが乗る馬車へ上機嫌で向かった。
「おい、見たか?エルウィン様の様子を」
スティーブがシュミットの耳元で囁く。
「ああ。見たとも。自らアリアドネ様を迎えに行かれたようだ」
「きっと……旅の途中で2人の中は進展したようだな」
ポツリと呟くスティーブにシュミットはため息をついた。
「仕方がない……元々アリアドネ様はエルウィン様の元へ嫁いでこられた方なのだから」
そこへ、2人の会話を聞いていたエデルガルトが会話に入ってきた。
「何だ?お前達はアリアドネ様に横恋慕していたのか?」
「そ、そんな!」
「横恋慕だなんて!」
慌てて首を振るスティーブにシュミット。
「アリアドネ様のことは諦めろ。恐らくお2人はもう間もなく婚姻されるだろうからな」
「「はい……」」
エデルガルトの言葉に元気無く頷く若者2人。
このときは、まだ誰もがアリアドネが本気で城を出ようとしているとは思いもしていなかったのだった――。
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