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13.好きなものを好きだと思うのは悪いことなの?

キミの修太郎さんは日織ちゃんのハートをどうやって射止めたの?

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「じゃあそれ、とりあえず利き酒してみてよ」

 言いながら、「だからこそ僕は昔から日織ひおりちゃんのこと、〝格別に気に入ってたりする〟んだよね」と思った一斗いっとだ。

 しかし一斗いっとがどんなに粉をかけてみたところで、日織本人がこの調子では、かけた粉は払い落とされ続けるんだろうな、とも分かるから我知らず吐息が漏れてしまう。


「ねぇ日織ちゃん。キミの修太郎しゅうたろうさんは……日織ちゃんのハートをどうやって射止めたの?」

 この、ニュルニュルと掴みどころのない鰻みたいな女の子を、「私は人妻なのですっ!」と自覚させることが出来る男というのは、一体どんな人間なんだろう?と気になってしまった。

「修太郎さんはとってもとっても一途なかたなのですっ。私、彼のそう言うところが大好きなのですっ。――それにっ」

 そこでポッと赤くなると「物凄くハンサムさんなのですっ。私、大人になって修太郎さんと再会して……あまりの格好良さに気が付いたら大好きになってしまっていたのですっ」と「キャーキャー」言いながらモジモジする。

(わー、日織ちゃん、めっちゃ女の顔になってるじゃん)

 頬に手を当てて照れ臭そうにする日織を見て、一斗いっとは何だかこっちまであてられてしまいそうだと思ってしまった。

「で、僕と修太郎しゅうたろうさんって、どこが似てるの?」

 さっき日織ひおりは自分を見ると〝脳が混乱する〟と話していた。

 自分の勘違いでなければ、あれはきっと修太郎さんとやらと自分の間に何か共通点があって、そこに日織が惑わされていたということなんじゃないかと思った一斗いっとだ。
 ある意味賭けみたいに鎌をかけてみただけなのだが、日織はまんまと引っかかってくれた。

「お顔というか……雰囲気というか……そういうのが何となく似ていらっしゃるのです……。ほ、本当に何となくなんですけどっ」

 ゴニョゴニョ。

 何となくを強調する日織に、一斗いっとは見た目かぁ~と内心そわそわする。

 自分は日織の好みのタイプだったと告白されているのと変わらなかったから。

「僕が修太郎さんより先に言い寄ってたら、日織ちゃんは僕の奥さんだったかもしれないね」

 惜しいことをしたとしみじみ思ってしまった一斗いっとだ。

十升みつたかのヤツがもっと早く忘年会をしてくれてたらよかったのに)

 半ば当てつけのように弟を非難してみたりしたのは、日織のことをそのぐらい気に入っていたからに他ならない。
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