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聖女お披露目のパレードは、国中を挙げてのイベントだからか、下町もいつもより活気があふれている。
食堂でも見かけたが、いろいろな国から一目聖女を見ようと観光客がたくさんいる。服装も髪型も様々で、珍しい光景で楽しい。
さすがに東京よりも人は多くないが、それでも久しぶりの人の多さに酔ってしまった。
「アイリ?」
騎士の制服を着た男が話しかけてきた。
平民にしては珍しい銀色の髪。
「シルバー……」
「顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?」
「ちょっと人に酔っただけ」
「こんなに人が多いのは、珍しいからね。少し待ってて」
私は、路地の端に寄って、しゃがみこんでシルバーを待った。
シルバーは、本当にすぐに帰ってきた。
コップを持っている。
「あ。ごめん。お金…」
「いいよ。大した金額じゃないし」
「ありがとう」
受け取って飲み物を飲む。
おいしい。ミックスジュースだ。
下町の出店によく売っているやつで、フルーティーでおいしい。
桃のような味がするのが特徴だ。
この辺では、果物がよく育つから安価で買える。
ちなみに野菜も安いから、下町の主食は雑炊や鍋だ。
そう。この世界にもお米があるのだ。
しかし、日本のものとは違って、味が薄いというか、何の味もしない。
ぱさぱさしているし、お米単品で食べるというよりは、汁物に入れるのがこの世界の食べ方なので、そこに違和感を感じる。
もちもちの甘いお米は、この世界にはないし、おかずでお米を食べる習慣がないので、たまに日本のお米が恋しくなる。
「おいしい」
「アイリは、このジュース好きだもんね」
「おいしいからね」
「今は、休憩?食堂は大丈夫なのかい?」
「いやぁ。追い出されちゃった」
「追い出されちゃった?」
「ご令嬢と喧嘩しちゃってね」
「あぁ……メアリー嬢か」
「あの人、店が混んでるのに相変わらずよ」
今頃、エドはメアリー嬢の相手をしているに違いない。
メアリー嬢は屋敷の中に顔の良い男を集めていると聞く。
「シルバーは大丈夫?」
「ああ…。まぁ」
歯切れの悪い言葉になんとなく察する。
「貴族のご機嫌取りも大変だね」
「それも仕事の一つだからね」
「騎士様も大変だ」
「そうだね。でも、やりがいもあるよ」
「シルバー隊長。そろそろお時間です」
同じ隊の人だろうか。
同じように騎士の制服を着た女性がこちらに近寄ってくる。
私のことをちらりと見た後、シルバーから少しも目を離さない。
「ああ。じゃあ、気分が悪くなったら、宿に戻るんだよ」
「分かってる。ジュースありがとう。仕事頑張ってね」
「ありがとう。行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
シルバーの背を見ていると、またしても女性が私を振り返って睨んでくる。
そんな睨まなくても、あなたが疑うような人間じゃないですよ。と、内心返す。
食堂でも見かけたが、いろいろな国から一目聖女を見ようと観光客がたくさんいる。服装も髪型も様々で、珍しい光景で楽しい。
さすがに東京よりも人は多くないが、それでも久しぶりの人の多さに酔ってしまった。
「アイリ?」
騎士の制服を着た男が話しかけてきた。
平民にしては珍しい銀色の髪。
「シルバー……」
「顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?」
「ちょっと人に酔っただけ」
「こんなに人が多いのは、珍しいからね。少し待ってて」
私は、路地の端に寄って、しゃがみこんでシルバーを待った。
シルバーは、本当にすぐに帰ってきた。
コップを持っている。
「あ。ごめん。お金…」
「いいよ。大した金額じゃないし」
「ありがとう」
受け取って飲み物を飲む。
おいしい。ミックスジュースだ。
下町の出店によく売っているやつで、フルーティーでおいしい。
桃のような味がするのが特徴だ。
この辺では、果物がよく育つから安価で買える。
ちなみに野菜も安いから、下町の主食は雑炊や鍋だ。
そう。この世界にもお米があるのだ。
しかし、日本のものとは違って、味が薄いというか、何の味もしない。
ぱさぱさしているし、お米単品で食べるというよりは、汁物に入れるのがこの世界の食べ方なので、そこに違和感を感じる。
もちもちの甘いお米は、この世界にはないし、おかずでお米を食べる習慣がないので、たまに日本のお米が恋しくなる。
「おいしい」
「アイリは、このジュース好きだもんね」
「おいしいからね」
「今は、休憩?食堂は大丈夫なのかい?」
「いやぁ。追い出されちゃった」
「追い出されちゃった?」
「ご令嬢と喧嘩しちゃってね」
「あぁ……メアリー嬢か」
「あの人、店が混んでるのに相変わらずよ」
今頃、エドはメアリー嬢の相手をしているに違いない。
メアリー嬢は屋敷の中に顔の良い男を集めていると聞く。
「シルバーは大丈夫?」
「ああ…。まぁ」
歯切れの悪い言葉になんとなく察する。
「貴族のご機嫌取りも大変だね」
「それも仕事の一つだからね」
「騎士様も大変だ」
「そうだね。でも、やりがいもあるよ」
「シルバー隊長。そろそろお時間です」
同じ隊の人だろうか。
同じように騎士の制服を着た女性がこちらに近寄ってくる。
私のことをちらりと見た後、シルバーから少しも目を離さない。
「ああ。じゃあ、気分が悪くなったら、宿に戻るんだよ」
「分かってる。ジュースありがとう。仕事頑張ってね」
「ありがとう。行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
シルバーの背を見ていると、またしても女性が私を振り返って睨んでくる。
そんな睨まなくても、あなたが疑うような人間じゃないですよ。と、内心返す。
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