隣にいたはずの人を、世界は覚えていない

世界が、静かに壊れ始めていた。
空に走る裂け目。夜ごと増える違和感。
それらの“原因”が、自分にあることを、蒼真は知っている。

幼馴染であり、隣に住む少女・夕莉。
何でもない日常の象徴だった彼女こそが、
世界を救うための「条件」だった。

――最も大切な存在を、自らの手で殺すこと。
――そして、救済の代償として、蒼真自身は世界から完全に消えること。

記憶から、記録から、関係性から。
最初から「いなかった存在」になるという結末。

選択肢はない。
それでも蒼真は、世界を選ぶ。

救われた世界で、夕莉は生き続ける。
理由の分からない喪失感だけを胸に抱いたまま。

誰にも覚えられず、
誰にも感謝されず、
それでも確かに“隣にいたはずの人”の物語。

これは、
救われない者によって救われた、
世界の、その後の話。
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