いつわり王子は花嫁に酔う

佐倉 紫

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番外編

1-7 湯中 ☆

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 囁くような声に促されるように、おずおずと目を開けば、湯気で上気したオーランドの瞳が間近に迫っているのが見えた。
「ぁ、オーランド……」
「おれを見ろ、アンリエッタ」
 耳元で囁かれ、アンリエッタはぶるりと震える。それでもおずおずと瞳を開いて見つめていると、オーランドもまた瞳を開いたまま、アンリエッタに口づけてきた。
 一度、二度、と重ねられ、再び舌を絡ませられ、アンリエッタはもう息もできない。自然と息が荒くなり、思考に靄がかかる頃、オーランドが腰元を隠していたアンリエッタの手を取った。
「あ……っ」
 そうして導かれた先は、オーランドの中心だ。そこはすでに猛り立って、アンリエッタの指先がふれると、どくんと心臓のように脈動する。
 かつて手ひどく抱いた経験からか、オーランドはアンリエッタが申し出ても、決して自らの一物をふれさせようとしなかった。
 その彼が、自ら自身にふれさせた……
 そう思うと、アンリエッタの胸には自然と喜びが湧きあがってくる。思わず目元を和ませると、彼もまた潤んだ瞳をわずかに細めた。
「さわってくれ、アンリエッタ……」
「あ、ん……ぅんっ、あぁん……っ!」
 アンリエッタが彼を包み込むのと同時に、オーランドもまたアンリエッタの中に指を沈めてきた。割れ目の中を指が行き来し、すっかり勃ち上がった花芯を親指で擦られて、アンリエッタは自然と腰を揺らしてしまう。
「はぁ、はぁ……! ああ、オーランド様……っ」
「おれにも……さわってくれ。おまえを見ておれが欲情するように、おまえも……おれを見て、おれにふれて、もっともっと、求めるんだ……」
「んっ、んぁ……ああ、あぁん……!」
 オーランドの言葉に励まされるように、アンリエッタは空いた手を彼の胸元に這わせる。そうすると厚い胸板の一点に小さく勃ち上がっている肉粒があるのを見つめて、夢中でそこに親指を擦りつけた。
 もう一方の手で負けじと彼の一物をしごく。痛くないよう優しく握りながら、撫でるように前後に擦ってみると、手の中でびくびくと脈動するのが伝わってきて、そのたびに自分の身体からも蜜があふれ出るのがわかってしまった。
「わかるか……? 今にも、破裂しそうなのが……」
「ん、んんっ……やっ、ぁ……わ、わたしのほうがずっと……すぐに……あぁっ!」
 彼の指の動きが速くなる。こらえたかったがあまりに心地よくて、アンリエッタは耐えきれず大きく背を反らした。
 彼の一物を擦ることもできないほど急速に上りつめ、身体を解放してしまう。
「あぅ、や、あぁぁああー……っ!」
 のけぞるのを引き留めず、オーランドは彼女の半身を大理石の床に横たえる。そうして湯に浸かっていた半身をぐっと乗り出すと、アンリエッタの上にのしかかった。
「アンリエッタ……っ」
 お互いの胸が重なり、下肢までぴたりと重なり合う。激しく舌を絡ませながら、彼の一物で割れ目を擦られ、アンリエッタは思わず悲鳴じみた声を上げてしまった。
「あ、あっ、オーランド様……ま、待って、やめて……っ」
「どうした?」
 アンリエッタは涙目になりながら、オーランドの首筋にしがみついた。
「背中、痛いの……」
 柔らかな寝具ならともかく、大理石の上で揺さぶられると肩と腰がひどく痛む。
 オーランドはすぐに気づいて、アンリエッタの細い腰を抱え込むと、再び彼女を湯の中に引き戻した。
 ざぶん、とふたりを中心に湯が波打ち、アンリエッタは気怠い身体をオーランドの肩口に預けた。
 湯の中でゆらゆら揺れていると、絶頂に浸れる時間がいつもより長く感じられる。
 しかしそんな余韻に浸る間もなく、オーランドがぐっと腰を押しつけてきた。
 彼の一物はさらに大きく張り詰めて、アンリエッタに侵入するときを待ち焦がれている。
 それどころか、アンリエッタがぐったりとしている中なのに、入ってこようとしていた。
 まさか湯の中でそんなことをされるとは思わなくて、アンリエッタは大いにうろたえてしまう。
「だ、だめ……!」
「なにが?」
「お、お湯の中で、こんなことするなんて……っ」
「――こんなことって?」
「あんっ……!」
 丸い亀頭が未だ勃ち上がったままの花芯を撫でてきて、アンリエッタはぴくんと肩を跳ね上げた。
「は、ぁあ……っ」
「大丈夫、楽にして……」
 耳元に囁かれると、自然と力が抜けてしまう。
 まさか本当に? そう思ったときには彼は侵入を始めていて、熱塊とともに入り込んできた湯の気配に、アンリエッタは大きく目を見開いた。
「あ、あ――……っ!」
 くぷ、と繋がったところから音が立ったような気がして、アンリエッタはたまらずのけぞってしまう。胸のあたりで波打つお湯にまで反応してしまって、喉元がひくひくと震えてしまった。
「あ、ん……あ、あぁ、あぁあ……だ、め……あん、う、ごいちゃ、やぁ……!」
 突かれるたびに身体が飛んで行ってしまいそうで、アンリエッタはとっさに彼の背に腕を回してしがみついた。オーランドもしっかり腰を捕まえていてくれる。
「は、ぁ、あぁ、あぁああ……だ、めぇ……っ」
 お湯の中での交合はとても不思議な感じがした。彼の熱塊とお湯がひっきりなしに膣内をかき混ぜ、内部の肉襞を熱く蕩かしていく。
 身体全部が浮かんでいるようでひどく心許なくて、それがよけいに意識を繋がったところへ結びつけた。
「あ、あぁん……んっ、んむ……っ」
 その上唇を重ねられるとよけいに熱が内側にこもり、アンリエッタはぼうっとした頭のまま、彼にすべてを委ね、差しだしてしまう。
「ん、ぅん……あ、ん……オー、ランド……っ」
「アンリエッタ……っ、一緒に……っ」
「あ、あ、あぁ……あぁあああああ!!」
 燃え尽きるような熱さが広がり、アンリエッタは高い天井に反響するのも構わず、甘い声を上げてしまう。
 オーランドがぐっと腰を押しつけ、湯よりも熱いものを放ったのは、その直後のことだった……。


 湯あたりか、それとも足首の捻挫のせいか、浴室から出る頃にはアンリエッタは一歩も動けない状態に陥ってしまった。
 そのあと一晩も熱に魘されることになり、オーランドはエリナの逆鱗にふれるやら、レオンに大爆笑されるやらで、さんざんな目に遭わされたらしい。
 とはいえ、さすがにこのときばかりはアンリエッタも「自業自得よ」と思わずにはいられなかった。
 恥ずかしいやら腹立たしいやらで、しばらくオーランドを寝室から締め出してやったくらいである。
 おかげでオーランドは半ばやけくそを起こし、アンリエッタを突き飛ばしたご婦人方を激しく糾弾し(要は八つ当たりをし)、それを盾に取った上、『老害』たる貴族たちを見事に排斥して見せたのであった。
 だが先のような事情があったために、新しく議会に参加した貴族たちからは一目置かれても、次期王太子や妻からはまるで見直されることはなかったという。
 未だ寝室に立ち入らせない妻にいらだつオーランドを、レオンがちょいちょいとからかい、そのたびに怒鳴り声と爆笑が響き渡るのを聞いて――ふたりを補佐する侍従や補佐官たちが、実はおふたりは仲がよかったのだと妙に納得したというのは、また別のおはなし。

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ということでお風呂H回でした。
思ったより長くなってしまって申し訳ないですorz

おかしいな、最初は狭いバスタブの中でいちゃいちゃさせるはずだったのに、
どうしてこんな開放的な場所でことに及んだんだろうorz


番外編はもうひとつかふたつ考えておりますので、
気長にお待ちいただけるとありがたいです。
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