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A 夫婦水入らず2

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「あなたったら、あんな所で無理矢理抱きしめるなんて…」

 私と美乃梨は薄暗い寝室でくつろぎながら、今日の出来事を振り返っていた。就寝前のひとときの会話というやつなのだろうが、美乃梨は呆れた表情で私を責め立てている。
 私は駅で久々に美乃梨を見るやいなや、抱きしめずにはいられなくなった。どれくらいの間抱きしめていたのかもよく分からない。ただその後は美乃梨の手を引き、ラブホテルへと駆け込んだ。
 美乃梨はいつもと違う私の様子に、かなり戸惑っていた。しかし心の底で思っていたことは同じだったのかもしれない。私たちは会えずにいた期間の寂しさを埋めるように、激しく求め合った。
 そして、いつのまにか時間はかなり経ってしまっていたようで…元々観光名所を巡る計画も立てていたのだが、それも叶わなくなり、私たちはほどほどの時間で家へと向かうことにしたのであった。

「若いカップルならともかく、私たちの年齢であんなことしても、恥ずかしいだけですからね」

 そういうわけで私は今、美乃梨に今日の振る舞いのダメ出しをされているというわけだ。

「すまない。何度も言うけど、久しぶりに美乃梨を見たら、我慢できなかったんだ」
「もう、あんなに強引なあなたは初めてでしたよ」

 美乃梨はそう言いながら、厳しい表情を緩めた。そして少しの間を開けた後、恥ずかしそうに呟いた。

「でも…嬉しかったし、ドキドキした…」

 私の鼓動がトクンと高鳴った気がした。まるで付き合い始めた時のように、美乃梨にときめいていた。

「美乃梨…今日は手を繋いで寝よう」
「うん、あなたがそう言うなら…」

 美乃梨の手をぎゅっと握る。美乃梨の手の温もりが伝わってくる。いつしか美乃梨がいてくれることが当たり前になっていたが、決してそんなことはないのだ。
 遠くで生活するようになって改めて感じている。美乃梨が隣にいてくれて、私は幸せだ。私は美乃梨が好きだ。
 そんな幸せな気分に浸りながら、私は深い眠りに誘われていったのであった。
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