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第二章•魔王編
22話◆魔王を困惑させる少年。遊ぼうぜ!
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泥だらけのまま城の応接間に連れて行かれたライアンは
泥だらけのまま、泥だらけの剣を抱えてソファに座らされた。
「リリー!応接間が!ソファーが!泥まみれに!」
「あなたは黙ってなさい!それどころじゃないでしょう!」
頭を抱えて嘆くレオンハルト国王を一蹴し、リリーはライアンに詰め寄る。
「この国が、どうやって出来たかを学校で習っているわよね?」
「戦争ばかりしてた悪い国が…神様の罰によって滅んだってあの嘘くさい話だろ?
魔王が現れて滅ぼしたって…。」
「あなたも、もう10歳…
少し早いかもとは思うけど、真実を教えましょう。
…最初はそうね……私とロージアが兄妹である所から…。
そして戦争ばかりしていた国の皇帝が、ライアンのお父様だった事も。」
ライアンは目を白黒させる。
泥にまみれて、でかい芋がとれたぞー!とか嬉しそうに言っているような父が、数多の国々を侵略するような軍事大国の皇帝をしていたなんて思えない。
母も、元は人間ではなく神の力と聖女リリアーナおばあ様の魔力によって創り出された者であったとは信じがたい。
そんな、聖女だとか妖精だとか女神だとか、神秘的な存在っぽいのに、目の前で仁王立ちしている母は、ライアンにはただのおっかないおかんだ。
しかも、ロージアと兄妹だと言う。
ロージアが兄?どう見てもロージアのが子供じゃん。
「ロージアは俺の弟でもある。同じ母から生まれたからな。」
父が爆弾発言。
カオスってこういう事か?……。意味が分からん。
「ロージアは、この世界の何処かでスゴく悪い人ばかりが溢れるような悪い国が出来たら、それを滅ぼす役目を与えられているのよ。
そして、悪い国が無くなればロージアも倒される事で平和になるの。
その為の剣なのよ。」
「自分を倒せる剣を大事にとっておけって言うの?変なヤツ…」
「……そういう役割なんだそうだ…。」
レオンハルトが少し悲しげな表情を見せながらライアンの頭を撫でた。
「魔王である兄は、この世が平和である内はもう私達に逢わないと決めたのよ。
この世界には現れないと……。
そんなロージアを振り回さないであげて。」
リリーが悲しげに言う。
この先、何十年、何百年先になるか分からないが、魔王を復活させる程の国が現れたならばロージアは魔王として人の世に降り立つ。
そして、そんな国の人々を消し去り、国が無くなればロージアは、その戦いに終止符を打つ為に自身が渡した剣で倒されて魔王は人の世から消える。
自身を倒す剣を大事にしろと言う。
「おまえ、変なヤツだな!」
「…………………お前はアホだね…。」
湖の畔、ライアンは再び剣を手にして立っていた。
剣に呼ばれるように現れたロージアは、暗雲と共に現れ湖の上に竜巻のようにうねる水柱を作って上に座っていたが、やがて馬鹿馬鹿しくなったのか天候を戻し、水柱も消して畔に降り立った。
「また、こんなクソガキに持ち出されてるなんて…。
馬鹿兄上は、僕の剣をどんな風に保管してるのさ。」
「応接間の暖炉の上にキレイに飾ってあるぞ!
今回は母上が、取りにくい魔法を掛けたみたいだったけど、うーんって引っ張ったら取れた!」
ふんぞり返って自慢気に話すライアンにイラッとしたロージアは軽く舌打ちをし、呟く。
「馬鹿兄上の子は親の言う事を聞かないアホで…
妹の子は、元聖女の張る強固な結界を自覚無しで解いちゃうアホで…
僕の甥は魔王である僕を危機感もなく呼び出すアホで…
結局、お前はアホなだけの子だな。」
「俺、クソガキでなくなった!?」
パァっと明るい顔になり自身を指差すライアンに、イラッとしたロージアが声を張る。
「アホなクソガキだよ!なんで剣を持ち出したのさ!
僕が来るの分かっていたよね?死にたいのかな?」
腰に手を当て身を屈め、頭ひとつ低いライアンに視線を合わせたロージアが顔を間近に近付けライアンを睨み付けると、ライアンは明るい顔に母親と同じ紫の瞳を輝かせ、睨み付けるロージアを見詰め返す。
「魔王!俺と友達になろう!一緒に遊ぼうぜ!!」
キラキラ目を輝かせて言う少年に、あからさまに嫌そうな顔をしたロージアが吐き捨てるように言う。
「バッカじゃないの?魔王と友達だとか。
僕、もう帰るからな。
剣が抜かれても、もう10年は来ないから。
おとんと、おかんに心配掛けるんじゃないよ。アホの子!」
ライアンに背を向け、湖に飛び降りようとしたロージアの背中にライアンが抱き付く。
「魔王!待てって!一緒に遊ぼう!友達に……」
「ひゃう!!」
頭ひとつ低いライアンの腕はロージアの胸の辺りに回され、ライアンの手の平には小さな胸の膨らみが収まった。
「魔王。…魔王の…魔王におっぱ……」
「このクソボケぇ!!!どこ触ってんだ!!
ディアーナにしか触られた事無いのに!!」
顔を真っ赤にしたロージアは暗雲を呼び、湖の上に激しい竜巻を作り、ライアンの身体を巻き上げ空高く持ち上げた。
「もうお前は殺すよ!
兄上とリリーにはお前の弟を作って貰う事にする!
お前の弟は、剣をちゃんと後世にまで伝えられるアホな子にならない事を願うよ!」
フルフルと涙目になったロージアは一筋の黒い霧を出し、その先を鋭い棘に変えてライアンの心臓を狙う。
空中で竜巻の中でクルクル回されているライアンは目を回しながらも、怯える様子は無くヘラリと笑う。
「魔王!やっぱ友達やめる!」
「今さら命乞いするの?遅いよ!!死んじゃえ!」
「魔王!!俺と結婚しよう!!!」
ロージアの動きが止まる。
止まり過ぎて竜巻も止まり、ライアンが遥か高くから湖面に向け落下する。
「うわ!うわ!うわ!し、死ぬ!
やだ!死にたくない!魔王と結婚するまで死にたくない~!!」
ポヨン。
湖面は柔らかいスライムのような弾力のあるモノに変わっていた。
「何だこれ!おもしれー!!わははは!」
湖面で跳ねて喜ぶライアンを見下ろし、ロージアが赤い顔を疲労感たっぷりの顔に変え、大きなため息をつく。
「思考がアホ過ぎてついていけない…
こんな馬鹿、ディアーナ以来だよ…。」
「魔王!魔王!ロージア!俺、本気!だから一緒に遊ぼう!!」
ライアンはアホな子だから、友達と結婚相手の区別がついてないのかも知れない。
もしかしたら、男には友達になろう
女には結婚しようと言っている残念な子かも知れない。
「僕、忙しいんだよね…お前みたいなクソガキと遊んでる暇無いんだよ。」
「じゃ、ロージアは魔王になるまでナニやってんの?」
ポヨンポヨンと湖の上で跳ねながらライアンが尋ねる。
何だかイラッとする。
「…それは…変な考え起こすヤツが居ないか見張ったり…」
「ロージア、魔王になりたいのー?わははは!たのシー!」
いつの間にか呼び捨てされている。
しかもアホみたいにポヨンポヨン跳ねて笑いながら問うてくる子どもに苛立ちが募る。
「魔王になんか、なりたくないよ!バッカじゃないの!
嫌われて憎まれて最後は倒されるんだ!
そんな者になりたいワケ無いじゃないか!」
「だよね!だから一緒に遊ぼう!悪いヤツを倒して行こう!
もっと悪くなる前に倒しちゃおうよ!」
苛立ちから声を上げ本音を吐露したロージアはライアンの返答に力が抜け、湖の上にヘタリと座り込んだ。
ポヨンと身体が跳ね、ライアンの方に傾く。
「魔王!魔王になる前に俺が守ってやるよ!
でも、魔王になってしまったら、倒された後に俺がお疲れ様って迎えてあげる!」
ライアンに抱き留められたロージアの頭に変なナレーションが流れる。
『ライアンの胸を棘で刺し貫き、その命を奪うつもりだったロージア。
しかし、彼の鋭い棘は彼の心臓には届かず、逆にロージアの心臓はライアンの愛溢れる言葉に貫かれたのだ…。
そう、それが恋というものなのだ!!!』
「創造神……ジャンセンのアホーーーー!!!!」
泥だらけのまま、泥だらけの剣を抱えてソファに座らされた。
「リリー!応接間が!ソファーが!泥まみれに!」
「あなたは黙ってなさい!それどころじゃないでしょう!」
頭を抱えて嘆くレオンハルト国王を一蹴し、リリーはライアンに詰め寄る。
「この国が、どうやって出来たかを学校で習っているわよね?」
「戦争ばかりしてた悪い国が…神様の罰によって滅んだってあの嘘くさい話だろ?
魔王が現れて滅ぼしたって…。」
「あなたも、もう10歳…
少し早いかもとは思うけど、真実を教えましょう。
…最初はそうね……私とロージアが兄妹である所から…。
そして戦争ばかりしていた国の皇帝が、ライアンのお父様だった事も。」
ライアンは目を白黒させる。
泥にまみれて、でかい芋がとれたぞー!とか嬉しそうに言っているような父が、数多の国々を侵略するような軍事大国の皇帝をしていたなんて思えない。
母も、元は人間ではなく神の力と聖女リリアーナおばあ様の魔力によって創り出された者であったとは信じがたい。
そんな、聖女だとか妖精だとか女神だとか、神秘的な存在っぽいのに、目の前で仁王立ちしている母は、ライアンにはただのおっかないおかんだ。
しかも、ロージアと兄妹だと言う。
ロージアが兄?どう見てもロージアのが子供じゃん。
「ロージアは俺の弟でもある。同じ母から生まれたからな。」
父が爆弾発言。
カオスってこういう事か?……。意味が分からん。
「ロージアは、この世界の何処かでスゴく悪い人ばかりが溢れるような悪い国が出来たら、それを滅ぼす役目を与えられているのよ。
そして、悪い国が無くなればロージアも倒される事で平和になるの。
その為の剣なのよ。」
「自分を倒せる剣を大事にとっておけって言うの?変なヤツ…」
「……そういう役割なんだそうだ…。」
レオンハルトが少し悲しげな表情を見せながらライアンの頭を撫でた。
「魔王である兄は、この世が平和である内はもう私達に逢わないと決めたのよ。
この世界には現れないと……。
そんなロージアを振り回さないであげて。」
リリーが悲しげに言う。
この先、何十年、何百年先になるか分からないが、魔王を復活させる程の国が現れたならばロージアは魔王として人の世に降り立つ。
そして、そんな国の人々を消し去り、国が無くなればロージアは、その戦いに終止符を打つ為に自身が渡した剣で倒されて魔王は人の世から消える。
自身を倒す剣を大事にしろと言う。
「おまえ、変なヤツだな!」
「…………………お前はアホだね…。」
湖の畔、ライアンは再び剣を手にして立っていた。
剣に呼ばれるように現れたロージアは、暗雲と共に現れ湖の上に竜巻のようにうねる水柱を作って上に座っていたが、やがて馬鹿馬鹿しくなったのか天候を戻し、水柱も消して畔に降り立った。
「また、こんなクソガキに持ち出されてるなんて…。
馬鹿兄上は、僕の剣をどんな風に保管してるのさ。」
「応接間の暖炉の上にキレイに飾ってあるぞ!
今回は母上が、取りにくい魔法を掛けたみたいだったけど、うーんって引っ張ったら取れた!」
ふんぞり返って自慢気に話すライアンにイラッとしたロージアは軽く舌打ちをし、呟く。
「馬鹿兄上の子は親の言う事を聞かないアホで…
妹の子は、元聖女の張る強固な結界を自覚無しで解いちゃうアホで…
僕の甥は魔王である僕を危機感もなく呼び出すアホで…
結局、お前はアホなだけの子だな。」
「俺、クソガキでなくなった!?」
パァっと明るい顔になり自身を指差すライアンに、イラッとしたロージアが声を張る。
「アホなクソガキだよ!なんで剣を持ち出したのさ!
僕が来るの分かっていたよね?死にたいのかな?」
腰に手を当て身を屈め、頭ひとつ低いライアンに視線を合わせたロージアが顔を間近に近付けライアンを睨み付けると、ライアンは明るい顔に母親と同じ紫の瞳を輝かせ、睨み付けるロージアを見詰め返す。
「魔王!俺と友達になろう!一緒に遊ぼうぜ!!」
キラキラ目を輝かせて言う少年に、あからさまに嫌そうな顔をしたロージアが吐き捨てるように言う。
「バッカじゃないの?魔王と友達だとか。
僕、もう帰るからな。
剣が抜かれても、もう10年は来ないから。
おとんと、おかんに心配掛けるんじゃないよ。アホの子!」
ライアンに背を向け、湖に飛び降りようとしたロージアの背中にライアンが抱き付く。
「魔王!待てって!一緒に遊ぼう!友達に……」
「ひゃう!!」
頭ひとつ低いライアンの腕はロージアの胸の辺りに回され、ライアンの手の平には小さな胸の膨らみが収まった。
「魔王。…魔王の…魔王におっぱ……」
「このクソボケぇ!!!どこ触ってんだ!!
ディアーナにしか触られた事無いのに!!」
顔を真っ赤にしたロージアは暗雲を呼び、湖の上に激しい竜巻を作り、ライアンの身体を巻き上げ空高く持ち上げた。
「もうお前は殺すよ!
兄上とリリーにはお前の弟を作って貰う事にする!
お前の弟は、剣をちゃんと後世にまで伝えられるアホな子にならない事を願うよ!」
フルフルと涙目になったロージアは一筋の黒い霧を出し、その先を鋭い棘に変えてライアンの心臓を狙う。
空中で竜巻の中でクルクル回されているライアンは目を回しながらも、怯える様子は無くヘラリと笑う。
「魔王!やっぱ友達やめる!」
「今さら命乞いするの?遅いよ!!死んじゃえ!」
「魔王!!俺と結婚しよう!!!」
ロージアの動きが止まる。
止まり過ぎて竜巻も止まり、ライアンが遥か高くから湖面に向け落下する。
「うわ!うわ!うわ!し、死ぬ!
やだ!死にたくない!魔王と結婚するまで死にたくない~!!」
ポヨン。
湖面は柔らかいスライムのような弾力のあるモノに変わっていた。
「何だこれ!おもしれー!!わははは!」
湖面で跳ねて喜ぶライアンを見下ろし、ロージアが赤い顔を疲労感たっぷりの顔に変え、大きなため息をつく。
「思考がアホ過ぎてついていけない…
こんな馬鹿、ディアーナ以来だよ…。」
「魔王!魔王!ロージア!俺、本気!だから一緒に遊ぼう!!」
ライアンはアホな子だから、友達と結婚相手の区別がついてないのかも知れない。
もしかしたら、男には友達になろう
女には結婚しようと言っている残念な子かも知れない。
「僕、忙しいんだよね…お前みたいなクソガキと遊んでる暇無いんだよ。」
「じゃ、ロージアは魔王になるまでナニやってんの?」
ポヨンポヨンと湖の上で跳ねながらライアンが尋ねる。
何だかイラッとする。
「…それは…変な考え起こすヤツが居ないか見張ったり…」
「ロージア、魔王になりたいのー?わははは!たのシー!」
いつの間にか呼び捨てされている。
しかもアホみたいにポヨンポヨン跳ねて笑いながら問うてくる子どもに苛立ちが募る。
「魔王になんか、なりたくないよ!バッカじゃないの!
嫌われて憎まれて最後は倒されるんだ!
そんな者になりたいワケ無いじゃないか!」
「だよね!だから一緒に遊ぼう!悪いヤツを倒して行こう!
もっと悪くなる前に倒しちゃおうよ!」
苛立ちから声を上げ本音を吐露したロージアはライアンの返答に力が抜け、湖の上にヘタリと座り込んだ。
ポヨンと身体が跳ね、ライアンの方に傾く。
「魔王!魔王になる前に俺が守ってやるよ!
でも、魔王になってしまったら、倒された後に俺がお疲れ様って迎えてあげる!」
ライアンに抱き留められたロージアの頭に変なナレーションが流れる。
『ライアンの胸を棘で刺し貫き、その命を奪うつもりだったロージア。
しかし、彼の鋭い棘は彼の心臓には届かず、逆にロージアの心臓はライアンの愛溢れる言葉に貫かれたのだ…。
そう、それが恋というものなのだ!!!』
「創造神……ジャンセンのアホーーーー!!!!」
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