【完結】モブは乙女ゲームにツッコミたい

airria

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転生?

廣岡由美、21歳。

ただ今、絶賛混乱中。

えっと、誰ですかこれは。

私の顔も体も髪も何もかもが違うんだが。

いや、そもそも人種が違う。   

なにこの欧米な顔。

肌ツルツルじゃん。すご。

テラコッタみたいな赤茶色の髪は染めたとして、グレーの瞳は、カラコンでも入ってんの?

そしてこの学生服、コスプレっぽくない?

無駄に肩のとこ空いてて、ニーハイソックスだし、「いやいや無いだろ、こんな学生服。ツッコミどころありまくりだろ」って妹の麻理の乙ゲーで突っ込みまくったの思い出すわー。

そうそう、こんな服だったなー。
薄いグレーで、学年によってリボンの色が違って、攻略対象者達だけラメのカラーリボンで………


…………


…………


これじゃね?

この学生服、あの乙ゲーの制服まんまじゃね?

リボンが赤ってことはこの服3年生の?

………………… 何で私コスプレしてんの?

だめだ、考えてもわからん。

落ち着け。ひとまず落ち着こう。



うん、まずわかってることから整理しよう。

今起きたらこうなっていたわけだけれども、昨日寝るまでは普通だったはず。

普通に家のベッドで寝たよ、うん。

寝る時の格好は、パジャマだったよ、うん。Tシャツと短パン。

で?寝てる間に途中起きたり、変なことなかったよね。

で、起きたらこうなってた、と。

………

この流れ…異世界転生モノ?っぽくない?

もしかして、私死んだ?

そう思うとゾッと背筋が寒くなった。

また寝たら戻るかも、とも思ったが、残念ながら心臓がドッドッドッドッと早鐘を打っていて、全く眠れる気がしない。

あまり信じたくはないが、自分が異世界転生して、あの乙女ゲームに入り込んでしまったと仮定して考えてみることにする。

まずは…もう一度鏡をまじまじと眺めてみる。

この顔には見覚えがない。

肌は綺麗で顔も整ってはいるが、目の醒めるような美人というわけではなく、これと言った特徴のない顔だ。

主要キャラにもサブキャラにもこの顔は居なかった。

という事は、モブの可能性が高い。
大体、これといった特徴のない顔、という時点で、モブの可能性が爆上がりだ。

あと確認すべきは…

名前だ。無駄に長ったらしい名前だったり、キラキラしてる名前だと登場人物の可能性が高い。

名前を確認する術を探し、部屋の机の引き出しや本棚を漁り始めた。

自分の名前を探す作業は難航したが、スクールバッグらしきものを探し当てると、中の教科書にいくつも記名があった。

『モリー トワンク』

これは、モブ決定だわ。

由美は脱力してベッドに倒れ込んだ。

モブであることに脱力したのではない。

見たこともない文字なのに、名前が読めたことがショックだったのだ。

そんな…どうしよう…本当にそんなことが…






しばらく動けなかったが、モリーの名前を知ってから、今までのモリーの記憶が少しずつ蘇り、徐々に身体に馴染む感覚を覚えた。

生来ポジティブな由美は早々にこの状況を諦めた。

夢なら夢でいつか醒めるし、ずっとここで横になっていても元の世界に戻る策は見つからない。

モリーの記憶があれば何とかやって行けるかも、と思えたのも大きかった。

今日は3年生になってから初めての登校日のはずだ。

物語のヒロインは、1年生で白リボンを付けていた。

モリーの記憶にヒロインは存在しない。

しかし、攻略対象者はバッチリ同じ学園に、ゲームと同じ学年で在籍している。

あのゲームで3年生だったシーク王子が同学年、という事は、ヒロインが入学してくるのはまさに今年。

待てよ…だったら、生で見れるじゃん…

このツッコミ待ちネタの宝庫の乙ゲーに、生で立ち会えるじゃん!

そこまで考えて、アドレナリンが一気に分泌され、ワクワクが止まらなくなった。

でも、と自らを牽制する。

モブに転生したからと言って、安易に動くのは危険だ。

なぜなら世の中では、モブがモブらしからぬ動きをすることで、結果ヒロインより目立ってしまい主役になるストーリーが持て囃されているからだ。

モブに転生したからと言って、まだ安心できない。

でもなぁ、せっかくこの世界に来たんだったら、やっぱ、あの無理ある場面を直に見たいよなぁ。

麻里はこの乙ゲーに出てきた学園が、外国の城を参考に構想したとかいうオタクの掲示板を見て「いつか聖地巡礼したい!」と言っていたが、言うなれば、今いるこの世界はリアル聖地巡礼なわけだ。

・・・見つからなければ大丈夫っしょ。私昔から気配消すのうまかったし。

生来ポジティブな由美は、早々に考えるのをやめて、どのシーンに立ち合おうか、ワクワクしながら考え始めた。






父であるトワンク子爵は、城の高官をつとめており、子爵でありながら、余裕のある生活をしているようだ。

馬車も一台所有していた。

朝は出勤する父と共に馬車に乗り、学園で降ろしてもらう。

「本物だあ…」

スチルで何度も見たことのあるレジーナ学園を目の前にして、モリーは少し感動した。

「ごきげんよう」とお上品に挨拶しながら、学生が門をくぐっていく。

モリーは覚悟を決めて、学園に足を踏み入れた。

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