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第2章
第34話 シンシアの結婚式
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「シンシア、結婚式まで後3日ね。準備はどう?」
「なんだかすごく忙しくて、落ち着かないわ」
結婚式の衣装合わせや親戚の人への連絡など、なにかと大変みたいね。シンシアは式の2日前から休み、その後の旅行で2週間休む。
「今日中に、打ち合わせしておきましょうか」
今後の依頼の予定日や、他の業者への支払いの確認をしておく。この辺りの仕事はシンシアに任せていて、結婚後もお店に残ると言ってくれて本当に助かるわ。
「ところで新婚旅行はどこまで行くの?」
「グランが外国に行ってみたいって言ってるから、レグルス国まで行くのよ。帰りにはダークエルフの里にも寄っていくの」
ここからレグルス国までは定期便の船が出ていて、陸路も合わせて5日程で国境まで行けるそうだ。
「船の旅か~。なんだかロマンチックよね。でも高かったんじゃないの」
「でも馬車で2週間近くも旅するよりはましよ。それよりも予約を取るのが大変だったわ」
人を乗せる定期便は数が少なく、人気でなかなか予約できないそうだ。船は一旦港を出ると海洋族の国を通る事になる。外国だから入国や出国審査が必要でお金や手間がかかる。昔は海洋族が人の往来を禁止してたそうだけど、今は定期便に限り出入国を認めている。
「社長たちは、ユイト君の村に行くんですってね」
「ええ、そうなの。村の隣が有名な観光地なんですって。ユイトも1年近く帰ってないっていうから、里帰りも兼ねて行ってくるわ」
ユイトが村に帰ると連絡したら、村の方で飛行機を用意してくれると返事があった。キイエ様と一緒に飛んで行ける事になったけど、観光地だからって空港もあるなんてびっくりだわ。
「シンシア。これで業務連絡は終わりね。少し早いけど今日はもう帰ってもいいわよ。新しい家の片付けがあるんでしょう」
「ありがとう。じゃあ、お先に失礼するわね」
グランは貴族の屋敷から、既に平民街へと引っ越ししてきている。シンシアの実家近くに土地を買って新築の家を建てたそうだ。流石、元お貴族様よね。あのグランが貴族だったとは驚きだけど、シンシアの事も考えて貴族辞めちゃうなんてお熱い事だわ。
2日後。今日はシンシアの結婚式だ。中央公園付近にある教会に、親戚の人達に混ざって私達4人も出席する。
グランの親族の貴族達もいて、立派な服を着てるわね。そういえば貴族ってだけでどの爵位なのか聞いてなかったわね。
「ではこれより、グラテウス様とシンシア様の結婚式を執り行います。新郎新婦の入場です」
後ろの扉が開いて、グランとシンシアが白の正装で入ってきた。シンシアのウエディングドレスがすごく綺麗だ。その後ろには新郎新婦の両親も一緒に入って来る。
「シンシア、すごく綺麗よ」
バージンロードを歩くシンシアが顔を赤らめながら、会釈してくれた。
両親が一番前の席に着席して、新郎新婦が壇上に立つ。
「グラテウス。汝は、シンシア殿を妻とし、生涯に渡り愛し、敬い、守り抜くことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「シンシア。あなたは、グラテウス殿を夫とし、生涯に渡り愛し、敬い、共に助け合うことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「では、誓いの口づけを」
グランがシンシアのベールを恭しく上げて、見つめ合い、愛の口づけを交わした。
その後は互いにプレゼント交換をする。結婚を機に相手にブレスレットだったり、指輪やネックレスなどの装飾品を送り合うのが習わしだ。
シンシア達はイヤリングを送り合うみたい。グランはベールを上げたシンシアの長く少し前に垂れているウサギ耳に、宝石のついたイヤリングをつけてあげる。
そして、グランは片膝を突き、右手を胸に騎士がお姫様に忠誠を誓うかのようなポーズで頭を下げる。シンシアは凛々しくピンと立った耳にイヤリングをつけた。グランは元軍人だけあって動作が板について恰好いいわ。
「あれ、なかなかいいわね。私の結婚式もあれにしようかしら」
まだまだ先だろうけど、こんな結婚式に憧れる。
披露宴会場は、隣りの会場で行う様で、そちらに移動する。
「シンシアさん、すごく綺麗だったね。王都ではあんなドレスを着るんだね」
まあ、ユイトが住んでいる村とは違うでしょうね。
「拙者もこのような結婚式を見るのは初めだ。やはり国によって全然違うものなのだな」
「セイラン。鬼人族の結婚式ってどうなの?」
「そうだな、社の前で執り行ってもっと厳粛な感じだな。だが、花嫁が白い衣装を身に纏うのは同じだ」
「ねえ、ねえ。それよりこの料理、すごく美味しいですよ。盛り付けも綺麗です。こんな手の込んだ料理初めて見ました」
「そりゃ、元とはいえ、お貴族様の披露宴ですもの。これが貴族料理という物じゃないかしら」
おしゃべりしていると、シンシアとグランが私達のテーブルにやって来た。
「今日は私達の結婚式に来てくれてありがとう」
「シンシア。ウエディングドレスすごく綺麗だったわ」
今は薄いピンクのドレスに着替えていて、これも素敵だわ。
「グラン殿。凛々しく、あっぱれな立ち振る舞い。拙者も見習わねばな」
「いやあ、緊張したよ。父上と母上の前で失敗はできないからね」
「あのう、グランさん、この料理を作ったお店はどこか知っていますか」
「ああ、屋敷の料理長が来て作ってくれたんだよ。ミルチナ、後で料理長を紹介しよう。レシピを教えてくれるかもしれないよ」
「えぇ~、ほんとですか。是非お願いします」
「ねえ、ねえ、シンシア。グランの家ってどんな家柄なの」
「あのね、ハルミトス家っていう伯爵家の方々なの。一度挨拶に行ったんだけど、グランの実家、すごく大きなお屋敷で驚いたわ」
伯爵家なの! 伯爵って言ったら国の運営にかかわる要職についている貴族じゃない。グランはそれの跡取り息子だったの。そんな貴族をあっさりと辞るなんて、ますますグランの考えていることが分からないわね。
「それにしてはグランの親族の人達、それほど豪華な衣装じゃないわね」
「こっちに合わせて、質素な服装で来てくれるようにグランが頼んでくれたの。最初、式場もここじゃなくて貴族街でしようって言っていたのよ」
色々と大変だったみたいね。まあ、この後は新婚旅行だしゆっくりできるわね。
それにしてもシンシア達、幸せそうでほんと良かったわ。これからもお幸せにね。
「なんだかすごく忙しくて、落ち着かないわ」
結婚式の衣装合わせや親戚の人への連絡など、なにかと大変みたいね。シンシアは式の2日前から休み、その後の旅行で2週間休む。
「今日中に、打ち合わせしておきましょうか」
今後の依頼の予定日や、他の業者への支払いの確認をしておく。この辺りの仕事はシンシアに任せていて、結婚後もお店に残ると言ってくれて本当に助かるわ。
「ところで新婚旅行はどこまで行くの?」
「グランが外国に行ってみたいって言ってるから、レグルス国まで行くのよ。帰りにはダークエルフの里にも寄っていくの」
ここからレグルス国までは定期便の船が出ていて、陸路も合わせて5日程で国境まで行けるそうだ。
「船の旅か~。なんだかロマンチックよね。でも高かったんじゃないの」
「でも馬車で2週間近くも旅するよりはましよ。それよりも予約を取るのが大変だったわ」
人を乗せる定期便は数が少なく、人気でなかなか予約できないそうだ。船は一旦港を出ると海洋族の国を通る事になる。外国だから入国や出国審査が必要でお金や手間がかかる。昔は海洋族が人の往来を禁止してたそうだけど、今は定期便に限り出入国を認めている。
「社長たちは、ユイト君の村に行くんですってね」
「ええ、そうなの。村の隣が有名な観光地なんですって。ユイトも1年近く帰ってないっていうから、里帰りも兼ねて行ってくるわ」
ユイトが村に帰ると連絡したら、村の方で飛行機を用意してくれると返事があった。キイエ様と一緒に飛んで行ける事になったけど、観光地だからって空港もあるなんてびっくりだわ。
「シンシア。これで業務連絡は終わりね。少し早いけど今日はもう帰ってもいいわよ。新しい家の片付けがあるんでしょう」
「ありがとう。じゃあ、お先に失礼するわね」
グランは貴族の屋敷から、既に平民街へと引っ越ししてきている。シンシアの実家近くに土地を買って新築の家を建てたそうだ。流石、元お貴族様よね。あのグランが貴族だったとは驚きだけど、シンシアの事も考えて貴族辞めちゃうなんてお熱い事だわ。
2日後。今日はシンシアの結婚式だ。中央公園付近にある教会に、親戚の人達に混ざって私達4人も出席する。
グランの親族の貴族達もいて、立派な服を着てるわね。そういえば貴族ってだけでどの爵位なのか聞いてなかったわね。
「ではこれより、グラテウス様とシンシア様の結婚式を執り行います。新郎新婦の入場です」
後ろの扉が開いて、グランとシンシアが白の正装で入ってきた。シンシアのウエディングドレスがすごく綺麗だ。その後ろには新郎新婦の両親も一緒に入って来る。
「シンシア、すごく綺麗よ」
バージンロードを歩くシンシアが顔を赤らめながら、会釈してくれた。
両親が一番前の席に着席して、新郎新婦が壇上に立つ。
「グラテウス。汝は、シンシア殿を妻とし、生涯に渡り愛し、敬い、守り抜くことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「シンシア。あなたは、グラテウス殿を夫とし、生涯に渡り愛し、敬い、共に助け合うことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「では、誓いの口づけを」
グランがシンシアのベールを恭しく上げて、見つめ合い、愛の口づけを交わした。
その後は互いにプレゼント交換をする。結婚を機に相手にブレスレットだったり、指輪やネックレスなどの装飾品を送り合うのが習わしだ。
シンシア達はイヤリングを送り合うみたい。グランはベールを上げたシンシアの長く少し前に垂れているウサギ耳に、宝石のついたイヤリングをつけてあげる。
そして、グランは片膝を突き、右手を胸に騎士がお姫様に忠誠を誓うかのようなポーズで頭を下げる。シンシアは凛々しくピンと立った耳にイヤリングをつけた。グランは元軍人だけあって動作が板について恰好いいわ。
「あれ、なかなかいいわね。私の結婚式もあれにしようかしら」
まだまだ先だろうけど、こんな結婚式に憧れる。
披露宴会場は、隣りの会場で行う様で、そちらに移動する。
「シンシアさん、すごく綺麗だったね。王都ではあんなドレスを着るんだね」
まあ、ユイトが住んでいる村とは違うでしょうね。
「拙者もこのような結婚式を見るのは初めだ。やはり国によって全然違うものなのだな」
「セイラン。鬼人族の結婚式ってどうなの?」
「そうだな、社の前で執り行ってもっと厳粛な感じだな。だが、花嫁が白い衣装を身に纏うのは同じだ」
「ねえ、ねえ。それよりこの料理、すごく美味しいですよ。盛り付けも綺麗です。こんな手の込んだ料理初めて見ました」
「そりゃ、元とはいえ、お貴族様の披露宴ですもの。これが貴族料理という物じゃないかしら」
おしゃべりしていると、シンシアとグランが私達のテーブルにやって来た。
「今日は私達の結婚式に来てくれてありがとう」
「シンシア。ウエディングドレスすごく綺麗だったわ」
今は薄いピンクのドレスに着替えていて、これも素敵だわ。
「グラン殿。凛々しく、あっぱれな立ち振る舞い。拙者も見習わねばな」
「いやあ、緊張したよ。父上と母上の前で失敗はできないからね」
「あのう、グランさん、この料理を作ったお店はどこか知っていますか」
「ああ、屋敷の料理長が来て作ってくれたんだよ。ミルチナ、後で料理長を紹介しよう。レシピを教えてくれるかもしれないよ」
「えぇ~、ほんとですか。是非お願いします」
「ねえ、ねえ、シンシア。グランの家ってどんな家柄なの」
「あのね、ハルミトス家っていう伯爵家の方々なの。一度挨拶に行ったんだけど、グランの実家、すごく大きなお屋敷で驚いたわ」
伯爵家なの! 伯爵って言ったら国の運営にかかわる要職についている貴族じゃない。グランはそれの跡取り息子だったの。そんな貴族をあっさりと辞るなんて、ますますグランの考えていることが分からないわね。
「それにしてはグランの親族の人達、それほど豪華な衣装じゃないわね」
「こっちに合わせて、質素な服装で来てくれるようにグランが頼んでくれたの。最初、式場もここじゃなくて貴族街でしようって言っていたのよ」
色々と大変だったみたいね。まあ、この後は新婚旅行だしゆっくりできるわね。
それにしてもシンシア達、幸せそうでほんと良かったわ。これからもお幸せにね。
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