53 / 122
亡国王子、港町デートを堪能する 2
しおりを挟む港にある市場は昼下がりだということもあり、人もまばらでだらりと弛緩した雰囲気だった。そして何より臭い。お魚が腐った臭いだ。うむむ…くさい。だがこれはお魚の臭い。って言うかトロ箱の臭い。我慢我慢。実家のアールツナイの部屋より数倍マシ……あっ、マシだね、うん。
「……うむ、少々臭うな。大丈夫か、アールツナイ?」
「はい、もんだいないです」
「うむ。…まあ戦場の臭いよりマシ…か?」
それと比べちゃうのぉ!?
フィアツェンさんに抱っこされたまま市場を見て回る。……といっても大体のお店は閉まっちゃってるし、露天も終わってる。おこぼれを狙う猫とかストリートキッズとか浮浪者っぽいおじさんたちはちらほら見える。
うーん、ここで物語の主人公とかだったら炊き出しとかしちゃうんだろうけど、俺はあんまりそういうのは好きじゃない。だって何回かご飯をあげて、それからどうするの?連れて帰る?いやいやいや。無理。俺だって嫁という名の扶養の身だしね?
「お待たせ致しました領主様!!いえ、陛下とお呼びした方が?」
「やめろ。いつも通りでいい」
「ぶひひっ、畏まりましたフィアツェン様」
汗をかきかき走ってきたのはまんまるいおじさん。真っ赤なジャケットに青いズボン。あと蝶ネクタイ。あれだ。ハンプティダンプティ落っこちた、とかいう…。見た目ハンプティなおじさんはブヒブヒ言いながら笑う。うん、玉子なのか豚さんなのか、どっちなの!?
「奥方様、私はヒエロニムス。ヒエロニムス・アダルベルトと申します。この港町ゼーシェンのしがない魚商人でございます」
わあ。すっごいお名前きたぁ…。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
779
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる