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第三章⑧

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 ここまで、一息に話したわたしは旦那様の様子を窺う様にずっと下に向けていた視線を上げたの。
 視線の先の旦那様は……。
 顔色が真っ青になっていたわ……。
 そうよね。こんな話、驚くわよね。
 それに……。五歳年上だと思っていた妻が、本当は自分の母親と同年代だと知れば……。
 旦那様がどんな判断を下してもわたしはそれに従うと、覚悟を決めたつもりだったけど……。
 もし、蔑むような目で見られたら……。
 わたしは耐えられないかもしれない……。
 
「……。すまない……」

 旦那様が擦れた声で、そう言ったわ。
 そして、真っ青になった顔で、少し視線を逸らしながら言ったのよ。
 
「すまない……。すこし、考えさせてくれ……」

「は……い」

 旦那様のその言葉を聞いた瞬間、喉の奥が苦しくなって、声が震えていた。
 そうよね……。歳だって、すごく離れているし……。
 女性としての魅力も低くて……。
 それに……。
 やっぱり、こんなわたしなんて旦那様の隣に立つ資格なんてないのよ。
 それにまだ、肝心のあの事を言えていない。
 あの事を話したらきっと、旦那様はわたしのことを心の底から憎んで恨むはずよ……。
 目の前から消え去ってほしいと、そう思われても仕方ないことをわたしはしてしまったのよ。
 だって、わたしの所為で……。
 旦那様の不幸の元凶は……わたしなのだから……。
 
 ここまで話したのだから、全てを話して……。
 いっその事、旦那様の手で終わらせてもらうのもいいかもしれないわね……。
 大切なアルトラーディの手で……。
 いいえ、そんなこと駄目よ。だって、わたしになんて旦那様の手を汚させるほどの価値なんてないわ。
 
 だけど、これだけは絶対に旦那様に言わなければいけないわ。
 そのうえで、旦那様に死ねと言われれば、わたしは喜んで死を選ぶわきっと。
 
「旦那様……。ごめんなさい。わたし……」

「すまないが……、考える時間が欲しい……。頼む……。じゃないと俺は……。ああ、どうしたらいいんだ……」

 そう言った旦那様は頭を抱え込んでしまったの。
 
「いえ、わたしこそ申し訳ございません……」

「違う!! そうじゃないんだ!!」

「えっ?」

「ギネヴィアは何も悪くない!! でも……。でも!! 時間が……、俺に冷静に考えるだけの時間をくれ! 頼む! じゃないと俺は……、俺は!!」

 旦那様は頭を抱えたままそう言って肩を震わせたの。
 そして…………。

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