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第五章①
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旦那様の包み隠そうとしない思いを聞いたわたしは、もう我慢することなんてできなかった。
ずっと心の中にしまい込んでいた想いが勝手に零れてしまったいた。
それでもわたしは自分を許せそうになかった。
偽善から始まった幼い旦那様との時間。
それを終わらせて、勝手に迎えに来ると一方的に約束した。
でも、目覚めたわたしを待っていてくれた弟の存在を見捨てることが出来なかった。
何年も死んでいるか生きているんかもわからないわたしを庇って、弟はわたしを廃棄しようとする両親を必死に止めてくれていたのだ。
そんな両親が詐欺にあい、領地を返上しなければならなくなった時、弟は伯爵位を継いで、必死に家と領民を守ろうとしていたわ。
それでも、借金は減らず、領地の隅でひっそりと暮らしていたはずの両親は、勝手に新しい借金を作るという、不毛なことが繰り返されていた時、わたしが目覚めたのだ。
弟は、わたしが目覚めたことを何よりも喜んでくれたわ。
そして、わたしにこれまでの伯爵家の現状を知らせ、これ以上領民を苦しませないためには爵位と領地を返上し、家財も何もかも売り、それでも足りない分は運営していた商団を手放すことで賄おうと言ったの。
記憶の中の幼かった弟は立派な大人に成長し、そしてとても疲れた顔をしていたわ。
だから、そんな弟を何とか助けてあげたかった。
弟には妻も娘もいたわ。
だから、王子殿下に一年後には必ず迎えに行くと心の中で誓いを立てて家の立て直しをすること決めたわたしは、数か月で立て直しを終えていた。
弟には、わたしの存在を庶子のこと周囲に言ってもらうことをお願いしたわ。
伯爵夫人は、わたしのことを心配してくれたけど、それでよかった。
だって、伯爵家の問題が片付いたら、王子殿下を王宮から攫って、どこか遠くに旅立つ予定だったから、わたしの存在は秘匿したかったのだ。
そうじゃないと、伯爵家の迷惑になると分かり切っていたから。
存在しない庶子の子であれば、どうにかして誤魔化せるだろうと。
そんな単純な思い付きでもあった。
そして、王子殿下を攫う準備を進めている時に、結婚話が持ち上がったのだ。
遅かったと……。そう思った。
北部行が決まる前に攫ってしまいたかったのに……。
けれど、宰相の話を聞いて自ら名乗り出ていた。
今更王子殿下に合わせる顔なんてなかった。
それでも、王子殿下の境遇を少しでもいいものに変え、北部も立て直す。
それが出来た後は、王子殿下の邪魔にならないように離婚すればいいと思ったわ。
そして再会した王子殿下……。
王子殿下は、わたしのことを忘れてしまっていた。当然のことだったと思うわ。
数か月も経っていたし、わたしの髪も瞳の色も変わってしまっていた。
気が付くはずがないと、そう思っても少し寂しかった。
それでも、わたしは旦那様のためになればと持っているすべてで、支えたわ。
北部も安定し、余裕も生まれて、わたしは考えたわ。
旦那様の本当のお嫁さんになる令嬢を探そうと。
だから、十七になった旦那様に理由を付けて王都での社交の場に顔を出すことを提案したのよ。
だけど……。
ずっと心の中にしまい込んでいた想いが勝手に零れてしまったいた。
それでもわたしは自分を許せそうになかった。
偽善から始まった幼い旦那様との時間。
それを終わらせて、勝手に迎えに来ると一方的に約束した。
でも、目覚めたわたしを待っていてくれた弟の存在を見捨てることが出来なかった。
何年も死んでいるか生きているんかもわからないわたしを庇って、弟はわたしを廃棄しようとする両親を必死に止めてくれていたのだ。
そんな両親が詐欺にあい、領地を返上しなければならなくなった時、弟は伯爵位を継いで、必死に家と領民を守ろうとしていたわ。
それでも、借金は減らず、領地の隅でひっそりと暮らしていたはずの両親は、勝手に新しい借金を作るという、不毛なことが繰り返されていた時、わたしが目覚めたのだ。
弟は、わたしが目覚めたことを何よりも喜んでくれたわ。
そして、わたしにこれまでの伯爵家の現状を知らせ、これ以上領民を苦しませないためには爵位と領地を返上し、家財も何もかも売り、それでも足りない分は運営していた商団を手放すことで賄おうと言ったの。
記憶の中の幼かった弟は立派な大人に成長し、そしてとても疲れた顔をしていたわ。
だから、そんな弟を何とか助けてあげたかった。
弟には妻も娘もいたわ。
だから、王子殿下に一年後には必ず迎えに行くと心の中で誓いを立てて家の立て直しをすること決めたわたしは、数か月で立て直しを終えていた。
弟には、わたしの存在を庶子のこと周囲に言ってもらうことをお願いしたわ。
伯爵夫人は、わたしのことを心配してくれたけど、それでよかった。
だって、伯爵家の問題が片付いたら、王子殿下を王宮から攫って、どこか遠くに旅立つ予定だったから、わたしの存在は秘匿したかったのだ。
そうじゃないと、伯爵家の迷惑になると分かり切っていたから。
存在しない庶子の子であれば、どうにかして誤魔化せるだろうと。
そんな単純な思い付きでもあった。
そして、王子殿下を攫う準備を進めている時に、結婚話が持ち上がったのだ。
遅かったと……。そう思った。
北部行が決まる前に攫ってしまいたかったのに……。
けれど、宰相の話を聞いて自ら名乗り出ていた。
今更王子殿下に合わせる顔なんてなかった。
それでも、王子殿下の境遇を少しでもいいものに変え、北部も立て直す。
それが出来た後は、王子殿下の邪魔にならないように離婚すればいいと思ったわ。
そして再会した王子殿下……。
王子殿下は、わたしのことを忘れてしまっていた。当然のことだったと思うわ。
数か月も経っていたし、わたしの髪も瞳の色も変わってしまっていた。
気が付くはずがないと、そう思っても少し寂しかった。
それでも、わたしは旦那様のためになればと持っているすべてで、支えたわ。
北部も安定し、余裕も生まれて、わたしは考えたわ。
旦那様の本当のお嫁さんになる令嬢を探そうと。
だから、十七になった旦那様に理由を付けて王都での社交の場に顔を出すことを提案したのよ。
だけど……。
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