(完結)王太子妃の苦悩ーーなぜ私は王太子が嫌いになれないのでしょう?

青空一夏

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8 クララ視点

(クララ視点)

 あたしはクララ。ピンクの髪と大きな空色の瞳を持つ可憐な乙女よ。胸とお尻が大きくてあどけない顔は自分でもかなり気に入っている。年頃になると、この容姿が男にとても好かれることがわかり『この世の春』を味わえている。

 だって大抵の男はあたしが微笑めば頬を染めるのよ? ふふん、チョロいものね。身分に関係なく、可愛いあたしは男にちやほやされて最高の人生が歩めるはず。
 だからあたしは自分が捕まえることができる最高の権力者を狙った。それがクラーク王太子だ。

 彼は簡単にあたしを好きになってくれた。なんと、自分の婚約者のリオナ・ダックワース公爵令嬢よりも綺麗で可愛いって、言ってくれたの。
 まぁ、そんなの当然だわよね。だって、あの人はいつも疲れた顔で表情も暗いわ。髪や肌のお手入れだって怠けているとしか思えないもの。

 だからあたしは「クラーク王太子の側にいて慰めてあげる」と申し出たわ。だって、あんなに冴えない女が王太子妃になるんじゃぁ、この国はきっと諸外国からバカにされるもん。

「あぁ、クララは将来俺の側妃にしてやろう。一生、贅沢させてやるから安心しろ。クララが産む子が未来の王になるのだ」
 
(なんて夢みたいなの! このあたしが王の母になるなんて!)

 あたしは貴族だけれど末端男爵の娘で家は決して裕福ではないし、屋敷は狭くてかなり経年劣化が激しいボロ屋敷だった。だからいつも莫大な資産のある高位貴族の令嬢達が羨ましかった。
 あの子達は海が見下ろせるお城を別荘に持ち、王都のタウンハウスは規格外の広さで権勢を誇る。領地内には大きなマナーハウス(本邸)を構え、たくさんの使用人にかしづかれていた。大貴族の令嬢はあたしの憧れであり、妬みの対象だったのよ。

 産まれた家が違うだけで、これだけの開きが生まれるのは不公平すぎない? 神様はちっとも優しくないし、えこひいきばかりする嫌な奴よ。

(高位貴族の子達なんていなくなれば良い! めちゃくちゃにしてやりたい! いつも威張っていてすごく鼻にかけていて大嫌いよ!)

 あたしはずっとそう思ってきた。だってあの子達は手の届かない存在だけれど、同じ貴族だからその姿はいつだって目に触れる。羨ましさと劣等感で自分の気持ちが淀んでいくのよ。

 でもね、ちょうど良いサンドバッグにリオナ様がなってくれたの。だから今はとても嬉しい気持ちでいっぱいよ。リオナ様は筆頭公爵家で由緒ある家柄の令嬢なのに、婚約者のクラーク王太子が酷い扱いをするから皆にバカにされていた。リオナ様は最高の家柄の雲の上の存在なのに貶めても誰も怒らない。

(ふふっ。面白い!)

 あたしは虐められてもいないのにリオナ様に虐められた、と嘘を吐きクラーク王太子を惑わした。クラーク王太子は真偽の確認もせずに鵜呑みにしてくれるところが大好きよ。

 それに彼の瞳を見ていると夢心地になるから不思議。あたしはお腹に子供も宿り、人生で最高に幸せな絶頂期を迎えていた。









 ところが、クラーク王太子がバカなことをした為、あたしもあっという間に転落してしまう。女性ばかりの国に追放を言い渡されたクラーク王太子のとばっちりは、あたしにも迫ってきていた。

(あのいやらしい眼鏡をかけるなんて、なんてアホなクラーク王太子なの! あり得ないくらい最低よ)

 今までは好ましい感情しかなかったクラーク様に対して、一気に不満が噴き出した。だいたい、顔もそれほど良くはないし頭だって平均以下だ。話しは自慢ばかりだし横柄さが鼻につく。

(あれ? なんで今まで素敵だと思っていたのかな?)

 アルフォンス様によれば、クラーク王太子は怪しげな魔法を使っていたと言う。そのお蔭でなにをしても好感度しかあがらなかったというわけだ。

(騙されたわ・・・・・・どうしよう? あたしのお腹にはアホの子がいるんだけどぉおおお!)







「さて、クラーク兄上の子供を身籠もったクララ嬢だけれど、どんな罰にしようかな? リオナ様に無実の罪をだいぶ着せていたようだね? 公爵令嬢を男爵令嬢が貶める、こんなことがまかり通ったらこの貴族社会は崩壊してしまうよ? そうだろう?」

 ぞっとするほど冷たい視線がアルフォンス様から発せられた。

「リオナ様に精神的苦痛をもたらした慰謝料を払ってもらおうか? この国には愛妾の制度なんて元々ないんだ。クラーク兄上に言い寄って国を破滅に導こうとした毒婦! お前の罰は・・・・・・」

 断罪し出すアルフォンス様の言葉に被せてあたしは声を張り上げる。

「あたしは妊婦よ。だから無罪だわ! だって王太子の子供を身籠もったあたしは未来の国母なんでしょう?」

 大きな目をできるだけ潤ませて涙のひとつも流せばたいした罪にはならないはず。だって、あたしは悪いことなんかしてないもん!
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