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本編
Ⅳ
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長期休み後半に、ギルフォードに1日開けてほしいと頼んだ。
宣言通りにギルフォードから色々アピールされた。
2人で出掛けた時は、さり気なくエスコートをしてくれるし、表情が普段より甘い。
好きというオーラが溢れ出していて、反対に慣れていない僕は戸惑うほどであった。
だから、真剣に考えて、返事をしたい。
ギルフォードが家に来たら、そのまま魔の森の家に飛んだ。
「卒業したら、ここを拠点にして、あちこちに旅をしようと思っているんだ。」
将来のこと、過去のこと、僕の気持ちを話した。前世の話はしなかった。
ギルフォードは口を挟まず、聞いてくれた。
「ギルフォードと同じ気持ちを持つことは難しい。それに自分で言うのなんだけど、かなり面倒くさい性格をしていると思う。そんな僕でもいいの?」
「アルサスだからいいんだよ。少しずつお互いのことを知っていこう。」
「うん。ありがとう。これからよろしくお願いします。」
「こちらこそありがとう。大切にします。」
ギルフォードは、僕の手を取り、手の甲にキスをした。
僕は顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。
そのあとは2人で野菜を収穫したり、昼食を作って食べながら、今後の話をした。
「私の両親にアルサスを紹介したいんだが、アルサスは大丈夫か?」
「大丈夫だと、思う。ご両親はどんな感じの人達なの?」
「2人とも普段は穏和だけど、厳しいところもある。領民思いで、愛情深い。私は尊敬できる親だと思うよ。」
「反対とかはされない?」
「それはない。結婚前提で付き合いたい人がいると伝えてあるし、今は返事待ちのことも話したが、『良い方向に行くといいね』と言ってくれた。」
「あ、あと、お会いする時にメガネを外して、髪を上げていた方がいい?」
「できたら、アルサスの素顔も性格も知ってもらいたい。その前に私に素顔を見せて欲しいな。」
「うん。」
メガネを外し、前髪を耳にかける。
「どう?母様に似ているとは思うけど、母様ほど美人でないと思うし、髪や目の色はどちらにも似ていないから。昔は、父様にも母様にも似ていないから、養子じゃないかって言われていて。」
「……。」
「ギルフォード?」
「あっ、いや。んっ。造形は夫人に似ているけど、目元は公爵に似ている。目の色は、夜空の色だね。深い青色で、神秘的に見えるよ。」
「ほ、褒めすぎだよ。」
「養子なんて言った人は、見る目がないね。こんなにお二人に似ているのに。本当にアルサスの目は吸い込まれそうだ。」
ギルフォードは僕の顔を両手で挟み、じっと目を見る。顔を動かせないから、僕もギルフォードの目を見る。
「ギルフォードは、中心が黄色で外側に向かって赤くなっている。朝焼けの空の色だ。とても綺麗だ。」
人の瞳なんてマジマジと見たことはなかった。
こんなにも綺麗なものだと知らなかった。
段々と瞳が近づく。軽く唇が重なった。
「えっ。」
「アルサスが綺麗って言うから、嬉しくて。」
と、嬉しそうに言うギルフォード。
「ま、まだ早いでしょ!付き合い始めたばっかだよ。まだ心の準備もしていないのに!」
顔を真っ赤にして文句を言うが、嬉しそうに文句を聞いているギルフォードには、響いていないと思った。
それから家に戻り、両親に報告した。母様は喜んでくれたが、父様は何だか寂しそうにしていた。
これが娘を持った男親なのかと思ったら、ちょっとだけ笑えた。
でも、2人はギルフォードを迎え入れてくれた。
ギルフォードのご両親とは、その3日後にお会いした。きちんと正装をして行った。
出迎えてくれたギルフォードが、正装姿の僕を見て、『綺麗だ。』『誰にも見せたくない。』なんて言い出して、少し驚いた。
誰にも公平で誠実なのに、僕に独占欲を見せるとは思わなくて、少しだけ嬉しかった。
ご両親ともに歓迎をしてくれた。
手土産に渡したチーズケーキとクッキーは喜んでくれた。
何故かギルフォードが僕の料理は美味いとご両親に自慢していたけど。
応接室に通され、色々な話をした。
婚約式と結婚式の話にもなった。
僕の希望は、卒業後に婚約式、2、3年後に結婚式をしたいと伝えた。
ギルフォードが騎士として一人前になってから、結婚をしたい、と。
「結婚までの間はアルサスちゃんはどうするの?」
「卒業したら、旅に出ようと思っていたんですが、事情が変わって、城の農産科に勤めることになりました。仕事内容が国中を回って有用な植物を探すことになりまして。」
「砂糖のせい?」
「陛下のせいでしょ。」
と、砂糖の経緯から説明した。父様に頑張ってもらった結果、折衷案として、国中を旅しながら、新種や稀少なもの、薬にできそうなものを探したり、保全したりすることになった。
「でも、見ただけではわからないよね?」
「そこは、鑑定魔法で。採取しても、収納魔法があるし。魔法師になるよりは僕向きだから、陛下に頑張って交渉してくれた父様には、感謝しているよ。」
「魔法師も国には大事なお仕事よ?」
「知っています。でも、幼い頃から世界中を見て歩きたい夢があったから、その為に勉強して、魔法を磨いた。だからこそ誰にも邪魔されたくないんです。これが僕なんです。それでお二人がギルフォードに相応しくないと判断されるのなら、僕はそれを受け入れます。」
「父上、母上。アルサスは信念を貫きます。私の見つけた人は素敵でしょう?」
「ちょっ、ギルフォード!」
「確かに。夢を叶える為に努力をする姿勢は素晴らしい。」
「反対にギルには勿体無いくらいだわ。アルサスちゃん、ギルの思いを受け入れてくれてありがとう。2人の結婚が待ち遠しいわ。」
「婚約は卒業後でなくても、もう秋にはしたらどうかな?」
「それがいいわ!あなた、マグドレン殿に手紙を書きましょう!」
「そうだな。早速書くか!」
と、2人は部屋から出て行った。
「これは、認めてくれたのかな?」
「寧ろ、ノリノリだな。」
「なら、良かった。…のかな?」
「両親にアルサスを取られそうな勢いだけど。」
「しかし、緊張した。」
「お疲れ様でした。でも、城勤めになるなんて聞いていないよ。」
「昨日決まったから、今日伝えようと思って。」
「時間が合えば、一緒に帰りたいし、休みの日は、どこか出掛けないな。」
「そうだね。卒業したら、みんなには会う機会が無くなると思っていたから、嬉しいんだ。」
「色々急に決めてしまったけど、アルサスの歩調に合わせて関係を確かなものにしたい。ゆっくりでもいい。私達の絆をしっかり結ぼう。」
「ギルフォード、ありがとう。」
長期休みも終わり、秋晴れの日に僕とギルフォードは婚約した。みんな祝ってくれた。
それから、騎士と文官試験があり、ギルフォードとダミアンは無事に合格を果たし、卒業後は城勤めが決まった。
僕が農産科の仕事することに決まった話をしたら、みんなはびっくりしていた。ダミアンは、文官試験を受けずに決まったことには、羨ましがった。
ジークに1学年下の婚約者ができた。
みんなに紹介してくれて、時々グループのお茶会に参加してくれた。
アランは、卒業後直ぐに結婚式を挙げる。
ローランドは、卒業してからの秋に結婚式をする予定。
みんな卒業後の進路が着々と決まっていった。
あと卒業まで1ヶ月をきった頃から、ピンクの子がギルフォードにやたら接触をしてくるようになった。
もちろん、ギルフォードは相手にしない。
ギルフォードと僕の婚約は公表はしたが、マグドレン公爵次男=僕という図式は浸透しない。
そのせいか、僕の容姿を見て、ギルフォードから奪えると思う輩は少なくなかった。
そして、更に強引にでも割り込もうとするのがピンクの子だった。
そんな昼休み。今日はアランとローランドで食堂で昼食をいただいていた。残り3人は後から合流予定だ。
「ギルフォードも大変だよな。」
と、ローランドが言う。
「なんで?」
「ギルフォードは公爵家だけど、三男だったから、見向きもされていなかったけど、城勤め、しかも騎士になることが決まったら、急に扱いが変わるんだよ。いい迷惑じゃないか。」
「ダミアンもそうだよね?」
「ダミアンは家柄的に代々城勤めだから、そんなでもないよ。騎士の方が文官より人気があるんだ。新採の発表が出てから、婚約者のいない人なんて申し込みが殺到しているはずだよ。」
「ふーん、そうなんだ。僕は世間的にはどうみられているの?」
「アルサスは、深窓の令息。箱入り令息。そして、誰も素顔を知らない、釣り書きは全て断られるってところ。ちなみに学園では、見た目で田舎の下級貴族に見られている。」
「世間は見た目だけみているからね。でも、アルサスは所作もお手本になるくらい綺麗だし、顔立ちは夫人に似ていると思うから、多分美人だ。」
「僕もそれは思っていた。一度だけでいいから、きちんと顔を見たい。」
「うぅ、あまり期待しないで。この格好に慣れたから、今更気恥ずかしくて。」
「ギルフォードは見たことはあるよね。」
「あるよ。でも、ギルフォードは人前では顔を出さないでって言っていた。」
「なんか惚気がきた。」
「アルサスが惚気た。」
「えっ、どこが惚気なの?」
「なんか天然でお母さんは心配だよ。」
「お兄ちゃんも心配だよ。」
「アランのお母さんはわかるけど、ローランドは弟の方がしっくりくるよ。」
「アルサスは末っ子だから、自動的にお兄ちゃんなんですぅ。」
「なにそれ。」
バシャッ。
他愛もない会話をしながら食事をしていると、後ろから頭に水を掛けられた。
「ごめんなさぁい。」
「アルサス、大丈夫?!」
いきなりのことで頭が追いつかない。
「人にぶつかって、トレイから水がこぼれちゃいました。」
振り向くとピンクの子と取り巻き達だった。
アランがハンカチで拭こうとしてくれた。
「上級生に対してそんな謝り方で許されると思っているのか!」
ローランドが怒ってくれている。
周りは何事かと野次馬が多いが、ニヤニヤして成り行きを見ているものもいる。
「ユーリが謝っているんだから、許してやれよ。」
「たかが、下級貴族の癖に。」
取り巻き達は文句を言い出す。
とても謝っている態度に見えないが。
ピンクの子はニヤニヤしているし。
「何かあったのか?」
と、ギルフォード達が来た。
「あれ、アルサス濡れているじゃん!」
ダミアンの声にギルフォードが僕に駆け寄って、ハンカチを取り出して、アランと拭いてくれた。
「アルサス、拭きづらいから、メガネ外すよ。」
と、メガネを外され、丁寧に拭いてくれる。
ギルフォードは拭きながら、ローランドの説明を聞いていた。
拭き終わって、ピンクの子たちを見て、
「とても謝罪する態度ではないね。家から抗議をさせてもらうよ。」
「私も大事な婚約者にこのような事をされたんだ。私の方からも抗議させてもらう。」
「そ、そんな。」
「公爵家から抗議されたら、父に何言われるかわからないよ。」
「僕はきちんと謝りましたよ!許してくれない心の狭いこの人には、ギルフォード様なんて勿体無いよ!」
「そうですよ!ギルフォード様の公爵家の威光を傘に被って、抗議だなんて!」
「何を言っているの?アルサスは公爵子息だよ。さっきも下級貴族って言っていたけど、何か勘違いしていない?」
「「「はぁ?」」」
僕は悪い笑顔をしながら、
「マグドレン公爵家の次男アルサスです。上級貴族として君達の振る舞いに対して、是非とも各家に伝えさせていただきます。みんな、空気悪いから、違う場所で食事しよう。」
と、6人は食堂を出て、談話室に行った。
談話室には何もないから、収納魔法から作り溜めていたご飯を出して、みんなに振る舞った。
「このパン、フワフワで甘い。」
「このハンバーグ?ってもの、柔らかくて、肉汁がたっぷりだ。」
「エビって初めて食べたけど、プリプリしていて美味しい。」
「アルサスの養子になりたい!」
「ギルフォードはいつもこんな美味しいもの食べているの?」
「もちろん、いつも美味しくいただいている。しかし、アルサスの素顔がバレてしまった。午後から、煩くなるな。」
「アルサス、めちゃくちゃ綺麗で私もびっくりした。」
「僕って、綺麗なの?」
「何言ってんだ?アルサスはそこら辺の美人より格段にレベルが違うよ?」
「僕、顔の美醜がよくわからない。」
「僕は、どんな風に見える?」
「ローランドは、目がクリクリしていて、人懐っこそう。」
「私は?」
「アランは、目鼻口のバランスがよく、整っている。でも、優しそう。」
「俺は?」
「ダミアンは、意志の強そうな目をしていて、それでいて、誠実そう。」
「私は?」
「ジークは、威厳があって、でも優しい目をしているから、誰からも頼られそう。」
「私は?」
「ギルフォードは、朝焼けの瞳が綺麗。顔は整っている。」
「ギルフォードだけ、綺麗って言った。」
「無自覚での発言。」
「惚気か?」
「惚気だね。」
「無自覚過ぎて心配が絶えない。」
「「「「ギルフォード頑張れ!」」」」
「ダミアンはいつも養子入りを希望するけど、なんで?」
「子供になれば、無条件で美味しいもの食べれるから。それにアルサスは尊敬しているけど、恋愛感情ないし。」
「なるほど?」
宣言通りにギルフォードから色々アピールされた。
2人で出掛けた時は、さり気なくエスコートをしてくれるし、表情が普段より甘い。
好きというオーラが溢れ出していて、反対に慣れていない僕は戸惑うほどであった。
だから、真剣に考えて、返事をしたい。
ギルフォードが家に来たら、そのまま魔の森の家に飛んだ。
「卒業したら、ここを拠点にして、あちこちに旅をしようと思っているんだ。」
将来のこと、過去のこと、僕の気持ちを話した。前世の話はしなかった。
ギルフォードは口を挟まず、聞いてくれた。
「ギルフォードと同じ気持ちを持つことは難しい。それに自分で言うのなんだけど、かなり面倒くさい性格をしていると思う。そんな僕でもいいの?」
「アルサスだからいいんだよ。少しずつお互いのことを知っていこう。」
「うん。ありがとう。これからよろしくお願いします。」
「こちらこそありがとう。大切にします。」
ギルフォードは、僕の手を取り、手の甲にキスをした。
僕は顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。
そのあとは2人で野菜を収穫したり、昼食を作って食べながら、今後の話をした。
「私の両親にアルサスを紹介したいんだが、アルサスは大丈夫か?」
「大丈夫だと、思う。ご両親はどんな感じの人達なの?」
「2人とも普段は穏和だけど、厳しいところもある。領民思いで、愛情深い。私は尊敬できる親だと思うよ。」
「反対とかはされない?」
「それはない。結婚前提で付き合いたい人がいると伝えてあるし、今は返事待ちのことも話したが、『良い方向に行くといいね』と言ってくれた。」
「あ、あと、お会いする時にメガネを外して、髪を上げていた方がいい?」
「できたら、アルサスの素顔も性格も知ってもらいたい。その前に私に素顔を見せて欲しいな。」
「うん。」
メガネを外し、前髪を耳にかける。
「どう?母様に似ているとは思うけど、母様ほど美人でないと思うし、髪や目の色はどちらにも似ていないから。昔は、父様にも母様にも似ていないから、養子じゃないかって言われていて。」
「……。」
「ギルフォード?」
「あっ、いや。んっ。造形は夫人に似ているけど、目元は公爵に似ている。目の色は、夜空の色だね。深い青色で、神秘的に見えるよ。」
「ほ、褒めすぎだよ。」
「養子なんて言った人は、見る目がないね。こんなにお二人に似ているのに。本当にアルサスの目は吸い込まれそうだ。」
ギルフォードは僕の顔を両手で挟み、じっと目を見る。顔を動かせないから、僕もギルフォードの目を見る。
「ギルフォードは、中心が黄色で外側に向かって赤くなっている。朝焼けの空の色だ。とても綺麗だ。」
人の瞳なんてマジマジと見たことはなかった。
こんなにも綺麗なものだと知らなかった。
段々と瞳が近づく。軽く唇が重なった。
「えっ。」
「アルサスが綺麗って言うから、嬉しくて。」
と、嬉しそうに言うギルフォード。
「ま、まだ早いでしょ!付き合い始めたばっかだよ。まだ心の準備もしていないのに!」
顔を真っ赤にして文句を言うが、嬉しそうに文句を聞いているギルフォードには、響いていないと思った。
それから家に戻り、両親に報告した。母様は喜んでくれたが、父様は何だか寂しそうにしていた。
これが娘を持った男親なのかと思ったら、ちょっとだけ笑えた。
でも、2人はギルフォードを迎え入れてくれた。
ギルフォードのご両親とは、その3日後にお会いした。きちんと正装をして行った。
出迎えてくれたギルフォードが、正装姿の僕を見て、『綺麗だ。』『誰にも見せたくない。』なんて言い出して、少し驚いた。
誰にも公平で誠実なのに、僕に独占欲を見せるとは思わなくて、少しだけ嬉しかった。
ご両親ともに歓迎をしてくれた。
手土産に渡したチーズケーキとクッキーは喜んでくれた。
何故かギルフォードが僕の料理は美味いとご両親に自慢していたけど。
応接室に通され、色々な話をした。
婚約式と結婚式の話にもなった。
僕の希望は、卒業後に婚約式、2、3年後に結婚式をしたいと伝えた。
ギルフォードが騎士として一人前になってから、結婚をしたい、と。
「結婚までの間はアルサスちゃんはどうするの?」
「卒業したら、旅に出ようと思っていたんですが、事情が変わって、城の農産科に勤めることになりました。仕事内容が国中を回って有用な植物を探すことになりまして。」
「砂糖のせい?」
「陛下のせいでしょ。」
と、砂糖の経緯から説明した。父様に頑張ってもらった結果、折衷案として、国中を旅しながら、新種や稀少なもの、薬にできそうなものを探したり、保全したりすることになった。
「でも、見ただけではわからないよね?」
「そこは、鑑定魔法で。採取しても、収納魔法があるし。魔法師になるよりは僕向きだから、陛下に頑張って交渉してくれた父様には、感謝しているよ。」
「魔法師も国には大事なお仕事よ?」
「知っています。でも、幼い頃から世界中を見て歩きたい夢があったから、その為に勉強して、魔法を磨いた。だからこそ誰にも邪魔されたくないんです。これが僕なんです。それでお二人がギルフォードに相応しくないと判断されるのなら、僕はそれを受け入れます。」
「父上、母上。アルサスは信念を貫きます。私の見つけた人は素敵でしょう?」
「ちょっ、ギルフォード!」
「確かに。夢を叶える為に努力をする姿勢は素晴らしい。」
「反対にギルには勿体無いくらいだわ。アルサスちゃん、ギルの思いを受け入れてくれてありがとう。2人の結婚が待ち遠しいわ。」
「婚約は卒業後でなくても、もう秋にはしたらどうかな?」
「それがいいわ!あなた、マグドレン殿に手紙を書きましょう!」
「そうだな。早速書くか!」
と、2人は部屋から出て行った。
「これは、認めてくれたのかな?」
「寧ろ、ノリノリだな。」
「なら、良かった。…のかな?」
「両親にアルサスを取られそうな勢いだけど。」
「しかし、緊張した。」
「お疲れ様でした。でも、城勤めになるなんて聞いていないよ。」
「昨日決まったから、今日伝えようと思って。」
「時間が合えば、一緒に帰りたいし、休みの日は、どこか出掛けないな。」
「そうだね。卒業したら、みんなには会う機会が無くなると思っていたから、嬉しいんだ。」
「色々急に決めてしまったけど、アルサスの歩調に合わせて関係を確かなものにしたい。ゆっくりでもいい。私達の絆をしっかり結ぼう。」
「ギルフォード、ありがとう。」
長期休みも終わり、秋晴れの日に僕とギルフォードは婚約した。みんな祝ってくれた。
それから、騎士と文官試験があり、ギルフォードとダミアンは無事に合格を果たし、卒業後は城勤めが決まった。
僕が農産科の仕事することに決まった話をしたら、みんなはびっくりしていた。ダミアンは、文官試験を受けずに決まったことには、羨ましがった。
ジークに1学年下の婚約者ができた。
みんなに紹介してくれて、時々グループのお茶会に参加してくれた。
アランは、卒業後直ぐに結婚式を挙げる。
ローランドは、卒業してからの秋に結婚式をする予定。
みんな卒業後の進路が着々と決まっていった。
あと卒業まで1ヶ月をきった頃から、ピンクの子がギルフォードにやたら接触をしてくるようになった。
もちろん、ギルフォードは相手にしない。
ギルフォードと僕の婚約は公表はしたが、マグドレン公爵次男=僕という図式は浸透しない。
そのせいか、僕の容姿を見て、ギルフォードから奪えると思う輩は少なくなかった。
そして、更に強引にでも割り込もうとするのがピンクの子だった。
そんな昼休み。今日はアランとローランドで食堂で昼食をいただいていた。残り3人は後から合流予定だ。
「ギルフォードも大変だよな。」
と、ローランドが言う。
「なんで?」
「ギルフォードは公爵家だけど、三男だったから、見向きもされていなかったけど、城勤め、しかも騎士になることが決まったら、急に扱いが変わるんだよ。いい迷惑じゃないか。」
「ダミアンもそうだよね?」
「ダミアンは家柄的に代々城勤めだから、そんなでもないよ。騎士の方が文官より人気があるんだ。新採の発表が出てから、婚約者のいない人なんて申し込みが殺到しているはずだよ。」
「ふーん、そうなんだ。僕は世間的にはどうみられているの?」
「アルサスは、深窓の令息。箱入り令息。そして、誰も素顔を知らない、釣り書きは全て断られるってところ。ちなみに学園では、見た目で田舎の下級貴族に見られている。」
「世間は見た目だけみているからね。でも、アルサスは所作もお手本になるくらい綺麗だし、顔立ちは夫人に似ていると思うから、多分美人だ。」
「僕もそれは思っていた。一度だけでいいから、きちんと顔を見たい。」
「うぅ、あまり期待しないで。この格好に慣れたから、今更気恥ずかしくて。」
「ギルフォードは見たことはあるよね。」
「あるよ。でも、ギルフォードは人前では顔を出さないでって言っていた。」
「なんか惚気がきた。」
「アルサスが惚気た。」
「えっ、どこが惚気なの?」
「なんか天然でお母さんは心配だよ。」
「お兄ちゃんも心配だよ。」
「アランのお母さんはわかるけど、ローランドは弟の方がしっくりくるよ。」
「アルサスは末っ子だから、自動的にお兄ちゃんなんですぅ。」
「なにそれ。」
バシャッ。
他愛もない会話をしながら食事をしていると、後ろから頭に水を掛けられた。
「ごめんなさぁい。」
「アルサス、大丈夫?!」
いきなりのことで頭が追いつかない。
「人にぶつかって、トレイから水がこぼれちゃいました。」
振り向くとピンクの子と取り巻き達だった。
アランがハンカチで拭こうとしてくれた。
「上級生に対してそんな謝り方で許されると思っているのか!」
ローランドが怒ってくれている。
周りは何事かと野次馬が多いが、ニヤニヤして成り行きを見ているものもいる。
「ユーリが謝っているんだから、許してやれよ。」
「たかが、下級貴族の癖に。」
取り巻き達は文句を言い出す。
とても謝っている態度に見えないが。
ピンクの子はニヤニヤしているし。
「何かあったのか?」
と、ギルフォード達が来た。
「あれ、アルサス濡れているじゃん!」
ダミアンの声にギルフォードが僕に駆け寄って、ハンカチを取り出して、アランと拭いてくれた。
「アルサス、拭きづらいから、メガネ外すよ。」
と、メガネを外され、丁寧に拭いてくれる。
ギルフォードは拭きながら、ローランドの説明を聞いていた。
拭き終わって、ピンクの子たちを見て、
「とても謝罪する態度ではないね。家から抗議をさせてもらうよ。」
「私も大事な婚約者にこのような事をされたんだ。私の方からも抗議させてもらう。」
「そ、そんな。」
「公爵家から抗議されたら、父に何言われるかわからないよ。」
「僕はきちんと謝りましたよ!許してくれない心の狭いこの人には、ギルフォード様なんて勿体無いよ!」
「そうですよ!ギルフォード様の公爵家の威光を傘に被って、抗議だなんて!」
「何を言っているの?アルサスは公爵子息だよ。さっきも下級貴族って言っていたけど、何か勘違いしていない?」
「「「はぁ?」」」
僕は悪い笑顔をしながら、
「マグドレン公爵家の次男アルサスです。上級貴族として君達の振る舞いに対して、是非とも各家に伝えさせていただきます。みんな、空気悪いから、違う場所で食事しよう。」
と、6人は食堂を出て、談話室に行った。
談話室には何もないから、収納魔法から作り溜めていたご飯を出して、みんなに振る舞った。
「このパン、フワフワで甘い。」
「このハンバーグ?ってもの、柔らかくて、肉汁がたっぷりだ。」
「エビって初めて食べたけど、プリプリしていて美味しい。」
「アルサスの養子になりたい!」
「ギルフォードはいつもこんな美味しいもの食べているの?」
「もちろん、いつも美味しくいただいている。しかし、アルサスの素顔がバレてしまった。午後から、煩くなるな。」
「アルサス、めちゃくちゃ綺麗で私もびっくりした。」
「僕って、綺麗なの?」
「何言ってんだ?アルサスはそこら辺の美人より格段にレベルが違うよ?」
「僕、顔の美醜がよくわからない。」
「僕は、どんな風に見える?」
「ローランドは、目がクリクリしていて、人懐っこそう。」
「私は?」
「アランは、目鼻口のバランスがよく、整っている。でも、優しそう。」
「俺は?」
「ダミアンは、意志の強そうな目をしていて、それでいて、誠実そう。」
「私は?」
「ジークは、威厳があって、でも優しい目をしているから、誰からも頼られそう。」
「私は?」
「ギルフォードは、朝焼けの瞳が綺麗。顔は整っている。」
「ギルフォードだけ、綺麗って言った。」
「無自覚での発言。」
「惚気か?」
「惚気だね。」
「無自覚過ぎて心配が絶えない。」
「「「「ギルフォード頑張れ!」」」」
「ダミアンはいつも養子入りを希望するけど、なんで?」
「子供になれば、無条件で美味しいもの食べれるから。それにアルサスは尊敬しているけど、恋愛感情ないし。」
「なるほど?」
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「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
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