おやばと
【忘れ去られた〝平成〟の村。謎の感染症におかされた青年は、刃を背負った少女に拾われる】
〝おやどり〟がいなければ、まともに歩くことすらままならない。それが、俺の身を蝕んだ奇病の症状だった。
見知らぬ場所、見知らぬ人たち。目覚めた俺は、自分が誰なのかすらわからない。
パニックに陥る俺を助けてくれたのは、ひとりの女の子――はとちゃん。
日本のどこかにある山奥の秘境、蛍灯村(けいとうむら)で、かつて流行したという〝ひなどり症候群〟に、どういうわけか感染してしまった。
そんなどこの誰とも知れない俺の手を、はとちゃんは引いてくれた。
戸惑いながら、あたたかく迎えてくれた村のみんなとも打ち解けてきた頃。
〝iONウイルス研究所〟の所長を名乗る空閑清華(くがさやか)という女性が、俺たちを訪ねてくる。
〝ひなどり症候群〟の治療法研究に力を貸してほしいという彼女らに対して、村のみんなは、なぜか否定的だった。
その確執を前にして、俺はやっと知るんだ。
ここ蛍灯村が、〝ひなどり症候群〟の流行によって日本という国から隔絶され、いまだ〝平成〟の時代が続いている、忘れ去られた村であったことを。
※この物語はフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。
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