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第134話

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【アサヒ視点】

 僕はさわやかな気分で朝を迎えた。
 今日は学園のランキング発表日だ。

 まず勉強は問題無い。 
 読み書きは最初から出来るし、数学も中学校に通っていれば簡単に解ける問題ばかりだ、いや、小学校でもそこそこの得点を取れるだろう。
 歴史は勉強する必要があったけど、僕ならすぐに覚えられる。
 恐らくランキング上位はほぼ転生者組が埋める事になる。

 問題は納品貢献度ランキングだ。
 今圧倒的なのはカムイパーティー、そして、ファルナ、エリス、シルビアも厄介だ。
 でも、その次は僕だろう。

 つまり7位だ。
 ランキングはトップ8まで表示されるが、ランキングに入ることが重要だ。
 当然僕ならのし上がって1位になる事が出来る。

 今回はその一歩となる。

 試験の成績、そして納品貢献度、このダブルトップを華麗に決める!

 僕は学園に登校し、ランキングを見た。

 筆記試験ランキング

 1位 アサヒ
 2位 ファルナ
 3位 ユウコ
 4位 アキナ
 5位 リコ
 6位 ユキナ
 7位 ユイ
 8位 ユズキ

 ふ、思った通り僕が1位で、残りは転生者の文官組がほとんどだ。
 僕は夜遅くまで試験勉強をして、毎日努力し続けた。

 当然の結果だね。
 厄介だと思っていたアオイは試験を受けなかったか。
 さて、次は納品貢献度ランキングだ。


 納品貢献度ランキング

 1位 カムイ
 2位 シノン
 3位 アリス
 4位 エリス
 5位 シルビア
 6位 ファルナ
 7位 ドリル
 8位 アサヒ


 ……おかしい。
 僕は7位のはずだった!
 1位から3位のカムイパーティーは分かる。
 そして4位から6位のファルナとよく組んでいる3人も分かる。

 でも、7位のドリルはおかしい!
 転生前の資金を生かしていち早く装備を整えた!
 そして、血のにじむような努力を重ねて多くのドロップ品を納品し続けた。

 勉強とダンジョンを高度に時間管理し、しかも天才である僕が努力までしたんだ!
 おかしいおかしいおかしい!

 僕の計画では今回は7位、次は大量のポーションを納品するエリスを押さえて3位に食い込む。
 その次はカムイを超えて1位になるはずだった!

 ドリル!
 僕の計画を邪魔した!

 ドリルは何度も停学になっている。
 悪い事をして貢献度を釣り上げたに違いないんだ!

 僕は講義室に座り、入り口をじっと眺めてドリルを待った。
 入り口に入って来る女達は僕から目を逸らし、隠れるように席に着く。
 
 ふ、僕の魅力が凄すぎて恥ずかしがっているようだ。
 後で抱いてあげよう。

 しばらく入り口を見つめるとドリルが入って来る。
 だるそうに歩き、周りにいる女が距離を取っていく。
 嫌われ者だね。
 重力に逆らうように髪の毛が逆立ち、目つきが悪い。
 まるで昔のヤンキーのように見える。

 僕はドリルの前に歩く。

「ああ!なんだてめー?」
「君は納品貢献度ランキングでズルをしているね?」

「はあ?何を言ってやがる?」
「君は勉強が出来ない。君のようなバカが普通に魔物を狩って高成績を出せるわけがないんだ」

「てめえ、喧嘩売ってんのか!!……ああ、そうか、ランキングで俺に負けたからなあ。認められないんだろ?俺より無能だってなあ!ぎゃはははははははは!間抜けが何を言うかと思えば、おいおい、現実を見ろよ。てめーは俺に負けてるんだよ!しかも俺は俺のペースでのんびり動いてお前を超えている。もっと伸びしろはあるんだよ!ま、間抜けのアサヒにはそんな事も分からねーか」

「そうじゃない、君はズルをしているんだ!君のような育ちが悪くて頭の悪いクズがランキングに入れるわけがないんだ」
「はあ?バカはてめえだろうが」

「僕は筆記試験1位だ」
「そうじゃねえよ。勉強の事じゃねえ。お前は物を見る目がねえだろうか!」

「ふ、嫉妬かい?頭の悪いド・リ・ル・君」
「馬鹿にしてんじゃねえぞ!」
「馬鹿じゃないか!」
「そりゃてめえだよ!」

 ドリルは槍を出現させた。

「ふ、ここは勉学にいそしむ場所だよ。武器をしまうんだ。それは君が非を認めると取っていいかい?君はズルをしてランキングに食い込んだんだ。ああ、そうか。僕より弱い君は武器を手にしないと怖くて僕の前にいられないんだね。無能な君の気持ちを察する事が出来なかったよ」

「表に出やがれ!拳だけで十分だ!力の差を思い知らせてやるよ」
「ふ、槍を持ったまま言うのかい?これだから育ちの悪いクズは」

 ドリルは槍を消して拳で僕を殴った。

「ぐぼおおおおお!」

 僕は地面に転がる。
 手を出したね。
 これでドリルは停学を3回食らう事になるよ。
 つまり退学だ。

 ドリルが僕にまたがって両手で殴る。
 僕は腕をクロスさせて防ぐ。

 まずい!防ぎ、切れない。

「やめ、やめ、ぐお!」
「殺すぞこらああああああ!!!!」

「やめ、ぐぶ、やめ、ごぼお!」

 まずい!殺される!

 そこにカムイが入って来てドリルを止める。
 後ろから羽交い絞めにされたドリルはそれでも僕を殴ろうとして叫ぶ。

「はあなせえ!離せよごらあ!じゃまだあああ!」
「少し、落ち着け」

「うるせえ!離せえ!」
「落ち着け」

「君はもう退学だよ。やはり脅してドロップアイテムを奪う事でランキングを引き上げていたんだね」
「アサヒい!ワザとやりやがったな!」

「アサヒ!ドリル!落ち着け!」
「カムイいいい!邪魔するんじゃねええ!!アサヒいい!決闘だ!決闘しろおお!殺してやるよおお!」

 あ、危なかった、いや、計算通りだ。

「暴力はやめるんだ!君の育ちが知れるよ!」
「殺すううう!!アサヒいい!!」

 カムイは素早く窓に飛び込んでドリルを投げ飛ばして気絶させた。
 カムイの動きが見えなかった。
 ただ、ドリルを投げ飛ばした後の姿を見て、そこで投げ飛ばしたことが分かった。
 
 ドリルは終わった。
 次はカムイだ。



 その後僕はファルナに呼び出された。

「アサヒ、停学ですわ」
「おかしい!おかしいおかしい!僕は手を出していない!罰せられるのはドリルだ!」

「ドリルは退学になりましたわ。それとは別に、ドリルに喧嘩を売ったアサヒの行動も聞いていますのよ」
「僕はただ注意しただけだ」

「相手を貶めるような発言は駄目ですわ」
「ドリルが手を出して来たんだ!ドリルの性格に問題があるんだよ!ドリルの育ちが悪すぎるんだ」

「それですわ。『育ちが悪い』と、そのようなことを言ってはいけませんわ。最初に礼儀の講義を何度も行っていますわ。筆記の試験では礼儀を理解していながら相手を貶めるその行為は悪質ですわね」

 なんでだ!
 僕まで停学?
 おかしすぎる!




 アサヒは勉強が出来る。
 だが、道徳と現状把握力は欠落していた。

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