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第147話

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【王国歴1000年春の月72日】 

 俺とアオイは昨日の夜も一緒に寝た。
 早めに起きて人のまばらな食堂でアオイと一緒に朝食を食べる。

「ふふふ、いい時間だわ……ハヤト、下に隠れなさい!」

 俺は瞬時に隠れた、だがアオイは隠れない。
 ああ、ヒメが来たからか。

「ヒメ、おはよう。たまには一緒に食事でもどうかしら?」
「そう、ね」

 ヒメが座るまで隠れていたが、アオイの合図で姿を現す。

「よ!ヒメ、たまには話をしようか。ほら、きゅうもいるぞ~!」
「……ハヤト君」
「どうした?」

「私を小動物みたいに思っているよね?」

 その瞬間にアオイが笑い出した。

「ヒメは小動物を超える可愛さだぞ」
「ふ、ふふふふ。ヒメ、ハヤトはね。好きな子をからかいたい小学生と一緒よ」
「す、好き!」

「ヒメ、きゅうだぞ。最近抱いてないだろ?」

 ヒメは無言できゅうを受け取った。

「ヒメ、アドバイスをしておくわ」

 アオイが急にヒメに向き合った。

「な、何?」
「いつまでも恥ずかしがっていると、ハヤトのSな部分を刺激してしまうわ。そうね。例えば、ヒメを恥ずかしがらせる為にお姫様抱っこをしたり」

「それ!やられたよ!」
「あれ?二人は前から仲が良かったか?」
「ハヤト、私が変わったのだから、ヒメの態度が軟化しただけよ」
「今日は久しぶりにたくさん人と話した気がする」

 アオイが俺の頭を撫でる。

「そうね。私がたくさん話をしてあげるわ。それと、レベルを100に上げましょう」
「急にどうした?」
「トレイン娘は、ハヤトのレベルが100になれば目覚めると思うわ。確実ではないのだけれど、私の目にはそう見えるのよ」

「分かった。と、その前に、カムイ、ファルナ。用があるんだろ?カムイとファルナがいる時は大体悪い事があったか軍を動かす時だからな」

 カムイとファルナはプライベートでは話をそこまでしない。
 仲が悪いわけではないけど、カムイがファルナに遠慮しているように見える。

「楽しそうだったので見ていたのですわ。ですが、場所を移動して話をしますわよ」

 やばい案件確定か?


 会議室に5人で座り、話を聞くが、ヒメはピリピリした雰囲気に飲まれてきゅうをしきりに撫でて落ち着こうとしている。

「結論から言いますわね。3人でダンジョンに籠って欲しいのですわ」
「ヒメを逃がしたファングから守るためよね?」

「そうですわね。今犯罪者は疲弊していますわ。今このタイミングで一気に叩きたいのですわ」
「ヒメを護衛する必要が無いように隠れてダンジョンに向かえばいいのか」
「その通りですわ」

「何日したら戻ればいい?って言うのも、その気になれば俺は30日以上ダンジョンで暮らせる。今はセーフゾーンがあるんだ」
「春の月、75日、それまでは、攻め続ける」
「すみませんわ。犯罪者の出方次第ですわね」

 犯罪者がどう動くか、どこまで鎮圧できるかはやってみなければ分からない。
 対人は特にどう動くか予想しにくいか。

「じゃあ、76日の朝に、何事も無ければ戻って来る。これでどうだ?その時にまた話し合いをする」
「そう、ですわね。そう、しますわ。一応兵をダンジョン前に付けますわね」
「すぐ出発する」

 俺達はすぐにダンジョンに向かった。



【ダンジョン3階】

「おお!ダンジョン3階か」
「一応言っておくわ。ガードスライム・ガードオーク・アサシンゴブリンがいるわね」
「全部魔導士潰しじゃないか」

 しぶといガード系の魔物は魔導士のMPが切れるまで耐えてその後反撃する。
 アサシンは素早く魔法攻撃を避けて急接近してから魔導士に攻撃を仕掛けたり、奇襲を仕掛ける事で優位に戦いを進める。

「そうね、ヒメが魔導士で私は槍使いの戦士。ハヤトがハイブリットなのだから、問題無いわね。ただ、出来れば4人パーティーの方が安定するのだけど」
「そこでトレイン娘の復活か」
「ハヤト、トレイン娘と私、それにヒメを抱きましょう」

「わ、わた、私!」

 俺とアオイは焦るヒメの頭を撫でた。

「ヒメは可愛いわね」
「ヒメ、可愛いぞ」

 ヒメが真っ赤になる。

「そう言うの、やめて欲しいなぁ」

 消え入りそうな声でヒメが言った。

「ごめんなさい。さあ、3階は苦戦する事が無いのだから、先に進みましょう」

 ガードスライムが3体か。

「ライト!」

 ヒメが光の球体を作りだしてガードスライムにヒットさせた。
 だがまだ倒れない。

「ライト!」

 2発のライトでガードスライムを倒した。

 俺とアオイは一瞬で1体ずつ倒していく。

「敵が弱すぎるわね」
「先に進むか」
「ええ!私は2回当てないと倒せないよ!」

「いや、悪くないぞ。こいつら魔導士潰しだしな。倒しにくいようになってるんだ」
「ヒメはしっかり2発命中させているわね。プレイヤースキルは悪くないと思うわ。4階に行きましょう。4階の魔物も3階と同じ種類が出てくるわ」

 俺達は目につく敵だけ倒して4階に進んだ。



【ダンジョン4階】

「ここも問題無さそうね」

 アオイがアサシンゴブリン4体を突き倒した。

「セーフゾーンを見に行かないか?人が多そうなら、5階に行くことも考えたいんだ」
「そうね、行ってみましょう」
「2人とも気が合うよね」

「あら、ヒメはハヤトと逆の性格なのだから補い合う事で相性はいいと思うわ」
「そ、そんな話じゃなかったよ」
「ふふふ、そうね」



 俺達はキャンプにたどり着く。

「誰もいない。丁度いい」
「キャンプを張るわ」

 アオイは素早くキャンプを設営した。
 早い!
 
「さあ、ヒメ、少し中で休みましょう。少し横になった方がいいわ」
「ありがとう」

 ヒメは横になった。

「ハヤトも少し休みましょう」

 アオイがにやにやしている。
 でも、乗っかってやるか。
 俺はヒメの隣に横になった。

「え!え!」
「ヒメ、休息は大事だ。休む時には休む!これは鉄則だ!目を閉じて、体を休めよう。明日に響くぞ」

 ヒメはむくっと起き上がり、火を起こすアオイの元に向かった。
 やっぱり、逃げられるよな。
 分かってた。
 思えば温泉の時から逃げられっぱなしだった。

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