155 / 179
第155話
しおりを挟む
俺達が学園に帰ると、セイコウコウボウが出てくる。
「どうなったの?」
まだ不機嫌ではあるが、エクスファック戦が気になるらしい。
ファルナ・アオイ・カムイ・俺、そしてセイコウコウボウが部屋に集まって話をする。
「そうか、ハゲインは良いとして、セイコウコウケンまで殺されたのかー」
「そうですわね。わたくしの力不足でしたわ」
「いや?あの状況では防壁の内側に退避するのが正解だったぞ。それにデーブはハゲインとセイコウコウケンを殺したんだ。退避しなければ、殺されていたのは俺達だったかもしれない」
「話すのは、これからの、事にしよう」
「そうだな、デーブが教会ギルド長になるって事でいいんだよな?」
「ええ、もうデーブしか候補者が居ませんわ。そうなるでしょう」
悪い事をした奴が上に行くって、納得できないな。
だが、受け入れるしかないか。
次の対策を考える必要がある。
「デーブの教会騎士団は強い。今は手が出せないか」
今教会騎士団と敵対して勝負に挑んでもこちらが致命的な被害を受けるだろう。
デーブを倒せたとしてもこちらは多くの兵を失い魔物狩りが詰む。
さっきまではセイコウコウボウがいれば何とかなるかとも思っていたが、セイコウコウケンが殺された。
俺より強いエースでもカースウォー&攻撃魔法であっけなく死んだんだ。
それに、エクスファック改の優先目標1位が教会騎士団だ。
あの優先目標は強い順と言っていいだろう。
教会騎士団の集団はエクスファック改から見ても脅威なのだ。
デーブは国の平和より自分の体制維持を最優先するだろう。
どんなに周りが死んでもいい、それよりも教会ギルド長の地位や権力が欲しいのだ。
それに奴はためらいなく人を駒のように攻撃してくる。
敵対すればこちらに何をしてきてもおかしくない。
「提案があるのだけれど、今の内に犯罪者の取り締まりをしましょう」
「それしか、ありませんわね」
「そうだったな、デーブは犯罪者ともつながりがある。今やれる事をやるならそうなるか」
「犯罪者は片っ端から攻撃しますわ。ただ、攻撃する事で犯罪者の数は減っても、結束される可能性がありますわね」
「何をするにしてもデメリットは出るだろ?犯罪者になる人間の数は決まっているんだ。少しでも潰す方がいいだろ。それに、犯罪者に時間を与えても強い集団が弱い集団を飲み込む。今動いた方がまだましだ」
話し合いはすぐに終わり、俺達は犯罪者を襲撃する毎日を送った。
バキャアアア!
俺は扉を蹴り壊してアオイと共に建物の中に入る。
中にいたガラの悪そうな男女が俺を睨んだ。
「皆犯罪者ね、攻撃して大丈夫よ」
「はあ!喧嘩売ってんのかよ!」
全員が武器を構えて襲い掛かって来る。
俺とアオイは素早く外に出て叫んだ。
「犯罪者で間違いない!攻撃開始だ!」
俺が犯罪者を斬り殺していくと、犯罪者は仲間を犠牲にして逃げ出す。
逃走経路にはセイコウコウボウがいた。
「何人逃げられるかな?僕は出来るだけ殺すけど、悪運が強くないとここで死ぬよ」
「せ、セイコウコウボウだ!逆から逃げろ!」
「どけよ!邪魔だ!」
仲間を押しのけるように逃げようとするが、セイコウコウボウがこん棒を振ると、1撃で4人が殺される。
「う、うああああああ!」
「ひ、こ、殺されるうううぅ!」
逆方向に逃げようとすると、今度はカムイのパーティーがいた。
「アリス、やってくれ」
「ふふふふ、サンダーショック!」
カムイパーティーのゲームヒロインが雷の魔法を発生させる。
「「ぎゃああああああああああ!」」
その瞬間に後ろから兵士が飛び出して攻撃を開始する。
無理に生け捕りにはしない。
無理に生け捕りにしようとすれば殺される可能性があるのだ。
皆の襲撃に慣れていき、逃がす犯罪者が少なくなっていった。
攻撃パターンも確立されていった。
①俺とアオイが前に出てアオイが犯罪者か判別してから攻撃開始。
②逃走経路にはセイコウコウボウやカムイなどが待ち伏せして攻撃。
襲撃が終わるとセイコウコウボウがすっきりした顔をしている。
セイコウコウボウも犯罪者は好きじゃないらしい。
ためらわず殺すような怖さはあるけど、ゲームの時よりはまだ話しやすい印象を持ち始めていた。
「セイコウコウボウ、教会を辞めてから変わったか?機嫌がいいと言うか、人が変わったように見える」
「教会は、上がクズ揃いだからね。イライラしない方がおかしいよ。セイコウコウケンだっていつも眉間にしわが寄っていただろ?」
そうか、セイコウコウケンは子供っぽい所があるけど、そんな奴が中間管理職のような事をやっていたんだ。
日本と違い、簡単に辞めて移動する事が出来ない教会でだ。
ジョブによって職業の自由が制限されていて、苦しいのに抜け出せないのは地獄、か。
「戦士になって、光魔法を覚えなかったおかげで、教会を抜けられたよ。僕にとってはいいタイミングだったね」
教会にいる者は今まで聖魔導士のスキルを持っていた。
でも、ステータスの法則が変わる事で、セイコウコウボウは聖職者の資格を失い、それを理由にうまく辞められたか。
俺は、ゲームの時は浅くしか物事を見ていなかった。
セイコウコウボウだけじゃない。
襲撃をする根回しだけで見てもファルナは苦労しているようだった。
この世界はゲームのようにシンプルではない。
デーブの息がかかった者が襲撃の妨害をしたり、反対派を煽ったりして、表面上は敵対していなくてもデーブとファルナは水面下でやり合っていた。
更に、『何もしない愚か者』が襲撃に反対してくる。
『襲撃が起きると民に被害が出る!』
『建物が破壊された』
とその時だけの損得で騒ぐのだ。
俺とアオイの説得で、『何もしない愚か者』の住む地域は無視して犯罪者の襲撃を続けた。
すると、『何もしない愚か者』の近くに犯罪者集団が拠点を移してきた。
『何もしない愚か者』の住む地域で治安が悪化すると、今度は手のひら返しをしたように『何で取り締まりをしないんだ!』と騒ぐ。
日本と同じで自分で何もせず、動かないものほど声だけは大きい。
口だけの者を対応するファルナを見ていて少しやる気が下がった。
日本と同じでここは複雑で、目先の利益だけで物事を見る愚か者が多い。
口だけは出すがそれ以外は何もせず陰に隠れてファルナの足を引っ張る。
そういう者に限ってファルナのように皆を救うためにより先の未来を見据えて行動する者を叩き、悪であるデーブには何も言わない。
だが、『何もしない愚か者』が手のひら返しをし始めた事で、デーブと犯罪者の全容があぶり出されていった。
俺は少しだけ、『何もしない愚か者』がもっと追い詰められていいと思ってしまった。
あとがき
カクヨムでは先行して投稿しており、完結まで執筆済みです。
よろしければカクヨムの方ものぞいていただけると嬉しいです。
「どうなったの?」
まだ不機嫌ではあるが、エクスファック戦が気になるらしい。
ファルナ・アオイ・カムイ・俺、そしてセイコウコウボウが部屋に集まって話をする。
「そうか、ハゲインは良いとして、セイコウコウケンまで殺されたのかー」
「そうですわね。わたくしの力不足でしたわ」
「いや?あの状況では防壁の内側に退避するのが正解だったぞ。それにデーブはハゲインとセイコウコウケンを殺したんだ。退避しなければ、殺されていたのは俺達だったかもしれない」
「話すのは、これからの、事にしよう」
「そうだな、デーブが教会ギルド長になるって事でいいんだよな?」
「ええ、もうデーブしか候補者が居ませんわ。そうなるでしょう」
悪い事をした奴が上に行くって、納得できないな。
だが、受け入れるしかないか。
次の対策を考える必要がある。
「デーブの教会騎士団は強い。今は手が出せないか」
今教会騎士団と敵対して勝負に挑んでもこちらが致命的な被害を受けるだろう。
デーブを倒せたとしてもこちらは多くの兵を失い魔物狩りが詰む。
さっきまではセイコウコウボウがいれば何とかなるかとも思っていたが、セイコウコウケンが殺された。
俺より強いエースでもカースウォー&攻撃魔法であっけなく死んだんだ。
それに、エクスファック改の優先目標1位が教会騎士団だ。
あの優先目標は強い順と言っていいだろう。
教会騎士団の集団はエクスファック改から見ても脅威なのだ。
デーブは国の平和より自分の体制維持を最優先するだろう。
どんなに周りが死んでもいい、それよりも教会ギルド長の地位や権力が欲しいのだ。
それに奴はためらいなく人を駒のように攻撃してくる。
敵対すればこちらに何をしてきてもおかしくない。
「提案があるのだけれど、今の内に犯罪者の取り締まりをしましょう」
「それしか、ありませんわね」
「そうだったな、デーブは犯罪者ともつながりがある。今やれる事をやるならそうなるか」
「犯罪者は片っ端から攻撃しますわ。ただ、攻撃する事で犯罪者の数は減っても、結束される可能性がありますわね」
「何をするにしてもデメリットは出るだろ?犯罪者になる人間の数は決まっているんだ。少しでも潰す方がいいだろ。それに、犯罪者に時間を与えても強い集団が弱い集団を飲み込む。今動いた方がまだましだ」
話し合いはすぐに終わり、俺達は犯罪者を襲撃する毎日を送った。
バキャアアア!
俺は扉を蹴り壊してアオイと共に建物の中に入る。
中にいたガラの悪そうな男女が俺を睨んだ。
「皆犯罪者ね、攻撃して大丈夫よ」
「はあ!喧嘩売ってんのかよ!」
全員が武器を構えて襲い掛かって来る。
俺とアオイは素早く外に出て叫んだ。
「犯罪者で間違いない!攻撃開始だ!」
俺が犯罪者を斬り殺していくと、犯罪者は仲間を犠牲にして逃げ出す。
逃走経路にはセイコウコウボウがいた。
「何人逃げられるかな?僕は出来るだけ殺すけど、悪運が強くないとここで死ぬよ」
「せ、セイコウコウボウだ!逆から逃げろ!」
「どけよ!邪魔だ!」
仲間を押しのけるように逃げようとするが、セイコウコウボウがこん棒を振ると、1撃で4人が殺される。
「う、うああああああ!」
「ひ、こ、殺されるうううぅ!」
逆方向に逃げようとすると、今度はカムイのパーティーがいた。
「アリス、やってくれ」
「ふふふふ、サンダーショック!」
カムイパーティーのゲームヒロインが雷の魔法を発生させる。
「「ぎゃああああああああああ!」」
その瞬間に後ろから兵士が飛び出して攻撃を開始する。
無理に生け捕りにはしない。
無理に生け捕りにしようとすれば殺される可能性があるのだ。
皆の襲撃に慣れていき、逃がす犯罪者が少なくなっていった。
攻撃パターンも確立されていった。
①俺とアオイが前に出てアオイが犯罪者か判別してから攻撃開始。
②逃走経路にはセイコウコウボウやカムイなどが待ち伏せして攻撃。
襲撃が終わるとセイコウコウボウがすっきりした顔をしている。
セイコウコウボウも犯罪者は好きじゃないらしい。
ためらわず殺すような怖さはあるけど、ゲームの時よりはまだ話しやすい印象を持ち始めていた。
「セイコウコウボウ、教会を辞めてから変わったか?機嫌がいいと言うか、人が変わったように見える」
「教会は、上がクズ揃いだからね。イライラしない方がおかしいよ。セイコウコウケンだっていつも眉間にしわが寄っていただろ?」
そうか、セイコウコウケンは子供っぽい所があるけど、そんな奴が中間管理職のような事をやっていたんだ。
日本と違い、簡単に辞めて移動する事が出来ない教会でだ。
ジョブによって職業の自由が制限されていて、苦しいのに抜け出せないのは地獄、か。
「戦士になって、光魔法を覚えなかったおかげで、教会を抜けられたよ。僕にとってはいいタイミングだったね」
教会にいる者は今まで聖魔導士のスキルを持っていた。
でも、ステータスの法則が変わる事で、セイコウコウボウは聖職者の資格を失い、それを理由にうまく辞められたか。
俺は、ゲームの時は浅くしか物事を見ていなかった。
セイコウコウボウだけじゃない。
襲撃をする根回しだけで見てもファルナは苦労しているようだった。
この世界はゲームのようにシンプルではない。
デーブの息がかかった者が襲撃の妨害をしたり、反対派を煽ったりして、表面上は敵対していなくてもデーブとファルナは水面下でやり合っていた。
更に、『何もしない愚か者』が襲撃に反対してくる。
『襲撃が起きると民に被害が出る!』
『建物が破壊された』
とその時だけの損得で騒ぐのだ。
俺とアオイの説得で、『何もしない愚か者』の住む地域は無視して犯罪者の襲撃を続けた。
すると、『何もしない愚か者』の近くに犯罪者集団が拠点を移してきた。
『何もしない愚か者』の住む地域で治安が悪化すると、今度は手のひら返しをしたように『何で取り締まりをしないんだ!』と騒ぐ。
日本と同じで自分で何もせず、動かないものほど声だけは大きい。
口だけの者を対応するファルナを見ていて少しやる気が下がった。
日本と同じでここは複雑で、目先の利益だけで物事を見る愚か者が多い。
口だけは出すがそれ以外は何もせず陰に隠れてファルナの足を引っ張る。
そういう者に限ってファルナのように皆を救うためにより先の未来を見据えて行動する者を叩き、悪であるデーブには何も言わない。
だが、『何もしない愚か者』が手のひら返しをし始めた事で、デーブと犯罪者の全容があぶり出されていった。
俺は少しだけ、『何もしない愚か者』がもっと追い詰められていいと思ってしまった。
あとがき
カクヨムでは先行して投稿しており、完結まで執筆済みです。
よろしければカクヨムの方ものぞいていただけると嬉しいです。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
2,622
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる