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第163話

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 俺はセイコウコウボウに駆け寄った。

「もう、無理みたいだ。状態異常を、受けすぎた」
「うそ、だろ?異常解除のポーションを飲んでくれ!」
「とっくに、飲んでいるよ」

 俺はセイコウコウボウをみんなの所に連れて行った。



「セイコウコウボウを治せないか!?」

 アオイが俺に近づいて来て抱きついた。

「もう、無理なのよ。真・エクスファックの状態異常攻撃が強すぎたのよ。手遅れよ」
「そんな、セイコウコウボウ、セイコウコウボウ?」

 セイコウコウボウは、眠るように動かなくなった。
 もう、息が無い。

「ぎゃははははははは!セイコウコウボウは死んだか!もう反応がねー!死んだよなああ!俺達をつけ狙った天罰だぜ」

 ファングが俺達に近づいてきた。
 ファングの合図で防壁の門を開けてアサシンギルドの手下も遅れてやってきた。

「何の用だ?」
「おいおい!お前らがつけ狙っているファング様が直々に来てやったんじゃねえか!感謝しろよおお!ぎゃはははははははははははは!」

 俺は刀を出現させて前に出た。

「おいおい!びびんなよ!ま、ヒメ以外は皆殺しにしてやるんだがな!おっと、手下の為に見た目のいい男と女を奴隷にしてやるよ!それと、弱ったカムイは俺のレベルにアップの足しにしてやるからよお!ありがたく思えよおおお!お前!刀がボロボロじゃねーか!無理すんなよ!ぎゃははははははは!」

 俺は歩いてファングに近づく。

「お前ら!青い目のハイブリッドを殺せ!殺した奴は幹部にしてやるよ!こいつはずる賢く死にかけの魔物を倒しただけの卑怯者だ!」

 自信のありそうな者が50人ほど俺に向かって来る。
 俺は、防壁とは反対方向に走った。
 俺は、冷静になっていた。
 精鋭を、確実に殺す。
 意図的に、逃げられないように防壁とは反対側に走る。

 後ろから短剣を投げつけられたが、それをかわしながら逃げる。
 奴らは陣も組まず、バラバラに追ってきてくれた。
 強い奴が我先に俺を殺そうとしてくれる。

 強い奴から確実に殺せる!
 
 目立たなくて良かった。
 ファングの言葉を思い出す。

『こいつはずる賢く死にかけの魔物を倒しただけの卑怯者だ!』

 卑怯者、それでいい。
 ヒメやサミスの力を借りて戦った卑怯者。
 
 弱ったダミーファック改をたまたま倒した卑怯者。

 セイコウコウボウが弱らせたエクスファック改を後ろから攻撃した卑怯者

 倒しかけた真・エクスファックをラッキーだけで倒せた卑怯者。

 俺はアーツのような派手な攻撃は使えず、最小限の動きで戦っていた。
 魔物のターゲットを取る時以外はあまり動いていないように見えるだろう。

 恐らく俺は、素早いだけの無能、そう見られている。

「ひゃっはー!幹部の地位をゲットだぜー!」
「獲物はあたいがもらうよ!」
「俺が上に昇るんだよ!」

 俺は口角を釣り上げた。
 強い奴ほど動きが速い。
 幹部候補から殺す!

「回復弾丸!」

 ストレージから出した回復弾丸を手の甲に押し付ける。

『武具の耐久力とツインハンドガンの弾数が回復しました』

 俺は反転して一気に斬りかかる。
 
 1人!

 3人!

 7人!

 15人!

 斬り殺していく。

「な!なんだあいつは!無能じゃなかったのかよ!」
「れ、レベルだけの奴じゃねーわよ!」

 戦闘から順に後退しようとする。
 だが、後ろから追って来た後続とぶつかり、逃げ遅れる。

 俺はその隙に奴らを倒していく。
 途中から俺は追われる者から追う者へと変わっていた。
 俺は、容赦なく暗殺ギルドの精鋭を殺しながら、ファルナ達の元へと戻っていく。



【アオイ視点】

 ファングは上機嫌でゲラゲラと笑う。

「セイコウコウボウは死んで、カムイも死にかけで俺に殺される!次にレベルが高いのはアオイ、お前だな!だが残念だったな!俺のレベルは190だ!しかもお前、もう力が残ってないんだろ!?ぎゃははははははははは」

 ファングはプライドが高い。
 我の強いドリルより、アサヒに似ている。
 ハヤトとパーティーを組んだことでレベルは上がっているけど、まともに動けないのは事実。
 何とか時間を稼ぎたい。

「本当にレベル190もあるのかしら?」
「は!証拠を見せてやるよ!」



 ファング 男
 レベル:190
 ステータスポイント:0
 スキルポイント:455
 ジョブ:上級戦士
 体力:360+90
 魔力:360
 敏捷:460+90 
 技量:360 
 魅力:360  
 スキル・短剣LV10・ファングスラッシュLVLV10・ファングムーブLV10・ファングスローイングLV10・感知LV10・ステップLV10・カウンターLV10・隠密LV10・投てきLV10★スピードギア
 武器 アサシンマチェット:750(毒効果) ・防具 アサシンの衣:500

 レベル100を超えて、セカンドジョブではなく、特化型の上級戦士を選んだわけね。
 上級戦士になることで、レベル-100の数値分が体力と敏捷に加算される。

 戦士・魔導士・錬金術師の場合は、セカンドジョブを取得して、剣を使いながら回復魔法を使うような道もあるのだけど、それは選ばなかったのね。
 スキル枠の管理が難しくなるのだからセカンドジョブを選んでも問題は起こる。
 特化もセカンドジョブの一長一短ね。

 能力は分かりやすい斥候タイプ、分析スキルはスキル枠が足りなくて入れていないようね。
 『スピードギア』のソウルスキルも持っている。
 皆は連戦続きで余裕はない。

 まともに戦えるのは疲弊した私、それ以外はいない。
 ハヤトとパーティーを組んでいたおかげで、力が残ってさえいれば簡単に倒せると思うのだけれど、時間稼ぎしか出来そうにないわね。

「ぎゃははははははは!その顔!お前らのその顔!そうだよなあ!これから俺の部下に殺されるんだよ!そういう顔になるよなあ!」
「所で、ハヤトを追って行ったみんなは大丈夫かしら?」

「長々と話す気はねえよ!やっちまいな!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 全員がばらばらに攻めてくる。

「攻撃魔法を撃つのですわ!」

 一人が撃てて2~3発、勢いを殺しきれていない!
 相手は魔導士の苦手な斥候タイプが多い!
 私は前に出て戦った。

 他のみんなも前に出て戦う。
 でも、もう、力が残っていない。

 ファングは、そう、私もカムイも無視してヒメの所に行くのね。
 カムイを倒す振りをしてヒメの体を貰うつもり、でも、それならヒメは殺されない。
 今は少しでも時間を稼ぎたい。
 
「アオイを倒せ!げへへ!俺の女にしてやるよ!」
「アオイはもう弱っているぞ!もっと追い詰めろ!」
「あっちにもいい女がいる!奪え!」

 く、ヒメ!

 ファングは起き上がろうとするヒメのお腹に蹴りを食らわせた。

「おとなしく寝てろよ!」

 そして、媚薬を浸すように塗り込み、大きな布袋に詰め込む。

「今から気持ちよくしてらるよお!」

 そう言ってヒメを入れた布袋を担いで防壁の中に向かいながら叫ぶ。

「お前ら!しっかり始末しとけよ!」

 その時、カムイがファングに剣を振った。

「おっと、おいおい、もう死にかけじゃねえか。無理すんなよ」

 ファングは素早く後ろに下がりながらの投てきでカムイの太ももに短剣が突き刺さった。

「ぎゃはははははははは!命は一つしかないんだ!大事に使うべきだったな!お前が余計な事をしたせいでこれから俺に殺させるんだよ!」

 その瞬間、アサシンギルドが叫び声を上げながら防壁の門に向かって走っていく。

「化け物おおおお!青目の化け物だあああ!」

 だが、民によって防壁の門を閉められた者たちは青く光る眼をした刀使いに斬り殺されていった。
 やっと来た。
 間に合った。

 ハヤト!
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