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第169話

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 俺は防壁の上に昇り、座って外を見ながら待った。
 日が落ちかけ、夕焼けに変わっていくと、ファルナが声をかけてきた。

「ハヤト、感謝していますのよ」
「皆の力だ」
「ヒメにも、サミスにも、アオイにも、カムイパーティーにも感謝は伝えてありますわ。ハヤトのおかげで、まともに戦う事が出来ますわ」

「お礼は無事に生き残ってからな」
「そうですわね。ですが、ハヤトがいれば不思議と怖くありませんわ」
「切り札はカムイだ。カムイが邪神を倒せる力を持っている」
「確かにカムイは強いですわ。ですが、実はハヤトの方がカギを握っているような、そんな気がするのですわ」

「う~ん。実感が全くない」

「来ました!テンタクルが来ましたよ!」

 サミスの声でみんなが注目すると、テンタクルが歩いてくる。
 
 人型に赤い体、背中から6本の触手が生えてうごめき、頭の髪は無いが縦に割れているのが特徴的だ。
 ゆっくりと確実に防壁に近づいてくる。
 まるでみんなに恐怖を与えるようにじわじわ近づく。
 カイン達がいない。
 それが逆に不気味だ。



 テンタクルが止まると、カムイパーティーの3人がだけが退治し、遠くから俺達は見守る。
 カインはどこに行った。
 カインがファルナをターゲットにするか、それともカムイをターゲットにするかで作戦が変わって来る。

 テンタクルがありえないほど大きな声で話した。

「すべての女を差し出せば男だけの緩やかな衰退を認めてやろう」

 テンタクルの言葉で大地が揺れ、防壁が振動する。

「断る!テンタクル!俺が倒す!」

 カムイが剣を構えて言った。
 テンタクルは興味が無いようにカムイを見て、後ろにいるヒロイン2人を凝視した。

「うむ、まずはそこの2人にする」

 その瞬間カムイがテンタクルに斬りかかり、カムイパーティーとテンタクルの戦いが始まった。

 そのタイミングで100体のダミーファックと、後ろにいるエクスファック改がファルナを狙って走って来る。

「ダミーファックの量産型よ!ダミーファックより弱いけれど、すばやさに特化しているわ!」

 戦いはテンタクルVSカムイパーティー
 
 そして俺達全員VSダミーファックの戦いとなった。

「カースウォー!!」
「「カースウォー!」」

 ファルナの号令で皆がカースウォーを使う。

「攻撃開始!」

 その瞬間ダミーファックに攻撃魔法が放たれ、エリスもじゅで攻撃を開始した。

 更にダミーファックが近づいた瞬間にシルビアがソウルスキルを使う。

「ソウルスキル・ファイナルスラッシュ!」

 三日月型の斬撃が横なぎに放たれ、ダミーファックを10体以上倒した。
 よし、作戦通りだ!
 その後流れるように戦士隊が突撃する。

 魔法部隊は後ろに下がって魔力ポーションを飲む。

 だが、嫌な気配がした。

 8体のダミーファックが乱戦に紛れるようにファルナに迫った。
 あの8対だけは動きが早い!

「ああ!あれは真・ダミーファックよ!女性を倒す事とスピードに特化しているわ!」

 俺は1体の真・ダミーファックを何とか足止めする。
 みんなも足止めしようとするが4体の真・ダミーファックがファルナを囲んだ。
 真・ダミーファックの腕が鞭のようにしなり、伸びて先端が注射器の針のようにとがった。

 ファルナは攻撃を受けた瞬間に一瞬で動きが鈍り、4体から連撃を受け捕まる。
 そして真・ダミーファックはファルナを後ろにいるエクスファック改に投げた。

 エクスファック改がそれを受け取ると、ジェット噴射のように飛んで下がっていく。
 あのエクスファック改は明らかにエクスファック改と違う!

 カイン!
 ダミーファック量産型の中に特殊タイプを紛れ込ませ、エクスファックも特殊タイプか!
 明らかにアオイが狙われるように攻撃を受けていたが、アオイに観察されないよう周到に練られていた!

 俺とサミスだけが乱戦から抜け出してファルナを追う。
 エクスファック改のいる空間が歪み、穴が出現した。
 その中に入っていく。

 俺とサミスはその中に飛び込んだ。


「サミス、大丈夫か?」
「だい、じょうぶです。でも、奥に逃げられちゃいました」

 中は異空間になっているのか、ラボのような空間が広がっていた。

「カインが作った異空間なのか?」
「きっとそうですよ!」
「奥に進もう」

 俺とサミスは奥に進む。
 通路の横には液体の満たされたカプセルがあり、その中にダミーファックかエクスファックか分からないが、生み出されようとしている。

 俺は刀でカプセルの中にいる生まれようとしている魔物を攻撃した。

「ん?経験値が入った。サミス、すぐにパーティーを組んでくれ」
「ええ!まさか!全部壊しちゃいますか!追わなくていいんですか!」
「壊しながら追う!」

 俺はすぐにサミスとパーティーを組んでカプセルを破壊し、経験値を手に入れながら進んだ。
 こんな数の敵を量産されてたまるか!
 カインに打撃を与えてやる!

 300ほどあるカプセルを壊しつつ奥に進んだ。
 レベルがどんどん上がっていく。



 奥に進むと、カインがファルナの口に黒い球を入れていた。

「はあ、はあ、ざ、残念だったね!これでもうファルナは僕の物になるんだあああああああああああああああああああああああ!!!」

 カインのテンションが明らかにおかしい。
 ファルナを前にして興奮しているようだ。

 そう言いながら空間が歪み、ファルナを抱えて逃げていく。
 後ろには魔物化されたと思われるアサヒ・ドリル・ファング、そしてエクスファック改が続いた。
 
 俺とサミスはそれを追って歪んだ空間に飛び込んだ。


 外は元の空間に戻っていた。
 遠くでカムイ達が戦っている。

 俺は素早くカインに斬りこんだ。
 
「ぎゃあああ!!!」

 カインが転んでファルナを離す。

「こ、殺せええええ!ハヤトを殺せえええ!」

 俺は囲まれた。


「サミス!今だ!女神に言われた通りに頼む!」
「はい!ソウルスキル・きゅう!」

 きゅうがファルナに抱きつく。
 ファルナが光って目を覚ます。

 そしてファルナは武器を出してカインに斬りかかった。
 カインの顔から血が出る。

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!な、何で!ファルナは僕の生まれ変わる為に目を覚まさないはずなのにいい!」

「私が治しちゃいました!」

「許さないいいいいいい!僕が殺してやるウウウウウ!」

 カインはハンマーを出してサミスに殴り掛かる。

 俺がファング・アサヒ・ドリル・エクスファック改の相手をしている隙にサミスとファルナはカインを倒した。

 カインが倒れ、黒い霧になって消えると魔石とドロップ品を吐き出した。
 カイン、魔物になっていたのか。

「ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
「は、ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
「ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 アサヒ・ドリル・ファングは異常なほど笑い出した。
 それを見た俺は狂気を感じた。





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