恋瓶の魔女

銀の髪を夜風に揺らし、赤い瞳で足元を見つめる小さな女がいる。
年齢不詳、身長は子どもほど。けれどこの街では、彼女が二百年を生きる魔女だと囁かれていた。

彼女は夜の路地に落ちた恋を拾う。

告げられなかった想い。
届かなかった手紙。
忘れられない約束。
死んでしまった人へ向けた、行き場のない好き。

誰にも見えないそれらを、彼女だけは見つけることができる。
ガラス片のようにきらめく恋を、白い指先でそっと摘み上げ、小さな瓶へ閉じ込めるのだ。

「あなたが明日、少しだけ前を向けるように」

そう言う時だけ、彼女の声は驚くほどやさしい。

普段の彼女は無口で、愛想もなく、感情すら薄い。
まるで人の心になど興味がないような顔をしている。
けれど誰よりも、失くした恋の重さを知っている。

瓶が割れれば、その恋は最初からなかったことになる。
だから彼女は、誰より慎重に瓶を抱く。

かつて自分も、ひとつの恋を拾えなかったまま。
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