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それぞれの夢を抱いて

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『えっ、彩葉先生も保育士に憧れてたんですか?』


理久先生の質問にうなづいた。


『そうよ。彩葉はね、ずっと保育士になりたかったけど、以前は化粧品の販売員をしてたんだよね。それも丸翔百貨店であの有名なitidou化粧品のだよ』


横から嬉しそうに答えてくれる弥生。


『…そうだったんですか。itidou化粧品の販売員を…全然知らなかったです。でも、だからそんなに彩葉先生は素敵なんですね』


えっ!?


「素敵」の2文字に思わず体が固まる。


『ちょっと~素敵だなんて彩葉先生だけズルい~ここにも可愛い女子がいるでしょ?』


『どこにですか?』


首を傾げてニコッと笑う理久先生。


『ちょっとさっきの仕返し?』


『違いますよ。でも…彩葉先生がitidou化粧品の売り場にいたって…一堂って、彩葉先生の苗字ですよね』


『そうだよ。彩葉はね、itidou化粧品の社長令嬢なんだから』


『ちょっと止めてよ、弥生。社長令嬢なんてそんな良いもんじゃないから』


恥ずかしくて慌てて否定してしまった。


『…そんなことも全然知らなかったです。初めて知ることばかりで、彩葉先生のこと僕は何もわかってなかったんですね』


なぜか肩を落としている理久先生。


『ちょっとそんなしんみりしないでよ。彩葉と理久先生は、別に付き合ってる訳でも夫婦でもないんだし、知らなくて当たり前でしょ?』


『…すみません』


『なんで謝るの?理久先生ちょっと変だよね』


『弥生、もう私の話はいいから。それより理久先生、保育士になるっていう夢は叶ったけど、これから先の「夢」ってあるの?』


違う話題に逸らしたかったのもあるけど、それと同時に、本当に理久先生の夢を知りたくなった。


『僕の夢…それは保育園の園長になること、っていうか、自分の小さな園を開いて、結婚して奥さんと一緒に経営したい。小規模でいいから温かい家庭的な保育園をやりたいんです』


優しい眼差しで語る理久先生。
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