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本編
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サナトスは安からな眠りについたクレア様を闇の中に葬り、残った二人を見下ろした。
『次は自分だ』と察している陛下とショックから抜け出せないノア様·······。
『絶望』という二文字が二人の脳内を支配する。
「あ、アリス嬢頼む!許してくれ!私はこの国の王として、生きなければならないのだ!」
王としてのプライドを捨て、陛下は深々と頭を下げる。
私はそれをただじっと見つめていた。
「もちろん、タダでとは言わん!美しい宝石や高い身分を与えよう!」
「美しい宝石にも高い身分にも大して興味がありません。私が欲しいのは陛下とノア様が死亡したという結果のみですわ」
「で、では!こうしよう!ノアを含めるアレクサンダー公爵家の人間を君にやる!煮るなり、焼くなり好きにするといい!だから、私の命だけはっ······!」
「────随分とくだらない冗談ですね。実の妹や甥を売ってまで生き残りたいだなんて·······実に卑しい考えですわ」
「っ·······!!」
我が身可愛さに家族を売ろうとする陛下に、私は思わず溜め息を零す。
彼の中に美しい家族愛は存在しないらしい。
陛下は国王としての責任と義務があるからと言い繕っているが、それは建て前に過ぎない。
結局のところ、陛下は何とかこの場を切り抜けて生き残りたいだけなのだ。
まあ、そこが人間らしいのだけれど·····。
「リアム国王陛下、貴方にはノア様をこんな風に育て上げた責任を取ってもらいます。この国の王だからと見逃すつもりは一切ありません」
「そ、そこをなんとか頼む·······!私はこの国に必要な存在なん······」
「────甥っ子一人まともに育て上げられない陛下がこの国に必要な存在?ふははっ!笑わせないでくださいよ」
私はクスクスと笑を零し、ゆっくりと陛下に近づくと────陛下の肩をトンッと軽く押した。
すると、産まれたての子鹿のようにガクガク震えていた足がバランスを崩し、その場に尻もちをつく。
私は情けない姿を晒す陛下を見下し、嘲笑った。
「この際だから、ハッキリ申し上げます。貴方が居なくても、この国は回りますよ」
「なっ!そんなわけ·······!!」
「否定したくなる気持ちは分かりますが、これは事実です。別にデタラメを言っている訳ではありません」
「········根拠は何だ?」
自分の存在価値によほど自信があるのか、陛下は私を睨みつけてくる。
王としてのプライドを捨てることは出来るが、傷付けられることは許せないみたいだ。
男とはつくづく面倒臭い生き物である。
「根拠、ですか·······。では、自分の胸に手を当ててよく考えてみて下さい。自分が居ないと国が回らなくなる理由や根拠があるのかどうか」
「········」
「この国は優秀な人材が多数居ます。その上、王太子ももう決まっている。陛下が死んだところで国政に問題はないと思いますが?」
「それは······!」
「むしろ、貴方が国王である必要性が微塵も感じられません。貴方に存在価値なんて、あるんでしょうか?」
「っ·······!!」
言い返す言葉が見つからないのか、陛下はギシッと奥歯を噛み締める。
図星を突かれたのが相当堪えたらしい。
そんな彼に、私は情け容赦なくトドメを刺した。
「さっさと死んで王位を息子に渡した方が国のためですよ。甥っ子を甘やかすしか能がない貴方に王の器などありませんから」
『才能がない』とハッキリ告げれば、陛下は顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がった。
「黙れ!!伯爵令嬢の分際で王の器を語るな!!」
見事な逆上を見せた陛下は物凄い形相でこちらへ詰め寄ってくる。
が、サナトスがそれを許す筈もなく······。
「愚かな人間の分際で僕のアリスに近づないでくれるかい?本当に汚らわしい」
憎々しげにそう吐き捨てたサナトスは闇を使って、陛下の手足を拘束する。
紐状に伸びた闇に捕らわれた陛下は怯える様子もなく、喚き散らす。
「愚鈍な女のくせに生意気だぞ!ノアの婚約者だからと優しくしていれば、つけ上がりおって······!何が精霊の愛し子だ!ただの殺戮マシーンではないか!貴様の名は愚者として、この国の歴史に······」
「────うるさいよ」
陛下の喚き声がよっぽど煩かったのか、痺れを切らしたサナトスが陛下の首を闇で絞めあげる。
早くも酸欠状態になった金髪赤眼の美丈夫は闇を取り除こうと、首元を引っ掻いた。
「ぐっ······!がっ·······!」
苦しそうな声を漏らすが、闇の力が弱まることはない。
無様に足掻き続ける陛下の姿は見ていて、とても楽しかった。
「サナトス、もう首の骨折っていいよ」
「もう満足しちゃったのかい?」
「ええ」
サナトスは肩を竦め、『残念』と零すと、おもむろに手をギュッと握り締めた。
その動きに闇が反応し、陛下の首を絞める力が更に強くなる。
そして────グキッと痛々しい音を立てて、リアム国王陛下の首が折れた。
と同時に、陛下の手や足がダランと垂れ下がる。
────これがリアム国王陛下の最期だった。
『次は自分だ』と察している陛下とショックから抜け出せないノア様·······。
『絶望』という二文字が二人の脳内を支配する。
「あ、アリス嬢頼む!許してくれ!私はこの国の王として、生きなければならないのだ!」
王としてのプライドを捨て、陛下は深々と頭を下げる。
私はそれをただじっと見つめていた。
「もちろん、タダでとは言わん!美しい宝石や高い身分を与えよう!」
「美しい宝石にも高い身分にも大して興味がありません。私が欲しいのは陛下とノア様が死亡したという結果のみですわ」
「で、では!こうしよう!ノアを含めるアレクサンダー公爵家の人間を君にやる!煮るなり、焼くなり好きにするといい!だから、私の命だけはっ······!」
「────随分とくだらない冗談ですね。実の妹や甥を売ってまで生き残りたいだなんて·······実に卑しい考えですわ」
「っ·······!!」
我が身可愛さに家族を売ろうとする陛下に、私は思わず溜め息を零す。
彼の中に美しい家族愛は存在しないらしい。
陛下は国王としての責任と義務があるからと言い繕っているが、それは建て前に過ぎない。
結局のところ、陛下は何とかこの場を切り抜けて生き残りたいだけなのだ。
まあ、そこが人間らしいのだけれど·····。
「リアム国王陛下、貴方にはノア様をこんな風に育て上げた責任を取ってもらいます。この国の王だからと見逃すつもりは一切ありません」
「そ、そこをなんとか頼む·······!私はこの国に必要な存在なん······」
「────甥っ子一人まともに育て上げられない陛下がこの国に必要な存在?ふははっ!笑わせないでくださいよ」
私はクスクスと笑を零し、ゆっくりと陛下に近づくと────陛下の肩をトンッと軽く押した。
すると、産まれたての子鹿のようにガクガク震えていた足がバランスを崩し、その場に尻もちをつく。
私は情けない姿を晒す陛下を見下し、嘲笑った。
「この際だから、ハッキリ申し上げます。貴方が居なくても、この国は回りますよ」
「なっ!そんなわけ·······!!」
「否定したくなる気持ちは分かりますが、これは事実です。別にデタラメを言っている訳ではありません」
「········根拠は何だ?」
自分の存在価値によほど自信があるのか、陛下は私を睨みつけてくる。
王としてのプライドを捨てることは出来るが、傷付けられることは許せないみたいだ。
男とはつくづく面倒臭い生き物である。
「根拠、ですか·······。では、自分の胸に手を当ててよく考えてみて下さい。自分が居ないと国が回らなくなる理由や根拠があるのかどうか」
「········」
「この国は優秀な人材が多数居ます。その上、王太子ももう決まっている。陛下が死んだところで国政に問題はないと思いますが?」
「それは······!」
「むしろ、貴方が国王である必要性が微塵も感じられません。貴方に存在価値なんて、あるんでしょうか?」
「っ·······!!」
言い返す言葉が見つからないのか、陛下はギシッと奥歯を噛み締める。
図星を突かれたのが相当堪えたらしい。
そんな彼に、私は情け容赦なくトドメを刺した。
「さっさと死んで王位を息子に渡した方が国のためですよ。甥っ子を甘やかすしか能がない貴方に王の器などありませんから」
『才能がない』とハッキリ告げれば、陛下は顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がった。
「黙れ!!伯爵令嬢の分際で王の器を語るな!!」
見事な逆上を見せた陛下は物凄い形相でこちらへ詰め寄ってくる。
が、サナトスがそれを許す筈もなく······。
「愚かな人間の分際で僕のアリスに近づないでくれるかい?本当に汚らわしい」
憎々しげにそう吐き捨てたサナトスは闇を使って、陛下の手足を拘束する。
紐状に伸びた闇に捕らわれた陛下は怯える様子もなく、喚き散らす。
「愚鈍な女のくせに生意気だぞ!ノアの婚約者だからと優しくしていれば、つけ上がりおって······!何が精霊の愛し子だ!ただの殺戮マシーンではないか!貴様の名は愚者として、この国の歴史に······」
「────うるさいよ」
陛下の喚き声がよっぽど煩かったのか、痺れを切らしたサナトスが陛下の首を闇で絞めあげる。
早くも酸欠状態になった金髪赤眼の美丈夫は闇を取り除こうと、首元を引っ掻いた。
「ぐっ······!がっ·······!」
苦しそうな声を漏らすが、闇の力が弱まることはない。
無様に足掻き続ける陛下の姿は見ていて、とても楽しかった。
「サナトス、もう首の骨折っていいよ」
「もう満足しちゃったのかい?」
「ええ」
サナトスは肩を竦め、『残念』と零すと、おもむろに手をギュッと握り締めた。
その動きに闇が反応し、陛下の首を絞める力が更に強くなる。
そして────グキッと痛々しい音を立てて、リアム国王陛下の首が折れた。
と同時に、陛下の手や足がダランと垂れ下がる。
────これがリアム国王陛下の最期だった。
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