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第四章 明けぬ夜の寝物語

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「従順ですね。そう…穏便に済ませたいなら大人しく抱かれるのが賢明な選択ですよ。
 それとも、何のかのと云っても、実は貴女も本当は好き者の淫乱なのかな。本当はこういう風にされたくてわざと後をつけてきたんじゃないんですか」

 違う、ちがう、と首をふる彼女の割れ目から、愛液が沁み出してくる。ナシェルは漏れだした雫を指先にすくい、また奥へ戻すように、指の抜き差しを緩慢に繰り返す。
 蕾の近くをこすったとき、彼女の声色が明らかに変わった。

「んんっ…ぁ……ん!」
  そこを集中的に責める。卑猥な音が漏れる。

 王妃のドレスは今や、敷物のように床の上に乱れ広がっており、あふれ出でた王妃の秘蜜を吸って濡れている。

「やぁっ――だめ……!!」
 あえかな悲鳴をあげ、王妃がいよいよ腰を仰け反らせた。
 胸が大きく上下し、表情は放心に近い。大粒の涙が頬を伝っていた。
「セファニア。いくときの声も可愛いんですね」

 ナシェルは床に広がるドレスを踏むようにして膝立ち、おのれの腰紐を解いた。
 はたと我に返る。……妙な気分だ。いつも突っ込まれている自分が。
 しかし、これも悪くない。

 王妃は半ば喪心していたが、固く張り詰めた男性器を直接、下腹に押し当てられたことに気づくと、顔を引き攣らせた。

「『だめ』と『いや』はもう無しですよ。貴女は快楽を味わったんだから」

 ナシェルは自分の牡でセファニアの割れ目をなぞり、そこから沁み出た愛液を棹に塗りたくるようにしてから、秘部へと自身を沈めていった。
 したたるほど潤っていたその部分は、セファニアの体の強張りとは裏腹に、難なく屹立を受け入れる。

 はじめは、揺すりあげるように……、やがて規則的な律動に移行してゆきながら、ナシェルは王妃の首の下に手を差し入れた。頭を支え、ねっとりと王妃の唇を啄む。

 ん、ん、と律動に合わせて喘ぐセファニアは、表情こそ辛そうだが、半ば快楽の虜になってしまったようだ。二本の足は力をうしないナシェルに抱えられて、腰の動きに合わせふわふわと揺れている。

 小さな器官の柔らかさと締めつけに、感動すら覚えつつ、ナシェルは王妃の体を貪り続けた。

「んん……っああ……っ……ひぁ………」

 セファニアの喉から発される、可愛らしい啜り泣きの声。
 ああ父が自分をはじめて犯したときも、こういう感じだったのかと不意に思った。
 そしてこの期に及んでも父のことが頭を過ぎる自分に、苛立った。

(貴方が私にしてきたことの結果ですよ、父上。私を長い間狂わせてきた報いだ)

 王の妃を犯すという背徳感と、父をとうとう極めつけに裏切ってやった、という達成感に満たされていた。
 ―――どこか空虚な達成感に。


 ナシェルは王妃の腰を掴み、激しく突き上げた末に体の奥の熱を放出した。
「………ッ!」
  思わずこちらも、声が漏れそうになる。
  女の胎内に吐精する快感は、とりわけ新鮮なものであった。
  自分で射精のタイミングを決めることができるのも素晴らしい。



 ナシェルは自身を引き抜き、うつろな王妃を抱き起こして衣装を整えてやりながら、徐々に冷静に立ち戻っていった。

(……遂げてしまった。もう後戻りはできぬ。だが、後悔は、しない……)

  罪悪感と充足感の間で心がさまよっている。

 セファニアは蒼白で、唖のように言葉を失い、終えたあととても具合が悪そうだった。強引に犯されたのだから、無理もない。

 ナシェルは乱れた金の髪を手櫛で整えてやった。
 そして最終的には立ち上がれない彼女を半ば抱えるようにして、部屋まで送っていった。

 セファニアは未だ自失したようすで、部屋へ着いても顔は生気を失い、当たり前だろうがナシェルの方を一瞥することもなかった。

 王妃が居なくなって探していたという侍女らに、ナシェルは、「城内で迷っていたので保護した」と偽りを云って彼女を返した。王妃は侍女らに抱えられるようにしてナシェルの前から去り、寝室の扉は固く閉ざされた。

 侍女たちは王妃を着替えさせようとして、凌辱の痕跡に気づくかもしれない。
 だがその事実を冥王に告げようとする、度胸のある者はいないだろう。
 それをすれば彼女らも世話係としての責任を問われることになろうから。

 問題はセファニア自身だ。
 彼女はこの酷い仕打ちを王に告げるだろうか?

「好きにするがいい……」
  閉ざされた王妃の扉に向かって腕を組み、ナシェルは独白した。

「どうせ今までも父にはさんざん苦い経験をさせられたのだ。今さら仕置きが怖くて王妃がれるか」

 ――自暴自棄やけくその時代、の到来である。




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