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1巻
1-1
どこまでも真っ白な空間。その空間には黄金の装飾が施された玉座があった。
小麦色の肌、金の髪を持つ青年が足を組んで玉座に座り、肘掛けに右肘をつきながら、正面に置かれた大きな鏡を眺めていた。
しかし、そこに映るのは青年の顔ではなく一人の少年。寝坊したのか、慌てて家を飛び出す黒髪の少年だった。
「……やっぱり上手くいかなかった。間に合わないように寝坊させたり、コンビニに寄りたくなるようにいろいろ手を回したのになぁ。お兄さんにもこれ以上は干渉できないよ」
鏡を見ながら大きくため息をつく青年は、不機嫌そうに少年を見ていた。
「まあ、あの子の巻き込まれ体質はどうやったって変えようがないってことだね。仕方がない、とりあえず対処しようかな」
青年は空いていた左手を空中でクルクルと回した。そこには何もなかったが、青年には何かが見えているようで、左手の指で何かを操作していた。
「落ちる場所は、他の子達とは真逆の環境にしようかな。完全に周囲から離しておいた方が面倒事に巻き込まれる危険も減るでしょう。あ、でもそうなると一人か。……ちょうどいいや、そろそろどうにかしようと思っていた子が二人いたんだよね。あの子達に手伝ってもらって、剣と盾となってもらおうっと」
さっきまでの不機嫌さを忘れたように、青年はニヤニヤしながら独り言を呟き、何もない空間に向かって指をクルクルと回し続けた。
「さて、そうなるとあとは職業か。何がいいかな? どうせどの職業に就かせても戦闘には向かないからなぁ。本人の気質を考えると……一番近いのは、鑑定士かな?」
青年は再び指をクルリと回す。しかし、その指は何かに当たったようにピタリと止まった。
「ありゃりゃ、正式な鑑定士はやっぱり無理か。まあ、元々この子に職業なんて意味ないもんなぁ。仕方がない。じゃあ、(仮)ってことで! ……どうかなぁ? お! よし、上手くいった!」
止まっていた指が再び動き出すと、青年はニコリと笑った。
「よし、準備完了。まあ大変だとは思うけど頑張ってね。人生を楽しんで」
全ての作業を終えた時、青年の正面にあった鏡から眩い光が放たれる。
光が収まったとき、鏡に映ったのはやはり先程の少年。
しかし、少年のいる場所は到着したばかりの学校ではなく、草原だった。だだっ広い草原でスヤスヤと寝息を立てている。
「ようこそ、異世界へ。君の人生に幸あらんことを願っているよ。……約束だしね」
青年は鏡に映る少年を、ただ優しく見つめていた……が。
「……でも、きっと面倒なことになるんだろうなぁ。ハア」
それはそれは深いため息をついてこれからの未来を嘆いた。
◆ ◆ ◆
雲ひとつない澄み切った青空。普段見ている空とはあまりにもかけ離れて美しく、大気汚染なんて全くないと思わせるほどの透明度だった。
――ここは日本じゃない。
意識を取り戻した俺が、視界いっぱいに広がる空を見て、直感的に思ったのはそんなことだった。
俺の名前は真名部響生。
どこにでもいる普通の高校生だ。ちなみに高校二年生の十六歳。
どうやら俺は地面に大の字になって寝転がっているらしい。起き上がってあたりを見回すと、そこはだだっ広い草原だった。俺以外には誰もいないようだ。
「なんでこんなところにいるんだろう?」
確か俺は遅刻しそうになって教室へと急いでいたはずだ。明日から夏休みだというのに、居残りなんてさせられたら敵わないと焦っていた。
そういえば教室に入る寸前、大きな声が聞こえたような。教室がやけに光っていたような気もするけど……。
うん、覚えてないな! 覚えてないものは仕方がない、諦めよう。
さっきも言った通り、あたりは目印ひとつない草原だ。木の一本すら見当たらない。
正直、どうして俺がこんな場所にいるのか訳が分からないが、とりあえず歩いてみよう。
俺の服装は半袖のカッターシャツとスラックス。頭にはタオルを被せて帽子の代わりにした。ちなみに夏服だったから学ランはない。
幸い、リュックが傍らに転がっていた。中には登校中に買ったパン二個と五百ミリペットボトルの水が二本入っている。二、三日なら大丈夫だろう。
すぐに人でも見つかればいいんだけど……。
さて、スマホの時間は午後七時くらいになった。あれから休みなく歩いたというのに成果なし。
もう、足が棒だよ。
今日一日で八時間くらいは歩いた。歩行速度はおよそ時速五キロだと思うから四十キロくらいは歩いたはずなのに、何も見つからなかった。
太陽の位置で方角を確かめようと思ったけど、いつも太陽は真上にあった。意味が分からず歩いていると、気が付いたら日が暮れているって何?
あたりは真っ暗。日暮れと時計のタイミングは合っていたけど、偶然だろうか?
スマホの電波は圏外だしなぁ。まあ、こんな場所では仕方がないか。
でも、なんて広い草原なんだろう。それとも同じところをグルグル歩き回っただけ?
コンパスでもあればなぁ。GPSが利かないから、コンパスアプリも使えやしない。
本当にここはどこなんだろう?
ハハ、考えたところで結論なんて出るわけがない。仕方がないので今日はもう休むことにした。
火を起こす道具はないけど、必要なさそうだ。
この草原には動物が一匹も見当たらなかった。今もそれらしい気配はしない。これなら火がなくても安心して眠れる。
昼にパンを一個食べてしまったから夜は我慢だな。水はあと一本と半分。腹の虫がうるさいけど大切にしないと。
明日は何か見つかるといいんだけど……。
おやすみなさい、ぐぅ。
温暖で過ごしやすかった昨日とは打って変わり、今日は真夏日のような暑さだ。
雲ひとつない快晴で、日差しは強く今も額から顎にかけてダラダラと汗を垂らしていた。
カッターシャツも大量の汗を吸ってベタベタだ。水は貴重だから体を洗うこともできやしない。
暑さによる疲労から口で息をする。そうすると喉が渇く。
この状況で熱中症にでもなったら堪らない。水を飲まないわけにはいかなかった。
今日の移動距離は昨日の半分ほどかもしれないな。明らかに歩く速度が遅くなっている。
今日も成果なし。まるで景色が変わらないので焦る。昨日と同じで動物の一匹も出てこない。これだけ広い草原で動物も、虫さえ見当たらないってどういうことなんだろうか。
残りの食料はパン一個と水がペットボトル半分。
せめて水場だけでも見つけないと……。つかれた。おやすみなさい、ぐぅ。
三日目の明け方。スマホの時計は午前四時。あまりの寒さに目が覚めてしまった。
身体がガタガタと震えている。異常気象じゃない? 絶対にこの気温は一桁だよ!
意味が分からない。一昨日は春、昨日は夏、今日は冬ってか? 同じ草原の中でコロコロ季節が変わりすぎじゃないの?
昨日の汗でベタベタの制服を着ていたから、余計に寒さを感じた。
正直きつい。前日の猛暑に対して今日の寒波。温度差に体がついていかない。
二日分の疲労と空腹のせいで、足が鉛でも仕込んでいるように重く感じた。
羽織れる物といえばタオルくらいしかない。首元にタオルを巻いて少しでも寒さを凌ぐ。まあ、あまり効果はないけどね。
両腕で体を抱きながら重い足取りで草原を歩いた。当然、長距離なんて歩けない。
昼休憩をして最後のパンを頬張る。幸いと言っていいのか、寒さのせいもあってあまり喉は渇かなかったので水を節約できた。
そうは言っても必要量の水分補給はできていないのだから、脱水症状に注意しなければ。
とりあえず一口だけ水を飲んで一息つく。
周囲は未だに代わり映えしない草原だ。山も見えなければ川もない。ただただ草原が広がるだけだ。
鳥はいないかと空を見ても視界に映るのは空ばかり。思わず俯いてため息をつく。
目印っぽい物はこの三日間で何も見つからなかった。景色も全く変わった気がしない。
悔し気に草原を睨んでいると、向こうの草がカサカサと揺れた。
「え?」
揺れた草の方をじっと見つめると、何かの影が見えた。影は草の向こうで動いているようだ。
ようやく草以外のものを見た。
座り込む俺の正面、五十メートルくらい前方に動物がいた。
遠くてはっきりは見えないけど、多分白いウサギではないかと思うんだけど……。
「あのウサギ、角が生えてる?」
声に出したのがいけなかったらしい。
草を食べていたウサギは、パッとこちらへ顔を向けたかと思うと、猛スピードで駆け出し、そしてものすごい跳躍力で飛び掛かってきた!
「うわあああああ!?」
俺は咄嗟に右へ飛んでなんとかかわしたが、地面に置きっぱなしのリュックが無残にもウサギの角に貫かれてしまう。
ウサギはリュックから角が抜けずにもがいていた。このまま逃げ出したいが、リュックを置いていくわけにはいかない。あんなウサギくらいどうにかしなくては!
それにしても……。
「あのウサギは何なんだ!?」
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】ホーンラビット
【 性 別 】オス
【 レベル 】1
【 H P 】28/30
【 M P 】5/5
【 S P 】5/5
【物理攻撃力】15
【物理防御力】12
【魔法攻撃力】0
【魔法防御力】5
【 俊敏性 】50
【 知 力 】5
【 精神力 】5
【 運 】10
【 備 考 】動きは素早いが単調。頭は悪い。角以外は普通の動物と同じ耐久力。
「!? 何、これ!?」
頭の中で急に声がして、変な文字や数字が浮かび上がった。スキル? 鑑定?
『ホーンラビット』……あのウサギのことか? 何なのか分からないが、ウサギ改めホーンラビットがリュックから抜け出す前に、なんとかしなくては!
表示されている内容が本当なら、素手でなんとかできるはずだ。心臓の高鳴りを全身で感じながら、全速力でホーンラビットに向けて走り出した。
そして、動けないホーンラビットの腹を、全力で蹴り上げてやった。
「ギュワンッ!」
奴はリュックに気を取られすぎて、俺に全く気が付くことなく無防備にキックを受ける。
リュックから角が外れ、ホーンラビットは少し離れたところに転がった。恐る恐る近づくと、ピクピクと痙攣していたが、しばらくして全く動かなくなった。
どうやらあの一撃で死んでしまったようだ。
頭の中に浮かんでいた画面を確認すると、奴のHPが『0/30』となっていた……。
改めてホーンラビットを眺めると、瞳は完全に光を失っている。
安心してホッと息を吐くが、命の危険を回避するためとはいえ殺生に対する嫌悪感が大きい。できればもうやりたくないな。
それにしてもさっきのアレは何だったんだろう? 『スキル』とか『鑑定』とか突然声が聞こえたと思ったら、攻撃力だの防御力だのといった数字がたくさん頭に浮かんできたけど。
もう一回できないかな? どうやったんだっけ……えーと、そうだ!
「あのウサギは何なんだ?」
さっきホーンラビットを見ながら言ったことと同じ言葉を口にしてみた。
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】ホーンラビットの肉(未解体)
【 備 考 】死にたてのホーンラビットの肉。鮮度ランクA。煮物にすると美味しい。
おお、出た! ……あれ? でもさっきと内容が違う。名前も『ホーンラビット』から『ホーンラビットの肉』に変わっている。まあ、死んじゃったら攻撃力も防御力も関係ないか。
でも本当にできた。『鑑定』か。何でこんなことができるんだろう? もっと試してみるか。
「これは何だ?」
俺はすぐそばにあったリュックを鑑定してみた。
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】背負い袋
【 備 考 】この世界には無い未知の素材で作られた背負い袋。穴が開いている。
対象や言葉が変わっても問題ない。というか未知の素材ってどういうことだ? リュックの素材なんてポリエステルとかの化学繊維だろうに。
うーん、考えても分からないな。仕方ない、もう少し試そう。今度は言葉にしなくても鑑定できるか試してみようかな。何がいいかな? ……あれにするか。
(よーし、鑑定!)
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】食べかけのパン
【 備 考 】三日月のような形のパン。二十七層の生地のサクサク食感。鮮度ランクB。
上手くいった! そうか、俺のクロワッサンは二十七層か。五十四層くらいあるとよかったな。
とりあえず『鑑定』の検証はこのくらいにして、クロワッサンを食べる。
興奮して忘れていたけど今日はとても寒いのだ。食事をして少しでも体温を上げないと。
さて、パンを食べ終えて出発しようと思ったわけだが、ホーンラビットの肉はどうしようか。火も刃物もないけど、重要なタンパク源だ。
「気持ち悪いけど持っていこうかな。食料にできるかも……」
最悪、生肉でも頑張れば食べられるかもしれない。
さっき、『鑑定』に鮮度ランクという表示があった。多分Aに近い程鮮度が高いってことだろう。
ホーンラビットの鮮度ランクはAだ。今なら十分食料にできる。……よし、持っていこう。
コンビニ袋にホーンラビットを詰めた。うう、死んだ目が怖い。閉じてくれないかな?
さて、これからどっちに進もうか。一昨日からずっとそうだが草原しか目に映らない。
……『鑑定』で何か分からないかな? ホーンラビットのいた方角に『鑑定』を使ってみよう。
確か左の方だったな。よし、左を向いて『鑑定』発動!
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【鑑定対象がありません】
上手くいかないかぁ。くっそーー、それじゃあ空に向かって『鑑定』発動!
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【鑑定対象がありません】
くそおお! こっちも何も無しか! もうヤケクソだ、地面に向かって『鑑定』発動!
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】メイズイーター
【 レベル 】273
【詳細の鑑定に失敗しました】
……見てはいけないものを見た気がする。ちょっと、違うところの地面も確認してみようかな。
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】メイズイーター
【 レベル 】273
【詳細の鑑定に失敗しました】
……うん、見なかったことにしよう。実際、どういう意味かよく分からないし。
サテ、ドッチニイコウカナ。
は!? そういえば、俺自身を鑑定ってできるのかな? 一応やってみるか(現実逃避中!)。
「俺に、『鑑定』発動!」
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】真名部響生
【 性 別 】男
【 年 齢 】16
【 種 族 】ヒト種
【 職 業 】鑑定士(仮)(レベル1)
【 レベル 】1
【 H P 】55/101
【 M P 】35/35
【 S P 】38/65
【物理攻撃力】36
【物理防御力】15
【魔法攻撃力】21
【魔法防御力】23
【 俊敏性 】55
【 知 力 】38
【 精神力 】50
【 運 】60
【固有スキル】『識者の眼レベル1』『チュートリアルレベル1』
【技能スキル】『鑑定レベル1』『辞書レベル1』『世界地図レベル1』『翻訳レベル1』『魔導書レベル0』『宝箱レベル0』
【魔法スキル】なし
【 称 号 】『異世界の漂流者』
どうやら自分の鑑定もできるみたいだ。
ホーンラビットの鑑定結果を見る限り、HPが生命力だな。歩き詰めのせいか結構減っているな。他にSPというのも減っているけど何かな……『鑑定』を使ったから減ったのかな?
ちょっと『鑑定』を使ってみるか。
【技能スキル『鑑定レベル1』を行使します】
【 名 前 】薄手の手提げ袋
【 備 考 】この世界にはない未知の素材で作られた袋。水を弾く。耐久力は低い。
ふむ、コンビニ袋の素材も未知の扱い? これもポリエチレンだったと思うんだけど。
まあいいか、とりあえず再度自分を鑑定してみよう。
自己鑑定の結果、さっき38/65だったSPが、32/65に減少していた。
「やっぱり『鑑定』をするとSPが減るんだな」
『鑑定』一回につきSPを3消費するらしい。コンビニ袋と自己鑑定で6消費したってことか。
回復方法とかあるんだろうか? 使い切ったら終わりとかだと困るんだけど。
とりあえず他の内容も確認するかな。
職業の鑑定士(仮)って何だろうか。(仮)って……。鑑定士じゃないってこと?
じゃあ、何なのさ! もう少し分かりやすくしてくれ、『鑑定』さん。
次は攻撃力だけど、ホーンラビットよりは強いみたいだ。でも基準が分からないから、強いんだか弱いんだか判断できないな。……これも保留だなぁ。
次はスキルか。
固有スキルとか技能スキルとか言われても分からないけど、どう違うんだろう? それにスキルの名前だけ知らされてもどういう物か全然分からないし。
この固有スキル『識者の眼』ってどんなスキルなんだろうか?
「『識者の眼』発動!」
……あたりを静寂が包む。静かだ。恥ずかしい! 居た堪れない!
『鑑定』のときは口にしたら使えたからこれもいけると思ったけど……。
誰も近くにいなくて本当によかった! 『チュートリアル』も口にしてもダメかな?
「『チュートリアル』発動!」
……うん、静かだ。やっぱりこれも口にしても……。
【固有スキル『チュートリアルレベル1』はすでに行使されています】
なんか聞こえた!
え、え? すでに行使されている? 全然分かんない。
『チュートリアル』さん、どういうことなの? 教えてくれ!
……答えてはくれないのね。ハァ、仕方がない。他のスキルも見てみるか。
『鑑定』以外のスキルは、『辞書』『世界地図』『翻訳』『魔導書』『宝箱』か。正直名前だけじゃやっぱり分からないな。
でも、この『世界地図』は地図だよね? 草原を抜けられるかも。よし、使ってみよう!
「『世界地図』発動!」
【技能スキル『世界地図レベル1』を行使します】
使えた! 頭の中に丸い画面が浮かび上がった。レーダーみたい。
全面が赤く染まり、中心が青く点灯している。よく見ると青点には白線が続いていた。
多分青点は俺自身のことだ。この白線はもしかして俺が歩いた跡を示している?
縮尺は? 白線は画面の端まで続いている。もっと広い範囲で見られれば、俺がこの二日間どう歩いていたのか分かるんだけど……。
俺がそう思っていると、急に画面が変化した。俺の希望に沿って縮尺を変更してくれるらしい。調整が終わったようで改めて画面を見た俺は、目を見開き驚いた。
「同じところをグルグルグルグル……何十周していたんだ、俺」
白線は何重にも円を描いていた。俺は全然移動なんてしていなかったのだ。
唯一円から外れているのは、ホーンラビットに遭遇した今の位置くらいだ。
どうなってるの俺の方向感覚。ここまで綺麗に円を描いて歩けるなんて、ある意味すごいよ!
『世界地図』があって助かった。これでこの草原を抜け出す算段が付きそうだ。
とりあえず他のスキルの確認は、草原を抜けてからでもいいかな。どれもここでは役に立ちそうにないし。でも『レベル0』って何だろうか? これだけ試してみようかな。
「『魔導書』発動!」
【技能スキル『魔導書』は発動基準を満たしていないため使用できません】
やっぱりレベル0だと使えないんだ。じゃあ『宝箱』っていうスキルも使えないのか。
金銀財宝が出てくるスキルかな。お金があってもここじゃ役には立たないから別にいいけど……。
それじゃあ出発しようかな。『世界地図』を見ながらなら、迷わず進めそうだ。
よーし、今日中に草原を脱出するぞ! レッツゴーー!
……うん、正直逃げてました。『鑑定』を見たとき、本当は最初に見えていましたとも。
ああ嫌だ、現実を直視したくない。知りたくなかった……。
称号の『異世界の漂流者』。日本どころか地球でもないよ、ここ!
ホーンラビットが出てきた時点で気づくべきだった。何がどうなってるんだよ!
「異世界」って何なの!? 教室のドアを開けたらそこは異世界でしたってか? じゃあクラスのみんなもここにいるの? みんなバラバラ!? ……それ、やばくね?
急に友人達が心配になってきた。
親友の大樹は無事だろうか? 幼馴染の亜麻音とその親友の恭子ちゃんは大丈夫かな? もしかしてこの草原にみんなもいるのか?
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