宵の蝶影 ― 花鏡夜譚・宵綴り① ―
忘れていくものを、すべて残すことはできない。それでも彼女は、今日のことを書き留める。
山あいの月見里村で、染め仕事をして暮らす澪音。
ある日、村境の藤棚に薄紫の蝶が群れ、彼女は二つの月を見る奇妙な夢を見た。やがて、夢の細部だけでなく、身近な人々の記憶にも小さな欠落が現れ始める。
澪音は、忘れてしまう前に見たことや聞いたことを書き留めるようになる。幼馴染のカナタが残す記録、古い村の帳面、森に残る石灯籠、旅芸人の璃央が持ち込む外の話。調べるほど、昔の記録と現在の出来事は似ていながら、少しずつ食い違っていた。
けれど、記録は必ずしも答えを与えてくれるものではない。
染め物をし、祭りの支度をし、村の人々と暮らしながら、澪音は何を残し、何を残せないのかと向き合っていく。
蝶と月と藤の里を舞台にした、記憶と記録をめぐる静かな幻想譚。
山あいの月見里村で、染め仕事をして暮らす澪音。
ある日、村境の藤棚に薄紫の蝶が群れ、彼女は二つの月を見る奇妙な夢を見た。やがて、夢の細部だけでなく、身近な人々の記憶にも小さな欠落が現れ始める。
澪音は、忘れてしまう前に見たことや聞いたことを書き留めるようになる。幼馴染のカナタが残す記録、古い村の帳面、森に残る石灯籠、旅芸人の璃央が持ち込む外の話。調べるほど、昔の記録と現在の出来事は似ていながら、少しずつ食い違っていた。
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