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第八章 確かめ合えた愛は束の間で

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 翌日の夕刻、門番のガストンが戻った。お父様は、彼を応接間に呼びつけるなり、大声で怒鳴られた。

「お前は金を受け取って、男どもをローズの部屋へ通していたそうだな!」

 最重要事項は、それなのか。今さらながら、私はため息をつきたくなった。

「申し訳ございません」

 ガストンが、おどおどと頭を下げる。

「ローズは、嫁入り前なんだぞ! 噂になったら、お前の責任だ。この恥さらしが!」
「ちょっと、お父様」

 私は、つい口を挟んでいた。

「ガストンだけの責任なのですか? 男性を部屋に招いたのは、ローズでしょう。恥さらし、という言葉を向ける相手を、お間違えなのではございませんか?」
「ずいぶんと、態度が大きくなられたこと」

 冷ややかな口調で私をさえぎられたのは、バルバラ様だった。

「アルベール様やらドニ殿下やらに言い寄られて、調子に乗っているのでしょうが、身の程をわきまえて欲しいものだわ。ローズは、王太子妃になろうかという娘なのよ? あなたの相手をしてくださるのは、せいぜい妾腹の男性や、側妃がお産みになった第二王子。この違いを、冷静に考えられることね」

 カッと頭に血が上りそうになるのを、私はかろうじて堪えた。

「アルベール様の名誉のために申し上げておきますが、彼は決して、不義の子などではございません。くだらないデマに惑わされたら、恥をおかきになりますわよ、バルバラ様。冷静な思考を保つべきなのは、あなたの方では?」
「何ですってっ」

 バルバラ様が、血相を変えられる。私は、構わずに続けた。

「今一番大切なのは、ガストンに、アンバー殺しの夜の私のアリバイや、中庭での目撃について、正確に語ってもらうことですわ。そうすることで私の潔白が完全に証明されれば、ローズの縁談も、滞りなく進むのではございませんか?」

 反論できなかったのだろう、バルバラ様が黙り込む。するとお父様が、咳払いをなさった。

「確かに、モニクの言う通りだ。モンタギュー侯爵はこれからお見えになるが、ガストン、お前は正確に語れるな?」
「……はい」

 緊張しているのか、ガストンは暗い表情で頷いた。私は、チラと時計を見やった。ガストンへの尋問を見届けねばと思う一方で、私はアルベール様のことが気にかかって仕方なかった。ドニ殿下が、彼がシモーヌ夫人の妹君と会われると仰っていたのは、今夜だ。

(本当に、彼女とお会いになるのかしら……)
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