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第八章 確かめ合えた愛は束の間で
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私が逡巡していると、アルベール様はさっさと御者にチップを渡した。
「彼女に、話があるんだ。中へ入らせてくれ。それから、しばらく外して欲しい」
「ごゆっくり!」
とたんに上機嫌になった御者は、素早く扉を開け、アルベール様を中へ通した。御者が去ったのを見届けると、アルベール様は私の向かいに腰かけ、真剣に私を見つめた。
「何か、誤解されているのじゃないかと思って。こちらに来たのは……」
「シモーヌ夫人の妹君、ニコル嬢に会われるためでしょう? それも、二回目。人づてに聞きましてよ?」
アルベール様のお顔には、一瞬動揺が走った。やはり本当だったのか、と私は確信した。
「……確かに、その通りです。ですが、目的は……」
「私に言い訳なさらなくても、よろしいじゃございませんの!」
私は、思わず語気を強めていた。それ以上、聞きたくなかったのだ。
「アルベール様がどんな女性と付き合われようが、私には関係ございませんもの。そうでしょう? 私たちの関係は、偽装なのだから……」
「人の話を聞け!」
アルベール様は、突如大声で怒鳴った。迫力に気圧され、私ははっと口をつぐんだ。
「俺がニコル嬢に近付いたのは、事件について探るためです。彼女は、こう語った。バール男爵とシモーヌ夫人は、一年前に別れている。だからパーティーの夜のあれは、逢い引きじゃない。二人はおそらく、それぞれ犯人に呼び出され、まとめて殺されたんだ!」
「別れていた?」
思いも寄らない事実に、私は唖然とした。
「その通り。あれは、婚約者が逢い引きしていたことに怒ったあなたが二人を殺した、と見せかけるための、犯人の偽装に違いありません」
確かに、あれが逢い引きでなかったとすれば、事件の見方はがらりと変わってくる。だが、それはそれとして、私にはまだアルベール様への不信があった。
「……わかりましたわ。でも、ニコル嬢に聞き込みしている事実を、なぜ私に黙っていたんです? それに、こんな夜に部屋を訪れる必要があるんですの?」
「それは……」
アルベール様は、少し言葉に詰まられた。
「彼女に、話があるんだ。中へ入らせてくれ。それから、しばらく外して欲しい」
「ごゆっくり!」
とたんに上機嫌になった御者は、素早く扉を開け、アルベール様を中へ通した。御者が去ったのを見届けると、アルベール様は私の向かいに腰かけ、真剣に私を見つめた。
「何か、誤解されているのじゃないかと思って。こちらに来たのは……」
「シモーヌ夫人の妹君、ニコル嬢に会われるためでしょう? それも、二回目。人づてに聞きましてよ?」
アルベール様のお顔には、一瞬動揺が走った。やはり本当だったのか、と私は確信した。
「……確かに、その通りです。ですが、目的は……」
「私に言い訳なさらなくても、よろしいじゃございませんの!」
私は、思わず語気を強めていた。それ以上、聞きたくなかったのだ。
「アルベール様がどんな女性と付き合われようが、私には関係ございませんもの。そうでしょう? 私たちの関係は、偽装なのだから……」
「人の話を聞け!」
アルベール様は、突如大声で怒鳴った。迫力に気圧され、私ははっと口をつぐんだ。
「俺がニコル嬢に近付いたのは、事件について探るためです。彼女は、こう語った。バール男爵とシモーヌ夫人は、一年前に別れている。だからパーティーの夜のあれは、逢い引きじゃない。二人はおそらく、それぞれ犯人に呼び出され、まとめて殺されたんだ!」
「別れていた?」
思いも寄らない事実に、私は唖然とした。
「その通り。あれは、婚約者が逢い引きしていたことに怒ったあなたが二人を殺した、と見せかけるための、犯人の偽装に違いありません」
確かに、あれが逢い引きでなかったとすれば、事件の見方はがらりと変わってくる。だが、それはそれとして、私にはまだアルベール様への不信があった。
「……わかりましたわ。でも、ニコル嬢に聞き込みしている事実を、なぜ私に黙っていたんです? それに、こんな夜に部屋を訪れる必要があるんですの?」
「それは……」
アルベール様は、少し言葉に詰まられた。
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