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第十一章 新たな真実と反撃の決意

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「ま、それだけドニ殿下も必死だったのでしょう」

 アルベール様は、案外けろりとされていた。

「殿下は、シモーヌ夫人まで呼び出して逢い引きに見せかけ、証拠品を仕込み、モニクの犯行に見せかけようとした。それなのに、肝心のあなたにはアリバイがあり、部屋にはなぜか窃盗の痕跡がある。彼は、さぞや焦ったことでしょう。ブローチを現場に落としたのも、急遽考えて実行したのかもしれませんよ。本来は、手袋とショール、短剣だけのおつもりだったのかも」

 確かに、と私は思った。

「マルク殿下は、当初は窃盗犯の仕業と決め込んでおられましたのよ。それを否定されたのが、ドニ殿下です」

 なるほど、とアルベール様が頷く。

「ご自身が真犯人なだけに、窃盗犯の犯行でした、で片付けられるのでは不安だったのでしょうね。別の真犯人を、どうにか仕立て上げたかったのでしょう」
「ところが、どうしても私が無理そうなので、アルベール様に罪をなすりつける計画に、途中から変更されたのですわね」

 私は、ガストンや森番の話を改めて思い返していた。

「モンタギュー侯爵に、中庭の人影の話をしたのも、ドニ殿下ですわ。門番から聞いた、などとうそぶいておられましたけれど。ご自分がアンバーに命じてさせたのですもの、もちろんご存じだったはずですわ。そして、ガストンが侯爵に会う前に、金を握らせて、人影が男性だったと証言させた……」
「よし、大体つかめてきましたね」

 アルベール様は、腕を組んだ。

「後は、殿下の動機だ。彼は、二人を殺害後、男爵の手帳を奪っていませんでしたか?」
「……それが、わかりませんの」

 私は、かぶりを振った。

「殺人の光景がショックすぎて、その時点で気を失ってしまったものですから……。お役に立てなくて、ごめんなさい」
「いえ、いいんですよ!」

 アルベール様は、慌てたようにそう仰ると、私を抱きしめてくれた。

「追及して、申し訳なかった。それ以上、無理しなくていい。さぞや、辛かったことでしょう。むごたらしい現場を見てしまうなんて……」

 アルベール様の温もりに浸りながらも、私はやや罪悪感を覚えた。気を失うほどショックだったのは、単に殺人現場を見たからではない。ドニ殿下に、ずっと憧れていたからだ。だからこそ、彼の犯行は衝撃的すぎた。でも、それをアルベール様には言えない……。

 アルベール様は、私の背中を、優しくさすってくださっている。しばらくして、彼はその手を止めた。私は、察して彼を見上げた。

 アルベール様が瞳を閉じ、私に顔を寄せる。だが、今にも唇が重なろうとした、その時……。

「ただ今戻りました、兄様! 早く、この記録をご覧ください!」

 ばかでかいノックの音と共に聞こえたのは、エミールの興奮した声だった。
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