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第十一章 新たな真実と反撃の決意

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「……いえ、何でも。バール男爵の所業についてはよくわかりましたが、これは今回の事件とは関係なさそうですね」

 アルベール様は、その書類をさっさと封筒にしまい込まれた。

「エミール、他は?」
「はい。こちらは、ピエールが研究していた調香に関する記録です。それから、こっちは……、奥様へ宛てた手記です」

 私とアルベール様は、まず調香の記録を読み始めた。びっしりと、専門的な説明が綴られている。正直、ほぼ内容はちんぷんかぷんだ。だが、私たちはその中で、大きく印が付けられている項目を発見した。その植物の説明には、こう書かれていた。

『危険。強い毒性を持つ。誤飲すれば、心肺停止をもたらす』

 私とアルベール様は、思わず顔を見合わせていた。

「もしかして……」
「バール男爵が妃殿下殺害に用いたのは、きっとこれでしょう。だから印を付けたのでしょうね」

 それを聞いたエミールは、ぎょっとした顔をした。

「ええ!? 九年前に殺された高貴なお方って、王妃殿下だったのですか?」
「ああ。俺とモニクは、そう踏んでいる」

 頷いた後、アルベール様は眉をひそめられた。

「しかし、他にも印が付けられた植物がありますね」

 確かにそれ以外にも、小さい印が付いた項目が二つあった。一つは、同様に毒性を持つもので、摂取すれば体に不調をもたらす、とある。もう一つは『タバイン』と書いてあり、聞いたことは無いが麻薬の一種のようだった。

「バール男爵は、他にも誰か殺していたのかしら?」
「かもしれませんね」

 アルベール様は、最後の書類を手に取られた。ピエールが妻に宛てた手記だ。

『愛するマーゴへ

 お前には、本当に申し訳ないことをした。オーギュストなんかと手を組んだために、犯罪に関わってしまった。金を稼いでお前に楽をさせてやりたい、その一心だったのだが……。

 そして、もう一つ謝らねばならない。子供を授けてやれなくて、申し訳なかった。すべて、タバインのせいだ。若気の至りで、オーギュストと一緒に十代の頃常用していたんだ。オーギュストは好都合と喜んで、後にシモーヌ夫人にも与えた。俺はすぐ止めたんだが、手遅れだったようだ……』

 私は、エミールに尋ねていた。

「この手紙の後半、どういう意味かしら?」
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