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第十一章 新たな真実と反撃の決意

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「もしかして……。王妃殿下は殺された、と仰りたいの?」

 ミレー夫人が、目を見張られる。私は、静かに頷いた。

「その可能性が、高いかと」
「まあ……」

 夫人は、しばし絶句された。

「確かに、あのスキャンダル自体、違和感はあったわね。あの誇り高い彼女が、媚薬に溺れるだなんて」
「媚薬!? 王妃殿下は、媚薬を使われていたのですか?」

 私は、驚いて聞き返した。違法薬物、としか聞いていなかったからだ。先ほどの、バール男爵に関する記録が蘇る。ますます、彼との関連が疑わしくなってきた……。

「そうよ」
 
 不快そうに、夫人が眉をひそめる。

「それに。不義を犯した、というのも信じられなかったわ。王妃殿下は、国王陛下を心から愛しておられたと、お見受けしていたから。それがゆえに、ひどく嫉妬深かったのだけれど……」
「そうだったのですか?」

 私は、身を乗り出した。ええ、と夫人が頷かれる。

「だからこそ……」

 言いかけてミレー夫人は、ふと言葉を止められた。

「ああ、いえ。だからシュザンヌ妃は、離宮へ避難するはめになったのよ」

 ドキリとした。シュザンヌ妃、というのはドニ殿下のお母上である。夫人は、嘆かわしそうに続けた。

「妃殿下もねえ。悪いお方では無かったのだけれど、勝ち気すぎたのですわよ。名門家系のご出身ということで、プライドもたいそう高くて。ジョゼフ五世陛下は、そんな妃殿下に疲れてしまったのだと思いますわ。だからきっと、シュザンヌ嬢に惹かれたのでしょう。彼女は、妃殿下の侍女をされていたのですが、とても大人しく慎ましやかな女性でした」

 ドニ殿下以外の方から、彼のお母上について伺うのは、初めてだ。私は、真剣に聞き入った。

「国王陛下がシュザンヌ嬢を側妃に迎えられた時の、王妃殿下のお怒りには、すさまじいものがありました。使用人風情が、という思いが拍車をかけたのでしょう。妃殿下は、徹底的にシュザンヌ妃をいじめ抜きました。陛下は、妃殿下から彼女を守ろうと、離宮へ移したのです。……そしてドニ殿下が五歳の時、シュザンヌ妃はあっけなくこの世を去りました」

 心労がたたったのでしょう、とミレー夫人は付け加えた。
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