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第十二章 波乱の鷹狩り

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 狩猟タイムが終了した。男性陣は、和やかに談笑しながら戻って来られた。私たち女性陣は、国王陛下、マルク殿下、ドニ殿下らにご挨拶申し上げた後、それぞれのパートナーをお迎えした。

 すぐに、食事タイムが始まる。皆、それぞれのパートナーと共に、シートに腰を下ろした。マルク殿下とドニ殿下は、お父上・ジョゼフ五世陛下の両隣に、それぞれ座られた。パートナーであるローズと私は、彼らのお隣に座らせていただく。アルベール様と、『エミリー』ことエミールは、私とドニ殿下の斜め前に、すかさず陣取った。

「天候が良くて、何よりだった。たまには、体を動かすのもよかろう?」

 国王陛下は、ワイングラスを片手に、マルク殿下に機嫌良く話しかけられた。

「はい。その節はご心配をおかけしまして、申し訳ございませんでした。体調はもう万全ですので、ご安心くださいませ」
「ならば、よかった」

 陛下は、安心したように頷かれた。どうやら陛下は、殿下のご体調を案じておられたようだった。

「健康は、全ての基本であるぞ? ましてそなたは、いずれこのモルフォア王国を背負って立つ身。職責を果たすという点はもちろん、跡継ぎを残すという面でも、健康状態には常に留意しておかねばな……。どうだ、まだ決心はつかんか? いつまでも逃げているようなら、私が強制的に決めるぞ?」

 マルク殿下には、これまで何人もの婚約者候補が挙がったが、殿下はことごとく断られてしまったのである。息子に甘いジョゼフ五世陛下は、それに目をつぶってこられた。とはいえ、殿下も今年二十六歳。陛下もさすがに限界、といったところだろう。

「何事にもまだ半人前ですので、身を固める気になれないのでございます」
「また、それか」

 国王陛下が、苦笑される。

「密かに想う女性でもいるのか? ええと……」

 陛下は、一瞬ローズをご覧になった後、すごい速さで視線を戻された。無理も無い。今日のローズは、娼婦と見まごうほどの厚化粧の上、極端に胸の開いたドレスをまとっているのだ。見なかったことにしよう、という陛下の呟きが聞こえるようだった。

「そのような女性は、おりません」

 マルク殿下が、きっぱりと答えられる。ローズの顔には、露骨な落胆の表情が浮かんだ。

「しかしながら、お早くご決断いただかないと、困りますよ。兄上を差し置いて、私が妃を娶るわけには参りませんからねえ」

 ドニ殿下が、冗談めかして仰る。同時に、私の手を握られた。おや、というお顔で、陛下が私をご覧になる。
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